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「何もないのは分かっていたけど緊張した」と不正投球確認を受けたダルビッシュ。回転数は軒並みダウン

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
不正投球の取り調べを受けるダルビッシュとその様子を見るタティース(撮影:三尾圭)

 メジャーリーグは6月21日(日本時間22日)の試合から、投手による粘着物質などの異物をボールや用具に塗布する行為の取り締まり強化を開始。全投手を対象に審判員による試合中の取り調べが行われ、ロサンゼルス・ドジャース戦に先発したサンディエゴ・パドレスのダルビッシュ有も2度、取り調べを受けた。

 「初めてのことなので、何もないのはもちろんわかっていましたけど、緊張はしました」と振り返ったダルビッシュは、1回と4回を投げ終えてベンチに戻る途中で審判員から取り調べを受けた。

 審判員に向かって手の裏表を見せ、帽子とグローブも審判に渡して確認された。

 メジャーリーグでは投手が高粘度の物質をボールに塗ることで、ボールの回転数が上がり、打者を抑えるケースが増えている。今季は歴史的な投高打低となっており、この傾向に歯止めをかけるために、メジャーリーグ機構はシーズン中に異例の規則変更を導入して、全投手を対象とした試合中の取り締まりを導入した。違反者には退場処分と、10試合の出場停止処分が科される。

審判員にグローブと帽子をチェックされるダルビッシュ有(写真:三尾圭)
審判員にグローブと帽子をチェックされるダルビッシュ有(写真:三尾圭)

 違反物質は使っていないと主張するダルビッシュだが、メジャーリーグの公式データによると、この日は投げた6球種の平均回転数が全て今季平均よりも100回転以上もダウンしていた。

6月21日ドジャース戦でのダルビッシュ有の球種別回転数。全6球種全ての回転数(Avg)が今季平均(Yr-Avg)よりも100回転以上もダウンしている(BaseballSavantより)
6月21日ドジャース戦でのダルビッシュ有の球種別回転数。全6球種全ての回転数(Avg)が今季平均(Yr-Avg)よりも100回転以上もダウンしている(BaseballSavantより)

 今季の平均回転数(Yr-Avg)が2788回転のスライダーは、この試合で19球投げて、最高2617回転、最低2439回転の試合平均2521回転で、今季平均よりも267回転も少なかった。

 投球の半分以上を占めたカッターも今季平均に比べて154回転減少した。

回転数は減少も、球速はアップ

 ダルビッシュの投球回転数は軒並みにダウンしたが、平均球速は全てアップ。今季平均94.8マイルの4シームは最速97.5マイル、最遅でも94.4マイルの平均96.5マイルを計測して、今季平均より1.7マイル速く、スライダーは1.8マイル、シンカーも1.6マイル速かった。

6月21日ドジャース戦でのダルビッシュ有の球種別平均スピード。全6球種全てで試合平均(Avg)が今季平均(Yr-Avg)を上回った。(BaseballSavantより)
6月21日ドジャース戦でのダルビッシュ有の球種別平均スピード。全6球種全てで試合平均(Avg)が今季平均(Yr-Avg)を上回った。(BaseballSavantより)

 回転数は落ちたが、スピードが上がったボールに対して、「今日は4シームがすごく良くて、カッターも良かった。全体的にすごく良かった」とダルビッシュは手応えを感じていた。

 パドレスのジェイス・ティングラー監督も「彼はとても良かった。全ての球種が素晴らしく、変化も鋭かった。空振りの少ないドジャース打線を相手に多くの空振りを奪っていたことからも、彼の球の威力がうかがい知れる。多くの武器を持った投手だ」とダルビッシュの投球を褒め称えた。

 昨年の世界一チームを相手に6回を投げて2安打、1失点、11奪三振と好投。唯一の『ミス』は3回にムーキー・ベッツにシンカーを打たれたソロ本塁打だが、「うまいこと打ったと思う。球種の選択ミスではないので、僕としては後悔はないです」とダルビッシュの失投ではなく、2018年にMVPにも選ばれているベッツの凄さが発揮された技ありのホームランだった。

 『スパイダータック』と呼ばれる粘着物質を使っていた投手は、これから成績が著しく落ちそうだが、この夜に最高のピッチング・パフォーマンスを披露したダルビッシュは、これからもメジャー・トップクラスの投球を続けていくことだろう。

回転数は下がったが、昨季覇者のドジャース相手に最高級のピッチングを披露したダルビッシュ有(写真:三尾圭)
回転数は下がったが、昨季覇者のドジャース相手に最高級のピッチングを披露したダルビッシュ有(写真:三尾圭)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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