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メジャーリーグのスターに直撃取材。こども時代の話を聞かせてください(レッドソックス編)

谷口輝世子スポーツライター

メジャーリーグには米国だけでなく、ドミニカ共和国、ベネズエラ、日本などから世界のトップ選手が集まってくる。

生まれ育った国や地域によって、子ども時代にどのように野球をしてきたかという背景も違う。また、同じ国で育っても、年代によって少しずつ変化してきている。

メジャーリーガーは大変に運動能力に恵まれた人たちであることは間違いないし、ほとんどの選手が幼少期から野球に親しんできていることも共通している。しかし、英語以外の言葉もかわしながら同じチームの一員として野球をする選手の姿を見ていると「このように育成しなければならない」という決まった形はないとも感じる。

日本では学校運動部の長時間練習などが問題視されているが、幼少期からひとつの種目を連日、長時間練習する以外の方法でも育ってきた選手たちがいることをお伝えしたい。

フロリダ州フォートマイヤーズでキャンプ中のレッドソックスの選手たちを直撃し、スター選手たちに子ども時代の話を聞かせてもらった。

いつごろ野球をはじめたか、活動量はどのくらいだったか

デビッド・オルティス(1975年生まれ 39才 ドミニカ共和国出身)

9歳のときにリトルリーグに入って野球を始めた。活動は週に2回だったと思う。土曜日は試合をした。チームに入ったのは9歳だったけれども、それ以前にストリートでたくさん野球をしてきた。たくさんやったよ、ストリートで。スカウトが見に来て16歳でプロ契約をした。それまではずっとリトルリーグだけでやっていた。

ダスティン・ペドロイア(1983年生まれ 31歳 米国出身)

子どものときはリトルリーグでやっていた。高校のジュニア(高2)までは、野球もフットボールもバスケットボールもやっていたよ。だから、1年中、野球をやっていたわけではない。ただ、高校のときに、学校のシーズン(春)が終わった後、夏にネバダにいって60試合をした年があったな。

パブロ・サンドバル(1986年生まれ 28歳  ベネズエラ出身)

4歳のときから野球を始めた。ティーボール(ティーの上にボールを乗せて打つ)から始めたと思う。ベネズエラにはたくさんの野球チームがある。でも、学校にチームはない。ぼくは1年中、野球をしていたと思う。活動は週に2回で、毎週末に試合をしていた。他にはサッカーもしていたけど、これはチームには入っていなくて、友達とやっていた。16歳のときにプロ契約をした。

クレイグ・ブレズロウ(1980年生まれ 34歳 米国出身)

僕たちの3年上の人たちがリトルリーグワールドシリーズに優勝したこともあり、とても野球の盛んな町で育った。子どものころは、リトルリーグで春夏は野球をし、秋はサッカー、冬はバスケットボールをしていた。僕たちが子どものころは、今のようにトラベルチーム(競技力が高い子どもを集め、遠征試合をするチーム)はなくて、町のリトルリーグのなかだけで対戦していた。

高校のときはシーズン中は活動は毎日で、試合は週に3回。そのころから投球のイニングなんかは制限があったと思う。高校のシーズンが終わると夏の間は違うリーグで試合をし、秋になるとまたサッカーをやっていた。

ジャッキー・ブラッドリーJr(1990年生まれ 24歳 米国出身)

確か4歳か5歳から野球を始めた。公的な地域の野球チームでプレーしていたこともあるし、トラベルチーム(競技力が高い子どもを集め、遠征試合をするチーム)でもプレーした。1シーズンに両方を掛け持ちしたことはないよ。どちらかだけでやっていた。8年生(中2)まではフットボールとバスケットボールもやっていたけど、高校に入ってからは野球だけに絞ったんだ。

米国やドミニカ共和国の最近の傾向

米国では以前はシーズンごとにいくつかのスポーツをすることが多かったが、最近では早い段階からスポーツ種目を絞って通年プレーする傾向が強まっている。24歳のブラッドリーJrが高校入学後に野球に絞ったことも、この傾向と重なる。ただし、幼少期から同じスポーツだけをすることによって、身体の同じ部分を使い過ぎてケガをしたり、燃え尽きる「バーンアウト」などの問題も指摘されている。

オルティスやサンドバルのように米国、カナダ、プエルトリコ以外の学校に在籍している選手は新人のドラフト対象外のため、満16歳に達していればプロ契約を結ぶことができる。ドミニカ共和国では球団ではなく、民間のプライベートアカデミーで選手を育成するケースが増えている。アカデミーでは民間の指導者が優秀な選手たちに無料で指導するが、選手がメジャーリーグと契約したときに、契約金の一定の割合を受け取る仕組みになっている。

スポーツライター

デイリースポーツ紙で日本のプロ野球を担当。98年から米国に拠点を移しメジャーリーグを担当。2001年からフリーランスのスポーツライターに。現地に住んでいるからこそ見えてくる米国のプロスポーツ、学生スポーツ、子どものスポーツ事情をお伝えします。著書『なぜ、子どものスポーツを見ていると力が入るのかーー米国発スポーツペアレンティングのすすめ 』(生活書院)『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)分担執筆『21世紀スポーツ大事典』(大修館書店)分担執筆『運動部活動の理論と実践』(大修館書店) 連絡先kiyokotaniguchiアットマークhotmail.com

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