テニスシーズン真っ直中に公開される伝説の男女対決試合の知られざる裏側「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」

 今から45年前のこと。当時の女子世界チャンピオンと男子元世界チャンピオンが掟破りのシングルス戦に臨む。"バトル・オブ・ザ・セクシーズ(性差を超えた戦い)"と呼ばれる伝説のエキシビション・マッチだ。その裏側を描くタイトルもズバリ「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」は、日本ではテニスシーズン真っ直中の来月6日に公開される。折しも、グランドスラム第3戦のウィンブルドンで熱い戦いが繰り広げられている最中だ。

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 さて、そのウィンブルドンで史上最多の20回の優勝を誇るのが、「バトル~」の主人公、ビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)。エキシビション・マッチが開催された同じ1973年、"週刊マーガレット"で連載がスタートしたスポコン漫画「エースをねらえ」に"キング夫人"として登場し、数々の名勝負で読者の目を釘付けにした人気キャラのモデルである。だから、彼女は古くから日本のテニスファンとコミックファンから同時に親しまれている希有なアスリートなのだ。

 1973年当時のテニス界では露骨な性差別が罷り通っていて、例えば、女子の優勝賞金は男子の1/8だった。そんな状況の中、それまで沈黙を守っていた女子選手を代表し、最初に声を上げたのがトッププレーヤーのビリー・ジーンだった。映画は、彼女が男性優位主義を象徴するような55歳の元世界チャンプ、ボビー・リッグス(スティーブ・カレル)から提案されたエキシビション・マッチへの参戦を、悩んだ末、受諾するまでを、怒濤の70年代カルチャーをふんだんに盛り込みつつ描いて行く。

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 当時、斬新なテニスウェアで一世を風靡したイギリス人デザイナー、テッド・ティンリングによるカラフルなスコートを克明に再現した衣装デザインは、特に見どころだ。ウィングカラーのスコートの肩から裾まで星のマークが並んだもの、ホールターネックラインのスコート、全身ターコイズブルーやライトイェローのミニワンピみたいなスコートetc。それらはスポーツメーカーから提供された同じウェアが試合当日にモロ被りするような今と比べて、断然おしゃれだし楽しい。

 しかし反面、興行価値やマッチ数から見て男性優位論が今なお根強いテニス界にあって、当時も今も、差別撤退運動を続ける闘志としてのビリー・ジーンの立ち上がりを描いたという点で、「バトル~」は社会の現実を考えるチャンスを与えてくれる。ハリウッドに於ける男女優のギャラ格差は、1/8どころか、時には1/1000にもなることがリークされたのは記憶に新しい。

 同時にこれは、夫婦とは、結婚とは何かを考えさせる作品だ。当時、ビリー・ジーンにはラリー・キングという理想の夫がいながら、たまたまヘアセットを担当してくれた美容師のマリリンに惹かれていき、実はギャンブル好きが高じて借金を抱え、それを穴埋めするために"バトル・オブ・ザ・セクシーズ"を思いついたボビーは、妻のプリシラから愛想を尽かされる。2組の夫婦が辿るその後の道程にこそ、映画のテーマが託されているとも言えるのだ。

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 フェミニズムや性差別撤退を声高に訴える一方で、夫婦や愛の行方、そしてそこからセクシュアリティの問題へと繋げていく滑らかで、時折コミカルな演出は、代表作「リトル・ミス・サンシャイン」(06)では家族の関係を、続く「ルビー・スパークス」(12)では理想の恋人論を描いたヴァレリー・ファリスとジョナサン・デイトン監督夫妻だ。去る5月31日、東京・渋谷のユーロライブに夫妻を招き、メディアとファンを集めて開催されたティーチインでは、当然のようにこんな質問が出た。「撮影現場でお2人の間に"バトル・オブ・ザ・セクシーズ"は勃発しないのですか?」それに対し、「そんなことにならないよう、自宅でばっちり話し合ってます」と笑顔で答えた2人。

ユーロライブの楽屋で。左から、ジョナサン、通訳の鈴木小百合さん、ヴァレリー、そしてモデレーターを務めた筆者(筆者撮影)
ユーロライブの楽屋で。左から、ジョナサン、通訳の鈴木小百合さん、ヴァレリー、そしてモデレーターを務めた筆者(筆者撮影)

 寡作だが常に賞レースを賑わせるハイレベルな作品を生み出すのは、自宅のリビングやベッドルーム(多分)だったというオチ。そんなことも考えながら、テニスシーズンに観るには最適の1本。それが「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」なのだ。

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バトル・オブ・ザ・セクシーズ

原題: BATTLE OF THE SEXES

監督: ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス 出演: エマ・ストーン スティーブ・カレル アンドレア・ライズブロー ビル・プルマン アラン・カミング

7月6日(金) 全国順次ロードショー

公式サイト:www.foxmovies-jp.com/battleofthesexes/

(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation