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トップ10で4人のQBが指名を受ける!2018年NFLドラフト1日目

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
今年のNFLドラフトは4月26日から28日までテキサス州にて開催

 2018年のNFLドラフトが幕を開けた。

 今年のNFLドラフトはダラス・カウボーイズの本拠地であるテキサス州ダラス郊外のアーリントンにあるAT&Tスタジアムで開催。NFLのドラフトは年々華やかになり、規模も大きくなっており、今年は初めてNFLのスタジアムで行なわれている。

 アメリカ4大スポーツリーグの中で最初にドラフト制度を導入したのもNFLで、第1回目のドラフトが行なわれたのは1936年のこと。現在では3日間に渡り、初日は1巡目だけ、2日目は2巡目と3巡目、そして最終日は4~7巡目までの指名が行なわれる。

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全体1位指名はハイズマンQB

 初日となった26日(日本時間27日)には、32選手が1巡目指名を受けた。

 NFLのドラフトは完全ウェーバー制となっており、前年度の成績最下位チームから指名をしていく。ドラフト指名権のトレードも認められており、シーズン中に選手とドラフト指名権がトレードされるだけでなく、ドラフトの最中にも指名権同士が交換されるケースも多い。昨季全敗を喫して、今ドラフトで全体1位指名権を持っているクリーブランド・ブラウンズは全体4位指名権も持っていたが、これは昨年のドラフトで1巡目全体12位指名権をヒューストン・テキサンズに差し出して、テキサンズの2017年1巡目全体25位指名権と2018年1巡目指名権を交換したもの。トレードの時点ではテキサンズの1巡目指名権が全体何位になるかは不明だったが、昨季のテキサンズは主力選手にケガ人が続いて成績も低迷したため、ブラウンズはラッキーなことに全体4位指名を手にできた。

 そのブラウンズだが、全体1位でオクラホマ大学のクオーターバック(QB)、ベイカー・メイフィールドを指名。事前の予想では南カリフォルニア州大学のQB、サム・ダーノルドか、ペンシルベニア州立大学のランニングバック(RB)、セイクワン・バークリーのどちらかが有力視されていただけに、一番目にメイフィールドの名前が呼ばれると会場はどよめいた。

 大学フットボール界の最優秀選手に与えられるハイズマン賞に選ばれたメイフィールドだが、身長185センチとNFLのQBとしては小柄な点と、1年前に飲酒絡みで逮捕された点で、大学での能力は凄くてもNFLでの活躍を疑問視するスカウトも多かった。

 大学フットボールの有望選手はスポーツ特待生として大学側から奨学金を提示されて入学するのが普通だが、メイフィールドはテキサス工科大学に一般入学した後に、ウォークオンと呼ばれる入部テストをパスしてチームに加入した一般学生。俗に「BCSスクール」と呼ばれるNCAAの強豪カンファレンスの65校の歴史で、メイフィールドは初めて入学1年目の開幕戦にQBとして先発出場した一般学生となった。

 ちなみに今年のNFLドラフトの対象選手であるUCLAの庄島辰尭は、初めてBCSスクールで公式戦に出場した日本人選手だと言われているが、彼もまたスポーツ特待生として入学したのではなく、一般学生からロスター入りを勝ち取った選手だ。

 メイフィールドに話を戻すが、彼はコーチ陣との関係が悪化して1年生を終えるとオクラホマ大学に転校。NCAAのルールで転校した1年目は試合に出られなかったが、翌年から先発QBとして活躍。2年連続でパス成功率が70%を超える正確なパスを武器に、今年のハイズマン賞投票では史上最高の投票率を得て、ウォークオンの選手としては初となるハイズマン賞に選ばれた。

 長年、低迷を続けるブラウンズは「QBの墓場」と言われており、1999年以降で28人もの先発QBを取っ替え引っ替えしており、QBが根付かないし、育たない。2014年のドラフトでは1巡目指名でハイズマン受賞QBのジョニー・マンジールを指名したが、マンジールは僅か2年で捨てられた。

 個人的にはブラウンズは全体1位でバークリーを取り、全体4位をトレードダウンして1巡目下位でQBを指名するべきだったと思っている。このオフにはバッファロー・ビルズで先発QBを務めていたタイロッド・テイラーを獲得しているが、メイフィールドは1年目を控えで過ごすことに拒否感を示している。果たしてメイフィールドはブラウンズの悪夢の歴史に終止符を打てるのか、はたまた前任者たちと同様に闇に葬られてしまうのか気になるところだ。

NYの2チームは的確な補強に成功

 全体2番目指名のニューヨーク・ジャイアンツはバークリーを獲得。数年後にはリーグを代表するRBに成長するだけの能力を感じさせるバークリーだが、ジャイアンツが本当に指名すべきはイーライ・マニングの後釜となるべきQBだったのではないか?バークリーは今ドラフト対象選手の中で最も才能豊かだが、チーム再建の目玉となるのはRBよりもQB。それでもバークリーのような特別な才能を感じさせる選手を指名しないのは勿体ないのも確かだ。

 ジャイアンツに続いて3番目に指名したのは、同じニューヨークを本拠地として、本拠地スタジアムも共有しているニューヨーク・ジェッツ。ジェッツもQBを必要としており、スカウトから高評価を受けているダーノルドの獲得に成功。ジェッツは本来は全体6番目指名権を持っていたが、これに2巡目指名権2つと来年の2巡目指名権まで付けて、全体3位指名権を持っていたインディアナポリス・コルツとドラフトの1ヶ月前にトレードを行っていた。指名順位を3つ上げるためだけに、2巡目指名権を3つも差し出したジェッツはどうしてもQBが欲しかったはず。今ドラフトには4人の超有望株QBがいたが、その中でもジェッツが本当に欲しかったのはメイフィールドよりもダーノルドのはずなので、3番目までダーノルドが残っていたのは幸運だった。

守備の強化に成功したブロンコズとギャンブルに出たビルズ

 4番目の指名権を持つブラウンズは、この指名権を餌に良いトレードを仕掛けるべきだったが、指名したのはオハイオ州立大学のコーナーバック(CB)、デンゼル・ウォード。ウォードがこんなに早く指名されるとは思わなかったので、この指名はメイフィールドよりも予想外のものだった。ブラウンズがディフェンシブバックの補強を必要としていたのは確かだが、ウォードを指名するよりも、他のチームと指名権を交換した方が再建がうまく進むと思われる。トップ4の指名権を2つも持っていたブラウンズだが、2つの指名権とも疑問符がつく。

 オフにバイキングスからフリーエージェント(FA)となったQBのケース・キーナムを獲得したブロンコズだが、全体5位指名権ではQBを取るのではという予想が多かった。しかし、4位以内で指名されると思われたノースカロライナ州立大学のディフェンシブエンド(DE)、ブラッドリー・チャッブを選んだ。3シーズン前にスーパーボウル王者になったときも強固な守備力で優勝しただけに、そのときのスーパーボウルでMVPに選ばれたボン・ミラーとチャッブのコンビはチーム力を大きく向上させるはずだ。

 ジェッツとのトレードで2巡目指名権を3つも獲得したコルツは、全体6番目でノートルダム大学のガード(G)、クエントン・ネルソンを指名。地味ながら堅実なピックで、ケガから復帰を目指すQBのアンドリュー・ラックにとっては頼もしい存在となるだろう。

 今ドラフトで「BCSスクール」以外から最初に指名を受けたのが、ビルズが7位で指名したワイオミング大学のQB、ジョシュ・アレン。身体能力は高いが安定感には欠ける「ハイリスク・ハイリターン」なQB。ビルズは全体12位指名権を持っていたが、ドラフトの行方を見ながらトレードのタイミングを図っていた。当初はブロンコズの全体5位指名を譲り受けることで話が固まっていたが、チャッブが5位まで残っていたので、ブロンコズが指名権のトレードを断った。そこで全体12位に2巡目指名権2つを付けて、7位指名権を持っていたタンパベイ・バッカニアーズとのトレードに成功。先発QBのテイラーを放出したチームは1年目から先発できるQBを欲していたが、ならばアレンよりもNFL向きなUCLAのQB、ジョシュ・ローゼンの方が良かったのではと思う。

カージナルスがドラフト1巡目全体10位で指名したUCLAのQB、ジョシュ・ローゼン(三尾圭撮影)
カージナルスがドラフト1巡目全体10位で指名したUCLAのQB、ジョシュ・ローゼン(三尾圭撮影)

庄島のチームメートのローゼンはカージナルスが強奪に成功

 私が個人的に今ドラフトで最も注目していたローゼンは、全体10位でアリゾナ・カージナルスが指名。全体15位指名権を持っていたカージナルスだが、ローゼンが10位まで残っていたので、オークランド・レイダースに15位指名権に3巡目と5巡目指名権を差し出して、10位指名権と交換。11位指名権を持っていたマイアミ・ドルフィンズがローゼンを指名すると推測してのトレードアップだった。

 チームを支えてきたQBのカーソン・パーマーが引退したために、オフにはサム・ブラッドフォードと契約したので、ローゼンがNFLでプレーできる準備が整うまでは大事に育成できる環境だ。

 庄島のチームメートなので、この2年間はローゼンのプレーを間近で何度も見てきたが、NFLでも活躍できる能力の持ち主。傲慢さを指摘されるが、裏を返せば負けず嫌いな性格で、これは一流のアスリートには欠かせないもの。また、身体の線が細いので、大学時代もケガは多かっただけに、まずはNFLでプレーできる体作りに専念してもらいたい。

成功するのはどのQBか?

 ローゼンが10位で指名されたことで、NFLのドラフト史上初めて4人のQBがトップ10位内に指名された今年のドラフト。数年後にNFLを代表するQBに成長しているのは、メイフィールド、ダーノルド、アレン、ローゼンの中の誰なのか?

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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