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なぜ、他球団は大谷翔平の「球拾い」をしたのか。

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 

 メジャーリーグ、エンゼルスは本拠地でのグッズ売り上げが大幅にアップしたそうだ。1月25日に共同通信が伝えた。球団は大谷翔平がメジャー1年目に本格的な投打の二刀流に挑み、新人王に輝いた活躍が要因と分析しているという。

 エンゼルスが大谷効果で売り上げを伸ばしたからといって、他球団がエンゼルスのロゴが入った大谷グッズを売るわけにはいかない。

 しかし、米国のスポーツビジネスはしたたかだ。他球団は大谷の使った用具に目をつけた。エンゼルスのロゴが入った大谷グッズはエンゼルスのものだ。 けれども、試合中に使われたボール、ベース、ラインナップカードなどは、ホームチームに回収する権利がある。大谷を本拠地に迎える球団は、これらを逃さなかった。

 「エンゼルスの大谷が初めてカフマンスタジアムで試合をした時のラインナップカード」

 「エンゼルスの大谷がメジャーで初めて盗塁をしたときのロジャースセンター(トロント)のベース」

 大谷と対戦した相手もスーパースターなら、その時に投げたボールの価値はさらに高まる。こちらは大谷がアストロズのアルトゥーベと対戦したときのボールだ。1550ドル(約17万円)で落札されている。

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MLB公式オンラインオークションより。筆者撮影

 他球団は大谷が触れたもの、初めてプレーしたことの記念となるものをことごとく集めた。

 5月30日、大谷は敵地デトロイトでのタイガース戦に先発登板し、球速101.5マイル(約163キロ)を記録。タイガースはこのボールをすぐさま回収し、第三者機関の本物認定の後、101.5マイルのボールだという説明書きを添えて保管。オンラインオークションにかける準備をしていた。

 メジャーリーグの各球団には、選手の使用品や試合使用球を収集し、第三者機関に本物認定をしてもらい、販売するための担当者がいる。

 昨年6月、タイガースの担当者、マーク・ヒメルスタインさんに話を聞いた。「このシーズン、大谷の使ったものは、どのチームの担当者にとっても優先すべきものです。初めて何かをした、ということに大きな価値があります」と話していた。オンラインオークションにかけられた大谷の試合使用球は、1000ドル以上の値段で落札されているものが多いという。

 記録のかかった試合で使用されたもの、初めて選手が何かをした試合で使用されたものは、オークションでの価値が高まる。今年はマリナーズに菊池雄星が入団した。本拠地で迎え撃つ球団は、今度は菊池の「球拾い」もすることになるだろう。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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