山口俊は3億円で、金広鉉は4億円。メジャーに挑戦する日韓エースのお値段

アジア人で初めて最優秀防御率に輝いた柳賢振(三尾圭撮影)

 巨人からポスティング・システムでメジャーリーグへ移籍を目指していた山口俊が、トロント・ブルージェイズとの契約に合意したと12月17日(日本時間18日)に日米の各種メディアが報じた。

 2019年はセントラル・リーグの最多勝、最高勝率、最多奪三振の「投手三冠」に輝いた32歳の山口に対してブルージェイズが提示した契約は2年間で600万ドル(約6億6000万円)。

 そして、山口がブルージェイズと契約に合意した同じ12月17日に、韓国球界からポスティング・システムにかかっていた金広鉉(キム・グァンヒョン)がセントルイス・カージナルスと2年総額800万ドル(約8億8000万円)で契約を結び入団会見を開いた。

 カージナルスは山口の獲得も検討していたが、山口ではなく金を選択。年俸も金の方が100万ドル(約1億1000万円)高い。2投手の契約の詳細はまだ判明していないが、金の契約には年間最大150万ドル(約1億6500万円)の出来高が付随する。

 基本年俸にして年間100万ドルの評価の差は、どのように生まれたのだろうか?

山口と金の2019年投球成績。山口はNPB、金はKBOでの成績(三尾圭作成)
山口と金の2019年投球成績。山口はNPB、金はKBOでの成績(三尾圭作成)

 まずは両投手の2019年の投球成績を見てみたい。山口は日本プロ野球(NPB)、金は韓国プロ野球(KBO)での成績なので、単純比較はできないが参考にはなる。防御率は金の方が低いが、山口は20イニングも投球回数が少ないのに奪三振は上回っている。K/9(9イニングあたりの奪三振数)は山口が9.95で、金は8.52だ。しかし、金には制球力という武器があり、BB/9(9イニングあたりの与四球数)は山口の3.18に対して、金は1.80を誇る。

 守備の影響を受けずに投手が自らの責任である奪三振、与四球、被本塁打数を使って導き出すFIPは投手の能力を計るデータとして知られ、山口のFIPは2.88、金は2.82で金に軍配が上がるがその差はほとんどない。金には制球力という武器があるが、山口にも本塁打を打たれないという長所がある。

 次に2人が同じ舞台で投げたデータが下の表だ。

プレミア12での山口と金の投球成績(三尾圭作成)
プレミア12での山口と金の投球成績(三尾圭作成)

 2人ともに今秋のプレミア12に選ばれ、投げている。試合数が少ないので、データサンプルも少ないが参考までに比較してみよう。

 山口は決勝の韓国戦を含めてベネズエラ戦、オーストラリア戦の3試合に先発している。ベネズエラとオーストラリア相手には、4イニングを投げているが、どちらの試合でも失点を記録。韓国戦では初回に2本の本塁打を浴びて、1イニングでKO降板しているので、防御率も6.00まで跳ね上がった。

 金はカナダ戦と台湾戦の2試合に先発。カナダ相手には6回を1安打、無失点、7奪三振と好投したが、台湾には3.1回で8被安打、3失点と打ち込まれた。

 2人の投手の持ち玉は、山口が平均145キロのストレート(最速157キロ)、135キロのフォーク、131キロのスライダー、115キロのカーブを投げる(シュートとチェンジアップも持つが、試合ではほとんど投げない)。投球の生命線はフォークで、2019年は空振り率が24.8%、被打率も.158とフォークで抑える印象が強かった。

 金のストレート平均146キロ、最速155キロと山口とほぼ同じで、決め球は縦に鋭く落ちる高速スライダーで131キロから140キロの間のスピードが出る。フォークとカーブも織り交ぜ、カーブは大きく縦に割れるので、高低差で勝負する投手だ。

 フォークは肘への負担が大きく、これまでもフォークを武器にメジャーへ挑戦した田中将大と大谷翔平は1年目のシーズン途中に肘を痛めている。

 金は2017年に左肘のトミー・ジョン手術を受けたが、手術後は投球内容が良くなり、制球力も安定した。

 年齢が1歳若く、左腕で、故障のリスクも少ないことが、金が山口よりも高評価を受けた理由として挙げられる。

 山口は2019年の170イニングが自己最高で、起用法の問題もあるが150イニングを投げたことが2度しかない。金は190イニング以上が2度、160イニング以上も5度あり、耐久性の面でも金の方が安心できる。

 金のニックネームは「柳賢振(リュ・ヒョンジン)2世」だが、ドジャースの柳の活躍も金にとって有利に働いた。

 2012年12月にドジャースと6年契約を結んだ柳は、2019年にアジア人としては野茂英雄以来、韓国人では初となるオールスター戦で先発を務めるなど大活躍。アジア人投手として初となる最優秀防御率のタイトルを手にして、サイ・ヤング賞投票でも2位に入った。柳は182.2イニングを投げて、僅かに24与四球(BB/9は1.19)で、金をも上回る制球力でナショナル・リーグの打者を封じ込めた。

 精密機械のような制球力を誇る韓国出身の左腕という共通項があるので、柳の成功イメージを金に被せている部分もあるはずだ。

 柳2世と呼ばれる金に対して、柳と同じような活躍を期待して年俸が上積みされた可能性も否定できない。

 山口と金はまだメジャーでは1球も投げてなく、現時点での評価はあまり意味をなさない。契約が終わった2年後に、より良い成績をあげて真の高評価を得るのは果たしてどちらなのだろうか。