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メジャーリーグ、カブスの新星イアン・ハップに聞く。松井秀喜氏と共通点あり?

谷口輝世子スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

今シーズンのメジャーリーグでは、新人選手が大活躍している。ヤンキースのアーロン・ジャッジ、ドジャースのコディー・ベリンジャー。両リーグともに新人が本塁打のタイトル争いをしている。

ジャッジやベリンジャーの影に隠れているが、カブスの新人イアン・ハップも頭角を現してきた。

22歳のハップは2015年のドラフトで一巡目9位の指名を受けてカブスと契約。スイッチヒッターで、守備は内外野をこなす。5月13日のセントルイス戦でメジャーに昇格。七回に本塁打でメジャー初安打を記録した。本拠地デビューとなった5月16日のレッズ戦でもホームランを放った。5月半ばに昇格したにもかかわらず、前半戦だけで13本の本塁打を打っている。

メジャー昇格から2週間ほどが経過した5月下旬にハップに話を聞いた。

野球を始めたのは何歳ごろかとたずねてみた。すると「野球をやっていない時期というのを覚えていないんだ。思い出せる限りでは、ずっと野球をやっている」と言う。

これまで十数人の選手に野球をはじめた年齢やきっかけを聞いてきたが、はっきりと覚えていないと答えたのは、今のところハップだけだ。

でも、何かきっかけがあったはずだ。ハップは「6歳年上の兄がいるんだ。兄はずっと野球をやっていたから、僕も始めたのだと思う」と教えてくれた。

ハップは右投げのスイッチヒッター。野球を始めた時の記憶はあやふやだが、スイッチヒッターになったきっかけはよく覚えている。8歳の時だった。

「兄が14歳の時、スイッチヒッターになろうとしていたので、僕もやってみた。兄自身はスイッチヒッターになることを途中であきらめざるを得なかったのだけど、僕には絶対にあきらめるな、と言ったんだ」と振り返る。

この話を聞いた瞬間、巨人、ヤンキースなどで活躍した松井秀喜氏のことを思い出した。

松井秀喜氏が子どものときに左打ちになったきっかけには、兄の存在があったと言われている。児童向けの『松井秀喜 コジラパワーの秘密』(広岡勲著・講談社)にも 松井秀喜少年が、小学一年生ながら右打者としてホームランばかり打つことから、兄たちが松井に左で打つようすすめたエピソードが書かれている。

ハップは兄クリスさんの言いつけを守って、両打ちになれるよう練習を続けた。完全にスイッチヒッターになったのは高校入学以降だそうだ。

弟にとって、兄は親とは違う存在。同じ「子ども」という立場でありながら、兄は自分の数年先を生きている。親からのアドバイスではなく、憧れでライバルでもある兄の何気ない一言。弟たちはそれを受け止めて自分の人生を創っていくのかもしれない。

ハップはメジャーデビューから前半戦終了まで左打者としては11本塁打、打率2割4分8厘、出塁率3割2分5厘。右打者としては2本塁打、打率2割8分6厘、出塁率3割1分8厘。

メジャー昇格をしてから球宴までに51試合に出場し、二塁のほか、左翼、中堅、右翼の守備位置も経験している。複数の守備位置にも、ハップは「楽しんでいる」と言う。

カブスのマドン監督は、複数のポジションをこなせるゾブリストらを重用してきた。ハップもゾブリストと同様にスイッチヒッターで、なおかつ内外野をこなせる。

昨年、108年ぶりにワールドシリーズを制したカブスはは今ひとつ波に乗り切れていない。しかし、ハップは今までのところマドン監督の期待に応えていると言ってよいだろう。

クラブハウスの一番端のロッカーを割り当てられた新人。口数少なく、あまり笑顔も見せないが、グラウンドではその存在感を発揮しつつある。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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