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指名打者制がないから生まれた好ゲーム。投打で魅せたダルビッシュとカーショウ

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
カーショウの球を打ち返すダルビッシュ(撮影:三尾圭)

 メジャーリーグを代表するエース同士の対決となった4月17日(日本時間18日)のサンディエゴ・パドレス対ロサンゼルス・ドジャース戦は、ダルビッシュ有とクレイトン・カーショウが素晴らしい投手戦をみせた。

 勝利投手となったカーショウは、6回を2安打、8奪三振、無失点に抑え、今季初黒星を喫したダルビッシュも7回を投げて1安打、2四球、1死球、9奪三振、1失点と好投。両投手ともに最高級の投球を見せたが、勝負を分けたのは両投手の打席だった。

 「とにかくカーショウの球を打席で見るのが楽しみで、どんなすごい球を投げるんだ?」と試合前に語っていたダルビッシュは、カーショウと2度対決。

 3回裏の第1打席では、カーショウが投げたストレートを打ち返したが、ショートゴロに倒れた。

第1打席、ショートゴロに倒れるダルビッシュ有(写真:三尾圭)
第1打席、ショートゴロに倒れるダルビッシュ有(写真:三尾圭)

 5回裏の第2打席ではカーショウの宝刀、大きく縦に落ちるカーブの前に空振り三振を喫した。

 「真っすぐは打席で見ると、キャッチボールをしたときに見るよりも、より伸びているように見えました。スライダーは回転とか軌道で見極めるのは難しい」と打席で見たカーショウの感想を口したダルビッシュ。

 「カーショウの球を打席で見られたのは、すごく僕の中では大きかった」と打席に立ったことで、大きな収穫を得たようだ。

 他人が投げた球を参考にして、自分なりにアレンジしながらマスターしてしまうダルビッシュ。今回、カーショウの球を打席で見たことで、自分の球にアレンジを加えてくるかもしれない。

第2打席、カーショウのカーブに空振り三振に倒れるダルビッシュ(写真:三尾圭)
第2打席、カーショウのカーブに空振り三振に倒れるダルビッシュ(写真:三尾圭)

 そして、決勝点となる押し出し四球を選んだカーショウ。今季は5打席ながら、すでに2安打を放ち、打率4割と打撃も好調。

 実はドジャースの投手で最後に押し出し四球を記録したのも2017年6月24日のカーショウ。ちなみにポストシーズンを含むと、2017年のリーグ・チャンピオンシップ第3戦のダルビッシュだった。

 「(ダルビッシュは)良い球を投げるので、ヒットを打とうとは思っていなかった」と言うカーショウは、「ウザがらせてやろうと思って、ファールで粘ることだけを心がけていた」と2死満塁で迎えた打席での心境を明かした。

 その言葉通り、ダルビッシュが投じたカットボール2球とスライダー1球の合計3球をファールにして粘り、フルカウントまで持ち込んで押し出しの四球を勝ち取った。

 コロナ禍で行われた昨季のメジャーは、両リーグの試合で指名打者制度が使われ、今季も開幕前に両リーグでの指名打者制が議論された。

 この日のパドレス対ドジャース戦は、指名打者制がなく、投手が打席に立ったからこそドラマが生まれた好ゲームとなった。

 大谷翔平のような二刀流選手でなくても、投手が打席に立つ意味は少なくない。例え、投手が打てなかったとしても、ダルビッシュのように打席で相手投手の球を見ることによって得られるものは多いのだから。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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