私案。外部指導者とかけて副業解禁ととく。

(写真:アフロ)

新型コロナウイルス禍で働き方が変わったこともあり、副業を認める企業が増えてきた。経団連も社員の「副業・兼業」を推進する姿勢を示している。

副業が許可されることによって、本業以外でやりたいことをし、能力を生かして収入を得られる道が開ける。一方で本業での給与が減り、副業をしないと生計が立てられないようになるのではないか。掛け持ちをしなければいけなくなって、総労働量が増えるのではないかという懸念もあるだろう。

今、学校の運動部活動では、指導する教員の負担が大きいことが指摘されている。授業やその準備、そのほかにもいろいろな仕事をこなしながら、運動部活動の面倒も見ているからだ。部活動の指導にストレスを感じており、やりがいを感じていない人にとっては特に負担感が大きいようだ。

学校運動部の指導を希望しない教員が、部の指導を引き受けなくてもよいように「外部指導者」を導入する学校が出てきている。教員の負担減だけでなく、生徒にとっては、競技知識や競技経験のある人から指導を受けられるというメリットもあるし、保護者でも教員でもない大人と接する機会にもなり得る。

しかし、外部指導者として1日1-2時間の運動部の指導をするだけでは、とても生計は立てられない。

「外部指導者の部活動への関与を推進する効果的な方策の検討」(青柳健隆、石井香織、柴田愛、荒木弘和、日比千里、岡浩一朗 SSFスポーツ政策研究 第2巻1号)によると、この調査に応じた外部指導者のうち、謝礼金をもらっていたのは50.3%、指導頻度は週1回が20.8%で最も多く、謝礼金の平均月額は7420円だった。

筆者の住む米国の公立高運動部にも外部指導者はいるが、平日夕方の2時間程度、週末2時間程度の仕事であり、それだけで生計を立てることは難しい。日本よりもはるかに恵まれているとはいえ、経験年数の長いベテランの外部指導者でも、1シーズンの3-4カ月で計5000ドル程度(約54万円)だ。だから、外部指導者は、人生設計の目処がついた退職した元教員か、時間のやりくりのつく本業を持っている人が多い。

日本の企業が副業を解禁したら、会社員をしながら副業として学校運動部の指導者ができるようになるか。長時間労働がはびこっている日本では、働き盛りの年代の大人のうち、夕方の1-2時間を部活動指導のために仕事を抜けられる人は少ないだろう。

もし、社員が副業として学校運動部の指導を担うと、雇用する企業側にほんの少しでもインセンティブがあったらどうだろうか。雇用主が、社員が夕方の2時間を副業としての運動部指導に充てることに柔軟であれば、雇用主側にも何らかの恩恵があるという仕組みがあったらどうだろう。一歩だけでも現実に近づくかもしれない。手っ取り早いのは、なんらかの名目で企業側にお金を渡すことだと思う。

お金を渡せないのなら企業価値を高めることにつなげるのはどうだろうか。企業は外部指導者を副業とする社員を支援すると、地域貢献の価値をつけてビジネスできる、というのはどうか。公立校の学校運動部の試合会場や練習グラウンドに自社広告を掲げることはできない。しかし、自社製品、自社の広告、看板などに、外部指導者支援、学校部活動支援という文言を入れることができるなどというものだ。

外部指導者にはいつもお世話になっているからと、保護者や生徒がその会社の商品を買うようになるかもしれない。本業でしっかり働き、副業として外部指導者をしたい就職希望者が集まり、より優秀な人を採用できるかもしれない。

もしも、外部指導者が完全なボランティアで週1回程度の指導でならば、企業はボランティア休暇制度よって、学校の部活動を支援していることを謳えばよい。

こんな提案をする以前に、多くの現実的な課題はある。まず、外部指導者の資格制度の整備、職務と職責の明確化、外部指導者の管理責任、ボランティアか報酬有りか。報酬を支払う場合は、何を基準に金額を算出するのか。

そして、ここまで書いてみて、夢でも見ているかのような甘い話であることも理解しているつもりだ。しかし、長時間労働という働き方しか認められない、労働する時間帯の柔軟性が全く認められないのであれば、余暇活動であるスポーツを楽しむ余地の少ない社会、というそもそも論にたどりつくと思う。