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東京五輪対策も。無観客試合が選手のパフォーマンスに与える影響は測定可能か。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:アフロ)

コロナウイルスの感染拡大を防ぐためスポーツ界では延期や無観客試合といった暗い話題が続く。

NPBは無観客試合でオープン戦を行っているし、大相撲も春場所も無観客で開催されることが決まった。テニスのデビスカップも無観客で行われる。選抜高校野球も、開催する場合は、無観客試合になるという。6日の日刊スポーツ電子版によると、どのような中継になるかについては決まっていない。

無観客試合は、経営者や運営者にとっては利益につながらず、ファンにとっては寂しく、選手たちにも張り合いがない。

しかし、スポーツとファンを考えるうえでのひとつの機会ではないか、とあえて視点を切り替えてみるのはどうだろうか。

大勢の観客はアスリートの身体にどのような影響を及ぼしているのかを、無観客試合で探ることはできないだろうか。今はウェアラブルデバイスで心拍数や体温を測定できるし、試合中の運動量もトラッキングシステムで取得できる。

新型コロナウイルス感染の拡大を防ぐためなのだから、実際には難しいだろうが、選手たちの唾液を採取できれば、ホルモン値も測ることができるのではないか。テストステロンやコルチゾールなどのホルモン値の変動がわかれば、選手たちが応援をうけてより攻撃的になれているか、もしくは大観衆から重圧を受けているのか、ということのヒントにつながるかもしれない。

東京オリンピック・パラリンピックの一部でも無観客で行われる可能性があるのだとしたら、無観客の会場はアスリートの心身にどのような影響があるのかを調べておくのはそれほどバカげたアイデアではないと思う。観客がいるときと比較しなければいけないのだから、現実的には時間的に間に合わないかもしれないだろうが。

もし、無観客試合のほうがアスリートのパフォーマンスにとってはベターだという研究結果が出てしまったら、どうなるのか。応援は無駄ということになってしまうから、公表できないものになってしまうのだろうか。

それでも、どのような応援なら、選手がよりよい心身状態になるのか、と一歩先にすすめるのではないかと思う。そして、私は高校野球のことも思い浮かべている。

プロスポーツは観客がいなければ成り立たないけれども、アマチュアスポーツにとっては必ずしもそうではない。たとえ観客がいなくても試合はできるし、公式戦の結果は記録される。

高校野球の選抜大会が無観客試合で行われ、テレビ中継もなくなったとしたら…。それが、選手たちの心身にどのような影響があるかについて、私はとても興味を持っている。

地元の応援団、同じ学校のブラスバンドの応援は高校生選手のプレーを後押ししているかもしれない。

しかし、観客やテレビの向こうで見ている人の視線を無意識でも感じていることによって、高校生たちはどこかで高校生らしいプレーという期待に応じ、無理をしてしまっている面があるのではないか。全国中継で恥をかきたくない、と萎縮してしまう選手がいないとも言い切れないのではないか。

無観客試合で、中継もなくなったとき、見ているだけの観衆と視聴者が高校生たちに何かを背負わせていたのかどうかも、浮き上がってくるかもしれない。これからの高校野球を見る人、視線、切り取り方の何らかのヒントになるかもしれない、と妄想する。思考が飛躍し過ぎているのは重々承知の上だが、ユーススポーツを観戦する保護者のあり方とも、私のなかではつながっている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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