「忍たま」原作・尼子騒兵衛氏の「落第忍者乱太郎」が完結:大人の女性からの反響が多い訳

(写真:アフロ)

テレビアニメ「忍たま乱太郎」の原作としてお馴染みの、尼子騒兵衛氏による漫画「落第忍者乱太郎」が、来月11月30日発売のコミックス65巻で完結することが発表されました。

「忍たま」は、「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」と並ぶ長寿アニメでありながら、未だ現役で原作の連載が続いていた数少ない作品です。

そのため今回の発表を受けて、驚きの声や、完結の一因となった尼子騒兵衛氏の体調を気遣う声が多数挙がっています。

そうした声は、主にネットで完結を知った大人達によるものなのですが、中でも特に多いのが、20代・30代以上の女性による反響でした。

キッズ・ファミリー向けアニメのイメージが強い本作ですが、実は「落第忍者乱太郎」及び「忍たま乱太郎」は、大人の女性ファンが多い作品でもあるのです。

その理由を紐解くことで、大人の女性をも夢中にさせる本作の魅力と、彼女達にとって、原作者・尼子騒兵衛氏がどんな存在であるかがみえてきます。

女性ファンによる魅力の“再発見”

元より一定の女性ファンはついていたものの、アニメグッズやDVDの発売、ドラマCD化やミュージカル化といった現在の女性人気に至る本作の盛り上がりは、テレビアニメ第15期が放送されていた2007年ごろから徐々に始まったように思います。

この頃起きていたのが、かつてアニメを視ていた、つまり一度は「忍たま」を卒業した大人のアニメファンの女性達が、本作が大人も、むしろ大人になったからこそ楽しめる要素が沢山あることに気づいた「忍たま」の魅力の”再発見”です。

作品にハマるきっかけは人によって様々でしたが、広い入口としての“豪華な声優陣”、心をとらえる“魅力的なキャラ達の絶妙な関係性”、沼にいざなう“超豊富なエピソード数”の3つは特に大きかったように思います。

幼少時に何の気なしに視ていると気づかないものですが、成長して様々なアニメやゲームにハマった後に「忍たま」を改めて視てみると、知っている声優の方々が声をあてているキャラがこんなにもいたことにまず驚きます。更にそうしたキャラのそれぞれに、所属委員会や同室・クラスメイト、ライバル関係や家族構成といった設定がこんなにあったことを改めて認識することで、キャラやキャラ同士の関係性に魅了されていきます。そしてそれらをもっと知りたいと手を出すと、「厳禁シリーズ」や「予算会議」といったお馴染みの人気エピソードを含む原作とアニメが、たっぷり単行本約40冊・テレビアニメ15シーズン分(※2007年当時)もあり、気づいたときにはすっかり沼に陥っているのです。

こうした魅力の再発見が2007年頃から始まったのには、女性に人気の高い忍術学園の先輩キャラ達がアニメに登場しだしたタイミングだったのもありますが、当時サービス開始から徐々に浸透し始めていた動画配信サイトの存在も影響していたように思います。

この頃、改めて「忍たま」にハマった女性たちは、前述通り既に一度、成長するにしたがって「忍たま」の視聴を卒業していた人がほとんどでした。

そうした人たちにとって、上記の魅力に気づき、再びアニメを視聴し始めるには、(今となっては違法な動画も少なからず混じってはいたものの…)YouTubeやニコニコ動画にアップされたMADなどの“とっかかり”が必要だったのです。

その後、女性人気に火が付いた「忍たま」界隈では、これまでになかったアニメグッズやDVDの発売、ドラマCD化やミュージカル化等、急激に増えた大人の女性アニメファンからの需要に対する新しい展開が始まりました。

そうして、同じキッズ・ファミリー向け長寿アニメである「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」とも違う、 “大人の女性にも人気の国民的長寿アニメ”という、稀有な存在になっていったのです。

(最近だと「名探偵コナン」も少し似た性質を持っているかもしれません)

今回、原作の完結に対する大人の女性ファンの反響が多かったのは、そうして大人になっても「忍たま」に夢中な層が、この10年程で増えていた影響があったのでしょう。

ファンにとっての原作者という存在

こうして「忍たま」に“再入学”した大人の女性ファンは、原作である「落第忍者乱太郎」も読み始めるという人がほとんどでした。

まだアニメに登場していないキャラやアニメ化されていないエピソードをいち早く知りたいというのもありましたが、原作の「落乱」にも、豊富な忍者知識や緻密な室町時代の描写といった、大人になったからこそ分かる楽しさがあったのも大きかったように思います。

そして、改めて原作に触れたファンをなにより感動させたのが、人気のエピソードや好評なキャラ設定への反響を受けると、それらを更にパワーアップさせながら新作で次々展開してくれる、尼子騒兵衛氏の読者へのサービス精神でした。

原作漫画を読んで、全ての読者に楽しんでもらいたいという先生のその姿勢に触れることで、アニメをきっかけに改めてハマったファン達も、こんなに「忍たま」が魅力的なのは、原作に「落乱」があって、それをつくる尼子騒兵衛氏の人柄や世界観があるからなのだということを痛感していたと思います。

「忍たま」や「落乱」を、単なる懐かしい作品ではなく、大人になった今でも楽しんでいる女性ファンにとって、「落乱」の完結は、“昔遊んでいた公園が無くなった”というよりは、“お世話になった恩師が現役を退く”くらい身近に感じる出来事だったのかもしれません。

原作完結のニュースに対して、寂しい気持ちはもちろんありますが、彼女たちの反応に、なによりも尼子騒兵衛氏への感謝と体調を気遣うものが多かったのは、楽しい時間をくれた原作者への、そうした恩義に近い想いがあってのことだったのでしょう。