夕方の運動部活動の時間だけでは十分な練習はできない。そのように考えている指導者や選手は少なくないだろう。

そのため、学校始業前の時間を利用して早朝に練習する。照明設備を持つ学校では、日没後も練習することが珍しくない。週末には日頃の練習不足を取り戻すため、朝から夜まで練習や練習試合を入れる。

しかし、パフォーマンス向上のために不足しているのは練習なのだろうか。不足しているのは、もしかして、休養や回復期間ということはないだろうか。

数々の優れた睡眠研究で知られている米スタンフォード大学はアスリートと睡眠についての研究結果も発表している。

2008年には同大学水泳部の5選手を対象にした実験結果を発表している。最初の2週間は通常通りの睡眠をとってもらい、次の6-7週間は10時間の睡眠をとってもらった。

そうすると15メートルで0.51秒タイムが縮まり、スタート時にブロックを蹴る反応が0.15秒短縮され、ターン時にかかる時間が0.1秒短縮されたという。また、キックの回数も5回増えたそうだ。

スタンフォード大は2011年にもバスケットボール選手を対象に、睡眠がパフォーマンスに与える影響についての研究結果を発表している。

11人のバスケットボール選手に最初の2-4週間はいつも通り睡眠をとってもらい、次の5-7週間は10時間眠ってもらった。実験期間中はコーヒーやアルコールの摂取を避け、10時間の睡眠が取れなかったときには、日中に昼寝をしてもらった。

そうすると282フィート(バスケットボールコートを1・5往復)のスプリントのタイムが16.2秒から15.5秒に短縮され、フリースローの成功率が9%上昇し、スリーポイントシュートの成功率も9.2%増だったという。睡眠を十分とったあとは疲労レベルが低くなり、選手たちは試合や練習でのパフォーマンスが向上したと感想を述べたそうだ。

これらの研究は被験者が少ないこともあり、今後は他の競技種目、より多くの被験者で調査を続行する見通しだという。

私は、先日、ミシガン州立大で開催されたコーチ講習会に参加して、この研究結果を知った。米アメリカンフットボール協会でパフォーマンス向上と教育を担当するジョー・アイゼンマン医師が、中学や高校運動部の指導者に対し、トレーニングやコンディショニングには全体的なアプローチが必要だと解説した時に聞いたものだ。

米国の学校運動部でも学校の始業時間前に、校内のウエイトトレーニング室で早朝トレーニングするように指導者が指示しているケースがある。しかし、練習だけではパフォーマンスの向上にはつながらない。食事や睡眠、休養と回復といった他の要素も、選手である子ども自身が注意できるように指導していく必要があるという。

アイゼンマン医師は「朝早くからウエイトトレーニング室に集まるよりも、その時間を睡眠にあてるのはどうでしょうか。いつもより2時間よく眠ると、スピードが上がるというのはスタンフォード大の研究でも出ていますね」と総合的に考えることの重要性を説明した。

西海岸と東海岸の移動を繰り返しながら、レギュラーシースンだけで162試合を戦うメジャーリーグでも休養と回復が重要視されている。レッドソックスは数年前から、クラブハウス横に仮眠室を設置し、昼寝できる環境を整えた。

学業と練習で忙しい中学生や高校生が10時間も睡眠をとるのは難しいことだろう。

しかし、朝練やナイター練習をする代わりに、夜9時、10時以降はスマートホンなどのデジタル端末の使用をやめて、早く寝るというチャレンジを運動部単位で行ってみるのはどうだろうか。それは朝練に参加することよりもむしろ難易度の高い課題かもしれないが、やってみる価値はあると私は思う。