引く手あまたな秋山翔吾の行き先は?
筒香嘉智がタンパベイ・レイズへ。山口俊もトロント・ブルージェイズとの契約が決まったが、まだ移籍先が決まっていないのが秋山翔吾と菊池涼介。今オフにメジャーリーグへの移籍を目指すこの4選手の中で、秋山だけがポスティングではなく海外フリーエージェント(FA)権を使っての移籍なので、契約金の20%に当たる譲渡金が発生しない。筒香の場合は2年総額1200万ドル(約13億2000万円)での契約金だったので、レイズはベイスターズに240万ドル(約2億6400万円)の譲渡金を支払う。
ウィンターミーティング中に秋山はメジャーの4球団と面談したと報じられている。その4球団とは、レイズ、シカゴ・カブス、アリゾナ・ダイヤモンドバックス、シンシナティ・レッズの4チームだ。この4チームを中心に、秋山獲得候補チームの状況を見てみよう。
タンパベイ・レイズ
筒香を獲得したレイズが、秋山とも契約する可能性はあるのだろうか?
来季の外野布陣はセンターに野手最高年俸の1000万ドル(約11億円)を得るケビン・キアマイアーが入り、今季33本塁打のハンター・レンフロー、33本塁打のオースティン・メドウズ、筒香の3選手で外野の両翼と指名打者を回していく。
今季は主に右翼を守ったFAのアビザイル・ガルシアとの再契約を希望していたが、ガルシアは2年総額2000万ドル(約22億円)(3年目は年俸1200万ドル(約13億2000万円)の球団オプション付き)でミルウォーキー・ブリュワーズと契約してしまった。
守備の名手のキアマイアーは2015年に151試合に151試合に出場して以降、4シーズンは130試合以上出場のシーズンがなく、100試合に満たなかったシーズンが2度もある。キアマイアーの激しいプレースタイルはケガと隣合わせなので、頼りになる控えセンターを欲しいレイズにとって、秋山獲得は的確な補強と言える。
仮に秋山がレイズに加入いたとしても、控えで終わることはなく、ある程度の出場は得られるだろう。キアマイアーが健康を保ってセンターでフル出場ができたとしても、筒香は外野以外にも一塁か三塁で出場する試合もあり、その際は秋山が外野で先発出場ができる。
レイズの野手で最高年俸を得るキアマイアーは2020年が1000万ドル(約11億円)、21年は1150万ドル(約12億6500万円)、球団オプションの23年は1300万ドル(約14億3000万円)(もしくは250万ドル(約2億7500万円)を払って契約を破棄)の3年契約が残っている。レイズのスタンダードからしたら高年俸だが、他球団にとってはお手頃価格なので、秋山獲得後にキアマイアーをトレードで放出して、浮いたお金でユティリティ選手を補強すべきと言うレイズ・ファンもいる。
シカゴ・カブス
メジャーリーグでは40人枠の総年俸が上限額を超えた球団に対して贅沢税を課している。2019年の上限額は2億600万ドル(約226億6000万円)で、ボストン・レッドソックス、ニューヨーク・ヤンキース、シカゴ・カブスの3球団が贅沢税の対象となった。40選手の総年俸が2億2000万ドル(約242億円)だったカブスが支払う贅沢税は760万ドル(約8億3600万円)。来季の贅沢税を避けたいカブスは、40人枠の総年俸を上限額である2億800万ドル(約228億8000万円)以下に抑えることを念頭に今オフは動いており、主砲のクリス・ブライアントの放出説まで囁かれている。
そんなカブスの補強ポイントは、先発5番手、ブルペン、二塁手、中堅手の4箇所。
2019年に主にカブスのセンターを守った25歳のアルベルト・アルモーラは打率.236、12本塁打、出塁率.271、長打率.381と期待を大きく裏切り、カブスはアルモーラに代わる中堅手を探している。今季はシーズン途中にデトロイト・タイガースから右翼手のニコラス・カステヤノスを補強して、本来は右翼手のジェイソン・ヘイワードを中堅に回して、中堅手不在を凌いだ。カステヤノスはFAで、彼との再契約には4年総額6000万ドル(約66億円)が必要と言われており、カブスはカステヤノスとの再契約を望んでいるが、年俸削減を進めているカブスにとっては難しい。
また、カブスの1番打者は打率.212、出塁率.294とメジャー最下位の成績だった。今季は日本で打率.303、出塁率.392だった秋山はセンターの穴だけでなく、1番打者の穴も安いサラリーで埋められる。
カブスのジェド・ホイヤーGMは「とても良い選手で、メジャーに移ってきても大きな役割を果たすだろう。彼を欲しがっているチームは多い」と秋山の実力を高く評価。
カブスのダルビッシュ有も自身の公式ユーチューブ・チャンネルで秋山にこんなラブコールを送っている。
シンシナティ・レッズ
6年連続負け越しと低迷しているレッズは、このオフは積極的に動いている。二塁手のマイク・ムスタカスを4年総額6400万ドル(約70億4000万円)で獲得。
2019年シーズン途中にはクリーブランド・インディアンズとのトレードでトレバー・バウアーをエースとして迎え入れたが、今オフも大型トレードを画策していると報じられている。レッズがターゲットに定めているのは、インディアンズのオールスター遊撃手、フランシスコ・リンドーア。レッズは交換相手として2016年のドラフト1巡目全体2位指名選手で、将来の主軸候補と大きな期待をされているニック・センゼルを中心としたパッケージを用意。
メジャー1年目の2019年にセンターで85試合に先発出場した金の卵の後釜として、レッズは秋山を考えている。
また、リンドーアのトレードに失敗してセンゼルが残留したとしても、左翼手のヤシエル・プイグがFAなので、新しい左翼手が必要。
メジャー30球団の中で唯一、これまで日本人選手が所属したことがないレッズは、球団初の日本人選手を獲得するのだろうか?
アリゾナ・ダイヤモンドバックス
アダム・ジョーンズをオリックス・バファローズに失ったダイヤモンドバックスは、その穴を秋山で埋めたいと考えている。
アリゾナのセンターには、2019年に打率.329、32本塁打と大ブレイクしてMVP投票で4位に入った26歳のケテル・マーテイがいるが、マイク・ハーゼンGMはマーティの負担を軽減できる中堅手も欲しいと発言。2018年にはマーテイは二塁手として105試合に先発、19年も45試合はに先発しているので、外野の3ポジション全てを守れる秋山を獲得できれば、マーティを二塁とセンターの半々で使える。
ダイヤモンドバックスのマイナーには、クリスチャン・ロビンソン、アレク・トーマスと将来のセンター候補のプロスペクトがいるが、2人ともにメジャーへ昇格するのは2022年以降の予定。それまでの2年間を埋めるのに、秋山は適任だとチームは考えている。
今オフは中堅手のFA選手が手薄で、平均以上の実力があるのは36歳のブレット・ガードナー、2019年にサンフランシスコ・ジャイアンツで21本塁打を放ったケビン・ピラー、35歳のジャロッド・ダイソンくらいしかいない。
秋山と面談した4球団以外にもテキサス・レンジャースやセントルイス・カージナルスも獲得に興味を示しており、日本球界を代表する巧打者の秋山は引く手あまたの注目選手。
2年間で1000万ドル(約11億円)前後の契約になると予想する声が多いが、争奪戦となっているので筒香の2年総額1200万ドル(約13億2000万円)を超える契約を手にしても不思議ではない。
本人はクリスマス頃に移籍先を決めると言っているが、秋山翔吾というクリスマス・プレゼントを手にする球団はどこになるのだろうか?