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スーパーボウルへ出場するチームは? ~NFLプレイオフを占う NFC編~

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
マット・ライアンとアーロン・ロジャース(Photo: Kiyoshi Mio)

NFC Playoffs Preview: Text&Photos by Kiyoshi Mio

1月1日にNFLの全32試合が試合を行ない、今季のレギュラーシーズンが終了した。

レギュラーシーズンの戦いを勝ち抜いて、スーパーボウル出場権を賭けたプレイオフに進出できたのは、NFCからは以下の6チーム。

ナショナル・フットボール・カンファレンス(NFC)

1位:ダラス・カウボーイズ(13勝3敗、NFC東地区王者)

2位:アトランタ・ファルコンズ(11勝5敗、NFC南地区王者)

3位:シアトル・シーホークス(10勝5敗1分、NFC西地区王者)

4位:グリーンベイ・パッカーズ(10勝6敗、NFC北地区王者)

5位:ニューヨーク・ジャイアンツ(11勝5敗、ワイルドカード枠)

6位:デトロイト・ライオンズ(9勝7敗、ワイルドカード枠)

11勝を挙げたジャイアンツが5位シードで、10勝のパッカーズが4位シードなのは、NFLでは勝ち星よりも地区優勝チームが優遇されるため。4位と5位チームはプレイオフ1回戦で対戦するが、勝ち星の少ないパッカーズが地区優勝の特権を生かしてホームフィールド・アドバンテージを与えられる。プレイオフではホームフィールド・アドバンテージを持ったチームが絶対的に優位なので、4位と5位の差は大きい。

AFC編同様に、まずはデータを基に算出したスーパーボウル出場確率を見てみたい。

NFCチーム・スーパーボウル出場確率

カウボーイズ:35%

ファルコンズ:32%

シーホークス:13%

パッカーズ:12%

ジャイアンツ:5%

ライオンズ:3%

1位シードのペイトリオッツが圧倒的な大本命として君臨するAFCと異なり、NFCは大混戦が予想される。1回戦を免除された1位シードのカウボーイズと2位シードのファルコンズがスーパーボウルに進むのではと予想する声が高いが、シーホークスとパッカーズにも十分にチャンスはある。

「アメリカズ・チーム」の異名を持ち、NFLの中で最も全国的にファンの多いカウボーイズと、憎らしいほどに安定した強さを誇るが故にアンチファンも多いペイトリオッツがスーパーボウルで対戦するのが、試合を放送するテレビ局や多くのファンが望むゴールデンカードと言える。

データが弾き出したNFCの本命は第1シードのカウボーイズ(三尾圭撮影)
データが弾き出したNFCの本命は第1シードのカウボーイズ(三尾圭撮影)

昨年のスーパーボウルに出場したブロンコズとパンサーズの両チームがプレイオフ出場を逃す一方で、昨季は4勝12敗と大きく負け越したカウボーイズが1位シードを得た。

カウボーイズ大躍進の立役者となったのは、クォーターバック(QB)ダック・プレスコットとランニングバック(RB)エゼキエル・エリオットの新人コンビ。

ドラフト前から即戦力との評価を受けていたエリオットは、今季のリーグ最高となる1631ラッシング・ヤードを稼いで1年目からラッシング王に輝くなど期待以上の働きを見せた。

今ドラフトでは全体1位と2位にQBが指名を受けるなどQBが注目されたドラフトだったが、プレスコットは4巡目全体135位、QBとしても8番目であり、予想外の活躍で長期欠場中だったエースQBトニー・ロモの穴埋めをした。

プレスコットとエリオットが活躍できたのは、彼らの能力が高いこともあるが、それ以上にオフェンシブライン(OL)陣の力が大きい。今季のカウボーイズはリーグ屈指のOLを揃え、パスのときにはしっかりとQBを守り、ランプレーではRBのために走路を作り出した。トラビス・フレデリック、ザック・マーティン、タイロン・スミスとOL5選手中3人がプロボウルに選ばれたほどの強力OL陣は縁の下の力持ちとしてカウボーイズの大躍進を支えてきた。

得点、失点共にリーグのトップ5にランクインしているカウボーイズは攻守のバランスが優れたチームで、NFCを勝ち抜けるだけの力を持っている。しかし、プレイオフはレギュラーシーズンとは大きく異なり、必ずしも総合力が高いチームが勝つ訳ではない。

鍵を握るのはルーキーQBのプレスコット。彼が初戦を勝てれば、そのまま波に乗ってスーパーボウルまで行ける可能性は高いが、初戦でプレッシャーに潰されてしまう可能性は否定できない。ラッシング・オフェンスはリーグ2位だが、パッシング・オフェンスはリーグ23位と平均以下でもある。レギュラーシーズン最終週にロモが復帰を果たしたのは心強いが、同時にロモは大舞台に弱い面も持っている。

カウボーイズが今季、喫した3敗は全て同地区相手のもの。最終週のイーグルス戦は勝負の結果に関わらず第1シードが決定していたためにエリオットを温存して、プレスコットも1Qで引っ込めたので、この敗戦は計算済み。問題は残りの2敗で、これは両方ともにジャイアンツに敗れたもの。ジャイアンツが1回戦を勝ち抜くと、2回戦――すなわち、カウボーイズにとってのプレイオフ初戦――で両チームが今季3度目の対戦をする可能性が高い。ジャイアンツ戦には苦手意識が刷り込まれているだけに、本命カウボーイズの初戦敗退も考えられる。

カウボーイズ大躍進の原動力となったのは強力なOL陣(三尾圭撮影)
カウボーイズ大躍進の原動力となったのは強力なOL陣(三尾圭撮影)

2位シードのファルコンズはMVP有力候補のQBマット・ライアンとワイドレシーバー(WR)フリオ・ジョーンズのホットラインが生命線の攻撃型チームで、今季唯一500得点超えを果たしている。ライアンは40ヤード以上のロングパス成功数がリーグ最多の17回を記録しており、一本のパスでゲームの流れを変えられる。RBデボンタ・フリーマンはラッシング能力だけでなく、パス捕球能力も高く、ライアンはジョーンズ以外にも多彩な選択肢があり、確実性の高いパスでゲームを支配する。

ファルコンズの弱点はリーグで6番目に多い失点を許したディフェンス。点取合戦になればファルコンズに分があるが、プレイオフはレギュラーシーズンとは異なり守備的展開が繰り広げられることが多いために不安が残る。リーグ最多の15.5サックを記録したビック・ビーズリーがビッグプレーを生み出されば、ディフェンスから流れを引き寄せられるかもしれない。

QBライアンのメインターゲットとなるWRフリオ・ジョーンズ(三尾圭撮影)
QBライアンのメインターゲットとなるWRフリオ・ジョーンズ(三尾圭撮影)

超攻撃型のファルコンズとは対照的に、守備力が売りなのがシーホークス。失点はリーグ3位で、今季は10得点以下に抑えた試合が5回もあった。

ただ、懸念されるのがフリーセーフティ(FS)のアール・トーマスの負傷欠場。ディフェンス最後の砦として立ちはだかっていたトーマスの不在は大きく、トーマス離脱後のシーホークス守備陣は以前ほどの怖さを感じさせない。それでも、リーグ・ナンバーワン・コーナーバック(CB)リチャード・シャーマンは健在。相手QBはシャーマンが守るサイドには投げてこないほどに彼の存在感は大きい。

攻撃面でもWRタイラー・ロケットが故障離脱して、QBラッセル・ウィルソンは頼りになるターゲットを1人失った。それでもWRダグ・ボルドウィンとジャーメイン・カーシー、TEジミー・グラハムへパスを投げ分けていければエンドゾーンまで進める。ラン・オフェンスが弱いだけに、相手守備陣の意識は空中戦に注がれるが、そんな状況の中でウィルソンがどこまで結果を残せるかが鍵となる。

シーホークスのCBリチャード・シャーマンが守るサイドには相手QBもパスを投げない
シーホークスのCBリチャード・シャーマンが守るサイドには相手QBもパスを投げない

第4シードのパッカーズは6連勝でプレイオフを迎える最も勢いに乗ったチーム。シーズン半ばで4勝6敗だったときにはプレイオフは絶望的に思われたが、そこから見事に巻き返してみせた。

QBアーロン・ロジャースは今季も健在で、彼がいるだけでチームに勝機を呼び込めるほどにその存在感は大きい。最高の相棒であるWRジョディー・ネルソンの調子も良く、WRダバンテ・アダムスも成長。ロジャースはTEジャレッド・クックの身体能力の高さをうまく活用しながら、インサイドにもパスを通す。ロジャースはシーズン最後の7試合では15タッチダウンを奪いながら、インターセプションがゼロとほぼ完璧に近いプレーを見せている。

また、シーズン途中にWRからRBに転向したタイ・モンゴメリーはロジャースの負担を軽減する。エディ・レーシーを始め数人のRBがケガで離脱して、モンゴメリーのRB起用はRB不在の危機を救う応急処置のはずだったが嬉しい誤算だった。

パッカーズもファルコンズ同様に守備に不安が残るだけに、ラインバッカー(LB)のクレイ・マシューズとニック・ペリーが相手QBにプレッシャーを与えてディフェンシブバック(DB)陣の負担を軽減したい。相手チームを30点以下に抑えた試合では、10勝1敗と圧倒的な強さを誇るパッカーズ。30点に抑えるのは、それほど難しい課題ではない。リードを許してハーフタイムに突入した試合では7連敗中なだけに、前半にどれだけ得点を奪えるかが鍵となる。

勝負強さと強肩を兼ね備えるパッカーズのQBアーロン・ロジャース(三尾圭撮影)
勝負強さと強肩を兼ね備えるパッカーズのQBアーロン・ロジャース(三尾圭撮影)

そんなパッカーズと1回戦で対戦するのがジャイアンツ。スーパーボウル優勝経験のあるQBイーライ・マニング、リーグで最もエキサイティングな選手の1人であるWRオデル・ベッカム・ジュニアと攻撃陣にスター選手を揃えるが、ジャイアンツの強みはディフェンス。失点数はペイトリオッツに次ぐリーグで2番目に少く、ランニングゲームを止めるのに絶対的な自信を持っている。このラン・ディフェンスの強さがカウボーイズから2勝を挙げた勝因にもなっている。

攻撃陣が安定しないだけに、ディフェンスの踏ん張りが必要とされる。

不安定なプレーぶりが懸念されるジャイアンツのQBイーライ・マニング(三尾圭撮影)
不安定なプレーぶりが懸念されるジャイアンツのQBイーライ・マニング(三尾圭撮影)

ワイルドカード最後の1枠に残ったライオンズはレギュラーシーズン最後の3試合を全敗と一時の勢いが完全に消えてしまった下降線中のチーム。最後の3試合の相手はジャイアンツ、カウボーイズ、パッカーズと全てがプレイオフに出場する強豪チームだったとは言え、これではプレイオフに勝てるとは思えない。

ライオンズのディフェンスは相手QBにリーグ最高のパス成功率(72.7%)を許しており、一流のQBを止める術がない。唯一の望みはQBのマッシュー・スタッフォードで、彼がシーズン半ばに見せたような神がかり的な活躍をプレイオフで見せられなければ、1回戦で姿を消しそうだ。

ライオンズが勝ち進むにはQBマシュー・スタッフォードの神がかり的な活躍が必要
ライオンズが勝ち進むにはQBマシュー・スタッフォードの神がかり的な活躍が必要

NFCからは本命のカウボーイズを推すのは簡単だが、それでは面白くない。ここは勢いのあるパッカーズと言いたいところだが、ジャイアンツ、カウボーイズ、ファルコンズの3チームを続けざまに撃破するのは至難の業だ。そこまで勢いが続けばよいが、ベテランが多いチームなだけに息切れの心配がある。

となると、カウボーイズよりも対戦カードに恵まれそうなファルコンズが残る。守備陣には不安が残るが、ライアン率いる攻撃陣はそれさえも上回る力を持っている。

ファルコンズは激戦区のNFCプレイオフを勝ち抜けるか?(三尾圭撮影)
ファルコンズは激戦区のNFCプレイオフを勝ち抜けるか?(三尾圭撮影)

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スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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