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声優・宮野真守氏が送る深夜の飯テロ!?地域⇔アニメのリスペクトに溢れた「23時の佐賀飯アニメ」とは?

小新井涼アニメウォッチャー
(写真:アフロ)

眠気と共に、ちょうど小腹も空いてくる深夜23時。

そんな危険な時間帯に、こだわりの映像と、人気声優・宮野真守氏の声で送る“最強の飯アニメ”が、なんと毎晩・10夜連続で公開されていたのをご存知でしょうか。

その名もずばり「23時の佐賀飯アニメ」です。

新型コロナウィルスの影響で、あらゆる観光イベントが延期になっていますが、食材の旬は延期ができません。そこで、『来てもらうのが難しいならば、お取り寄せ(=ポチっ)てもらおう!』と、小腹が空く深夜においしそうな佐賀飯のアニメをTwitterに投稿し、アピールすべく作られた作品でもあります。

こうして日本中の様々な地域がアニメでPRを行うことも、最近では珍しくなくなってきましたが、実はこの佐賀県、一部のアニメファンの間ではとても有名な地域でもあり、この作品にも、ひと味違ったこだわりが見えるのが特徴です。

◆単なる人気声優の起用、ではなく…

本作の主演を務めたのは人気声優の宮野真守氏。

“ご当地飯を紹介するオリジナルのショートアニメ”ということで、そこから多くの人に興味を持ってもらうためにも、有名声優を起用するのは納得と思われるかもしれません。

しかし実はそれだけでなく、宮野氏は佐賀県が作品聖地となっている人気アニメ「ゾンビランドサガ」や「ユーリ!!! on ICE」にも出演しており、『佐賀のアニメに宮野さん』と聞くと、一定のアニメファンが思わず反応してしまう人物でもあります。

ご本人も『佐賀県には縁があるので(笑)』とコメントしている通り、単に人気だからという理由だけでなく、その地域が舞台となった作品やその出演者をリスペクトした、分かる人は思わずニヤリとしてしまう、そんなキャスティングでもあるのです。

◆“わざわざアニメ”でのこだわり

アニメでは、みる人に『美味しそう』と思わせたい映像も、湯気や肉汁、食材の質感や調理中の炎まで、実写と違い全てを人の手で作り出さなければいけません。

そのため本作のように“食べ物の美味しさをド直球に伝える”アニメを作るのは、1話たった20秒程のショートアニメであれ、実はかなり手間のかかる大変なことなのです。

それにもかかわらず、ご覧いただくと分かるように、本作は画面から匂いや温度まで伝わってきそうで強烈に食欲をそそる(いい意味で)深夜23時にみるにはとても危険なアニメとなっています。

そこには、実写とはまた違った想像力をかきたてることで、より“今ここにはない佐賀飯”が食べたくなるような、アニメだからこそできる表現でのこだわりがみっちりとつめこまれていました。→「23時の佐賀飯アニメ」藤本さとる監督インタビュー

実写であればかからない手間をかけ、それでもわざわざアニメで、ここまでおいしそうに作られた映像からは、“原作”となる佐賀飯への並々ならぬリスペクトも感じられます。

◆地域⇔アニメのリスペクトと遊び心

これまでも、様々なアニメと個性的なタイアップを行ってきた佐賀県の作品というのもあってか、本作からは、こうして”地域を舞台としたアニメ”を、”アニメで描写する地域”を互いに大事にしていることが感じられます。

地域が作ったアニメながらお固い印象は無く、様々な遊び心も詰まった企画となっているのも、そこで築かれた地域とアニメとの信頼関係があってのことなのでしょう。

前述の通り、日本の様々な地域がアニメでPRを行うことが増えてきましたが、それら全てが話題になっているかというと、なかなか難しいのも現状です。

そんな中で、今後『なんか面白いことをしている』と、人々が思わず話題にして拡散されていくのは、地域のPRはもちろん、それだけでなく、こうした地域とアニメとの信頼関係の上で成り立った、こだわりや遊び心も目一杯詰まった作品なのではないかと思います。

アニメウォッチャー

北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院博士課程在籍。 KDエンタテインメント所属。 毎週約100本以上(再放送、配信含む)の全アニメを視聴し、全番組の感想をブログに掲載する活動を約5年前から継続しつつ、学術的な観点からアニメについて考察、研究している。 まんたんウェブやアニメ誌などでコラム連載や番組コメンテーターとして出演する傍ら、アニメ情報の監修で番組制作にも参加し、アニメビジネスのプランナーとしても活動中。

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