メジャーリーグには「ホームランダービーに出場したスラッガーは、後半戦に大きく調子を落とす」というジンクスが存在する。

 今年のホームランダービーの目玉だった大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)は、後半戦最初の2試合で10打数1安打、6三振を喫して、ジョー・マドン監督も「ダービーに出場した影響は、疲れの問題ではなく技術面の問題。打撃フォームがいつもよりも引っ張り気味になっていた」とダービーに出場したことで、大谷が本来の打撃フォームを見失ったと指摘した。

 そんな中、大谷とダービー1回戦で対決して、2度の延長の末に大谷を撃破したホアン・ソト(ワシントン・ナショナルズ)は、球宴後の4試合で17打数10安打(打率.588)、5本塁打とジンクスを吹き飛ばす大活躍をみせている。

 昨季は打率.351をマークして、ナショナル・リーグ史上最年少となる21歳で首位打者のタイトルを手にしたソトは確実性ある打撃とパワーを兼ね備えたスラッガー。昨季もリーグ・トップの長打率.695、OPS1.185を記録して、長打力も見せつけた。

 今季前半は打率.283、11本塁打、長打率.445と本調子ではなかったが、「後半戦に向けてスイングの調子を取り戻す」と口にして臨んだホームランダービーで、宣言通りに調子を取り戻し、後半戦4試合での固め打ちでシーズン打率を3割台に乗せた。

 「今は調子がかなり良くなってきている」と言うソトは、「前半戦はボールを打ってもゴロになってしまったが、ダービーでボールを打ち上げる感覚を取り戻せた」とホームランダービーに出場したことが後半戦のロケット・ダッシュに繋がっていると語る。

 ホームランダービーでは球を打ち上げるために、ソトは同じ軌道のスイングを繰り返し、低めの球には手を出さなかった。

 ナショナルズのデーブ・マルチネス監督も「ホームランダービーを経験したことで、彼本来の姿を取り戻した。ダービーでは無理に引っ張ることはせず、センターからレフト方向へのホームランも多かった。それが彼本来の姿なんだ」とダービー出場が復調に役立ったというソトに同意する。

反対方向へ本塁打を打てるソトの高い打撃技術

 大谷もセンターからレフト方向へのホームランは多いが、高い打撃技術を持つソトも反対方向へもホームランを打てる才能の持ち主。

ホワン・ソトが今季放ったホームラン(画像:BaseballSavant)
ホワン・ソトが今季放ったホームラン(画像:BaseballSavant)

大谷翔平が今季放ったホームラン(画像:BaseballSavant)
大谷翔平が今季放ったホームラン(画像:BaseballSavant)

 ソトは16本塁打中、センターからレフト方向へのホームランが10本(62.5%)で、34本中11本(32%)の大谷の倍近い割合で反対方向へ本塁打を打っている。

 新人だった2018年の日米野球で来日したときには、1度ならず2度も東京ドームの天井に打球を直撃させて、日本のファンを驚かせた。

 今年のホームランダービーでも、スタットキャスト導入以降最長となる520フィート(約159メートル)の特大弾を放ったように、確実性だけでなく、パワーもメジャー・トップクラスだ。

 鋭い打球を放つことに定評があり、今季もスイングに対するハードヒット(打球速度95マイル以上)の割合は24.3%でメジャー1位にランクする。

 ナショナル・リーグのホームラン王争いは、28本塁打のフェルナンド・タティースJr.が独走状態に入っているが、エンジンがかかってきた16本のソトがどこまで追い上げられるかにも注目だ。

 ソトはキャリアで10度の複数本塁打試合を記録しているが、23歳の誕生日を迎える前に10回は、メジャー歴代2位にランクする。固め打ちが得意なソトなので、ファンが予想する以上のスピードで、タティースJr.との差を詰めるかもしれない。

 「絶好調のときのソトは、全てを変える力を持つ。一人でチームを引っ張る力があり、多くの手段で試合の流れを変えてみせる」とエースのマックス・シャーザーが言うように、ナショナル・リーグ東地区で首位のニューヨークに6.0ゲーム差の地区4位のナショナルズが浮上するためには、ソトの活躍は必要不可欠だ。

確実性とパワーを兼ね備えるホアン・ソト(写真:三尾圭)
確実性とパワーを兼ね備えるホアン・ソト(写真:三尾圭)