35歳のバレンティンに2年総額10億円の価値はあるのか?

マリナーズ時代にイチローと一緒にプレーしたバレンティン(三尾圭撮影)

 ヤクルト・スワローズから自由契約選手として公示されたウラディミール・バレンティン。ソフトバンク・ホークスが2年総額10億円の契約で迎え入れるとの報道があるが、35歳の選手に年俸5億円は払い過ぎだとの声も聞こえてくる。

 日米では一概に比較できないが、メジャーではここ数年は30代後半の選手への大型契約を控える傾向が高く、オールスターに選ばれたスター選手でも望むような新契約を得られないケースが多い。

 昨オフを例に見てみよう。

  • ネルソン・クルーズ(38歳)2014年本塁打王、17年打点王、オールスターに6度選出。ミネソタ・ツインズと1年1400万ドル(約15億4000万円)、2年目は1200万ドル(約13億2000万円)でチーム・オプションで契約。2018年度年俸1425万ドル(約15億6750万円)。
  • カーティス・グランダーソン(38歳)2011年打点王、オールスターに3度選出。マイアミ・マーリンズと1年175万ドル(約1億9250万円)で契約。2018年度年俸500万ドル(約5億5000万円)。
  • イアン・キンズラー(36歳)オールスターに4度選出。2年総額800万ドル(約8億8000万円)、3年目は350万ドル(約3億8500万円)でチーム・オプションで契約。2018年度年俸1100万ドル(約12億1000万円)。
  • ハンター・ペンス(35歳)オールスターに4度選出。1年200万ドル(約2億2000万円)でテキサス・レンジャースと契約。2018年度年俸1850万ドル(約20億3500万円)。
  • ニック・マーケイキス(35歳)オールスターに1度選出。アトランタ・ブレーブスと1年400万ドル(約4億円4000万円)、2年目は600万ドル(約6億6000万円)のチーム・オプションで再契約。2018年度年俸1100万ドル(約12億1000万円)。

年齢は昨オフ、2018年12月31日時点のもの。年俸は1ドル=110円で換算。

 ほとんどの選手が1年契約、もしくは2年目の契約更新はチームに選択権があるチーム・オプション付きの契約で、ペンスは前年度の1850万ドル(約20億3500万円)から200万ドル(約2億2000万円)、キンズラーも1100万ドル(約12億1000万円)から350万ドル(約3億8500万円)と大幅な減俸を強いられた。

 今オフもメジャーのベテラン選手は厳しい現実に直面する中で、日本ではバレンティンが年俸4億4100万円からアップ提示の複数年契約を勝ち取るのだから、異論が出るのも理解はできる。

 30代後半を過ぎればケガのリスクも高まるし、パワーも衰えてくる。そんな選手に5億の年俸を払うのは正しい査定なのだろうか?

 そこで今度はバレンティン同様、30代半ばにプロ野球で移籍した外国人選手の成績を見てみたい。

30代半ばで移籍した外国人選手の移籍前後2年間の成績、年齢は4月1日時点でのもの(三尾圭作成)
30代半ばで移籍した外国人選手の移籍前後2年間の成績、年齢は4月1日時点でのもの(三尾圭作成)

 まずは36歳だった2003年オフに近鉄バッファローズから読売ジャイアンツに移籍したタフィー・ローズ。近鉄最後の3年間は55本、46本、51本の本塁打を放ったローズは、移籍1年目の04年に45本塁打を放って期待に応えている。翌05年はコーチとの口論や右肩の故障で101試合の出場に留まり、本塁打も5年振りに30本にも満たなかったが、オリックス・バッファローズに移籍した07年と08年には共に40本塁打以上を放ち、40歳まで活躍した。

 2007年のオフに西武ライオンズからオリックスに移籍してローズとチームメートになったのが、移籍当時35歳だったアレックス・カブレラ。02年には王貞治とローズに並ぶシーズン55本塁打(当時の日本最多記録)を記録したが、カブレラがパワーを発揮したのは来日した最初の3年間(49本、55本、50本)だけで、それ以降は40本塁打に届くことはなかった。それでも、移籍2年前の06年は打点王で、打率と本塁打はリーグ2位と、三冠王も狙える成績を残した。移籍前年に打撃成績を落としたために、この4人の中では唯一、年俸ダウンでの移籍となったが(年俸2億5000万円+出来高5000万円)、移籍1年目には成績を大幅にアップさせている。2年目の09年はケガに見舞われて65試合しか出場できなかったが、38歳の2010年には打率.331、24本塁打、リーグトップのOPS.997の成績を残して30代後半まで活躍を続けた。

 カブレラが西武からオリックスへの同リーグ移籍をした2007年のオフに、ヤクルトから巨人への同リーグ移籍をしたのが当時は33歳だったアレックス・ラミレス。ヤクルトでは03年に40本塁打を放ったのが自己最多で、移籍前の2年間は30本塁打にも満たなかったのが、移籍1年目にいきなり45本塁打を打っている。ラミレスの場合は移籍した年齢が他の3選手に比べると2、3歳若いが、自己最高の49本塁打を打ったのは35歳の年(2010年)で、これは来季のバレンティンと同じ年齢。

 バレンティンも日本プロ野球最多記録となるシーズン60本塁打を放ったのは6年も前のことで、大当たりしたその年以外はホームランは30本代(15試合しか出場できなかった15年は除く)。40本塁打は期待できなくても、安定して30本以上は打っている。

 バレンティンは30本塁打、90打点を計算できる選手。過去の外国人選手の例をみれば、バレンティンが2年間は活躍できる可能性は高いと言える。また、国内フリーエージェント権を手にしたために、外国人選手枠の制限を受けないのも大きい。王貞治会長は「長打は試合の流れが変わる。一振りで点が入り、勝負の大事なポイントになる」とバレンティンの長打力を評価する。ソフトバンクには強打者が多いが、バレンティンが加わることで選手層は一層厚くなる。4連覇を達成できるチャンスはそうそう巡ってこないだけに、ソフトバンクのフロント陣はバレンティンに5億円を払う価値があると判断したのだろう。