ライスボウル改革論 後編

富士通フロンティアーズを強豪チームに成長させたコービー・キャメロン(三尾圭撮影)

ライスボウル改革論 前編 からの続きです

 Xリーグはプロリーグではなく社会人リーグだが、アメリカから数多くの優秀な選手を獲得しており、「プロフェッショナル」と呼んでも遜色がない待遇を受けている選手も存在する。

 Xリーグの内規では、外国籍選手登録は各チームともに4名まで可能で、2選手までが同時にプレーすることが可能だ。アメフトはオフェンスとディフェンスで選手が完全に入れ替わるので、オフェンスに2人、ディフェンスに2選手を登録すれば、外国籍選手枠を有効活用できる。

 アメフトの試合ではオフェンスの司令塔役であるQB(クォーターバック)の存在が非常に大きい。QBは野球でいう投手のような存在で、優秀なQBを獲得するのがチーム強化の早道とされる。

優秀なアメリカ人選手の大量加入で、Xリーグと学生の実力差は大きく開いている

 例えば、3年連続でライスボウルに出場するフロンティアーズが強豪チームに生まれ変わったのは、2014年にQBのコービー・キャメロンを獲得してからだ。

 キャメロン1年目の2014年にJXBで初優勝すると、ライスボウルも初制覇。2015年はJXBで敗退したが、2016、17年とJXB2連覇を成し遂げた。富士通はキャメロン加入1年目に初めてXリーグの頂点に立つと、その後4年続けてJXBまで勝ち進み、3度もXリーグの頂点に立つ黄金期を作り上げたのだ。

 アメリカではルイジアナ工科大学4年生だった2012年にインターセプトなしのパス連続成功回数の米大学アメフト(NCAA)記録を樹立。それまで同記録を保持していたのは2014年にスーパーボウルを制したラッセル・ウィルソン(2008年、ノースカロライナ州立大学在籍時)だった。

 その2012年にはNCAAの年間最優秀QBに与えられるサミー・ボウ賞に選ばれる。ちなみにキャメロンの翌年に同賞を受賞者したデレック・カー(2013年、フレズノ州立大学)は、オークランド・レイダースのQBとして2500万ドル(約28億円)の高年俸を手にする。

本場仕込みのプレーでフロンティアーズで黄金時代を築き上げたQBのコービー・キャメロン(三尾圭撮影)
本場仕込みのプレーでフロンティアーズで黄金時代を築き上げたQBのコービー・キャメロン(三尾圭撮影)

 優秀なアメリカ人QBを初めて招聘したのは、2012年のIBMビッグブルー。アメリカ大学界の名門UCLAでQBを務めたケビン・クラフトを獲得したビッグブルーは、クラフト2年目の2013年に球団初となるJXBまで勝ち進んだ。

 IBMの成功でアメリカ人QBがもたらす影響の大きさを認識したXリーグの各チームは、攻撃の中心であるQBをアメリカ人選手に任せるようになり、成績上位チームの中で日本人がメインQBを務めているのは純血主義のリクシル・ディアーズくらいしか残っていない。

 XリーグはNFLでプレー経験がある選手との契約を禁じているので、現役NFL選手や元NFL選手がXリーグでプレーするにはルール改正が必要で、現時点では大学で活躍しながらもNFLに漏れた選手を獲得するしかない。

 キャメロンは大学卒業後にNFLのカロライナ・パンサーズのトレーニング・キャンプに招待されたが、開幕ロースターに残ることはできずに解雇された。

 今後もXリーグにはNFLに入れなかった、NFL一歩手前のQBが増えるはずだ。

Xリーグにアメリカ人QB革命を起こしたビッグブルーのケビン・クラフト(3番)(三尾圭撮影)
Xリーグにアメリカ人QB革命を起こしたビッグブルーのケビン・クラフト(3番)(三尾圭撮影)

日本人大学生LTは、NFL一歩手前のアメリカ人DEを止められるのか?

 NCAAで実績を残して活躍したアメリカ人QBがXリーグに増えれば、各チームはアメリカ人QB封じの策を立てなければならない。

 QB封じに最も有効なのはディフェンシブエンド(DE)にデカくて速いアメリカ人選手を起用することだ。

 

 NFLで現役最強の守備選手と呼ばれるのが、ヒューストン・テキサンズのDE、JJ・ワット。身長196センチ、体重132キロの鍛え上げられた身体ながら、40ヤード走を4.8秒で走るスピードを誇る。こんな巨漢の選手が猛スピードで襲い掛かってくるのだから、QBにとっては悪夢でしかない。

 ビッグブルーには身長195センチ、体重123キロとワット並の体格を誇るジェームズ・ブルックというアメリカ人DEがいる。オービック・シーガルズのDE、ケビン・ジャクソン(193センチ、108キロ)はNFLのグリーンベイ・パッカーズのミニキャンプに招待された実績を持つ。

 アメリカ人QBのレベルが上がれば、怪物のような身体能力に恵まれたアメリカ人DEは今後ますます増えていく。

 身長2メートル、体重125キロ近い大型アメリカ人DEを止められる日本人大学生選手がどれだけいるだろうか?

 NFLでは右利きのQBのブラインドサイドを守るレフトタックル(LT)の存在が大切だが、日本の学生界にアメリカ人DEに対抗できるLTは見当たらない。

 アメリカ人DEとの対戦経験を持たない日本人大学生LTが、試合でいきなり対戦しても対処するのは難しい。その結果、大きな痛手を負うのは大学生QB。

 日大が甲子園ボウルを制覇するのに大きく貢献して、大会のMVPにも選ばれた1年生QBの林大希は174センチ、81キロの小さなQBで、まだ成人してない彼の身体は成長過程にある。将来の日本アメフト界を担う逸材と期待されている林が、ライスボウルでアメリカ人DEに破壊されたらどうするつもりなのだろうか?

NFLのトップDE並の体格を誇るビッグブルーのジェームズ・ブルック(34番)(三尾圭撮影)
NFLのトップDE並の体格を誇るビッグブルーのジェームズ・ブルック(34番)(三尾圭撮影)

 近年、NFLでは選手の脳震盪問題が社会問題にまで発展している。

 キャメロンの実兄で、NFLでプレーしていたジョーダン・キャメロンは、6年間に4度も脳震盪を患って昨シーズン限りで現役引退を表明した。これまでにNFLでは何人ものスーパースターQBが脳震盪で引退に追い込まれてきた。

 NFLでさえそうなのだから、日本の社会人対学生のように、あまりにも体格差、実力差があり過ぎる選手同士の対戦は危険でしかない。

 学生の中には社会人選手に引けを取らない実力を持つ選手も数人いるが、全体的なレベルは大きな差がある。

 今後、Xリーグにはブルックやジャクソンを超える実力を持つDEが加入する可能性は高く、NFLに近い実力を持った選手と不慣れな大学生を対戦させるのはリクスが大きい。

日本アメフト界の発展を進めるためにもライスボウルを改革して、JXBの価値を高めるべき

 大きなケガを追う被害者が出てきてからでは遅すぎるので、日本アメリカンフットボール協会は一刻も早くライスボウルの見直しをするべきだ。

 アメリカンフットボールは知力と体力を駆使して戦う魅力的なスポーツで、様々なタイプの選手が活躍できるポジションが用意されている。そのために、身体の大きな選手と小さな選手の肉体同士が激突することもあるので、NFLでは頻繁にルール変更が行われ、選手の安全を守っている。

 日本でアメフトをより広く普及するためにも日本アメリカンフットボール協会には、大会の意義をもう一度考え、改革を推し進めることを望みたい。

 社会人と大学生の対決であるライスボウルの役目は終わった。ライスボウルは大学日本一を決める試合とする。また、JXBの開催を12月半ばから日本アメフト界の恒例行事となりつつある1月3日の東京ドームに変え、ライスボウルと同日開催。大学、社会人の王者決定戦をダブルヘッダーで行い、1月3日は日本アメフト界のスーパーボウル的な日にしてはどうだろうか?