【映像レポート】避難指示解除を迎えた福島について聞く

避難指示解除を迎えた、浪江町。請戸地区の様子(2017年3月撮影)

国道6号線を外れ市街地に入った途端、町の様子が変わった。

雨戸の閉まった民家や、シャッターの閉まった商店が目につき、人の気配がほとんどしない。

動きのあるモノは、点滅する信号とたまにすれ違う自動車だけだった。

シャッターの閉まった商店が目につく(南相馬市小高区)
シャッターの閉まった商店が目につく(南相馬市小高区)

2017年3月上旬、8ヶ月ほど前に避難指示が解除された、南相馬市小高区の中心部を、レンタカーで走った。

避難指示解除後の地域が、コミュニティー再生に向かう様子を知りたいとやって来たが、閑散とした町の雰囲気を目の当たりにした。

原発事故からの復興の1つの成果として「避難指示の解除」が上げられる一方、現実の状況は厳しいことを実感した。2017年3月現在、南相馬市小高区の帰還率は、2011年3月の震災前に比較し1割台にとどまっている。

10km圏内の一部地域も避難解除へ

2017年3月31日と4月1日、東日本大震災に伴う原発事故が原因となった福島県内の避難指示が、帰還困難区域を除き4町村で解除される。解除対象は約3万2000人。今回解除される富岡町や浪江町では、福島第一原発から10km圏内に位置するエリアも含まれている。

避難指示解除により、多くの地域が帰還の対象となったが、帰還の対象者や関係者に話を聞いて見えてきたのは、住人のすべてが必ずしも帰還を検討しているわけではない現実だ。

彼らは、震災から6年を経て避難先で新たな生活基盤を築いている。わずかな荷物で避難してきた当時とは、状況が変わっている。さらに避難先での新たな仕事や就学、原発事故による放射能の不安、放置された家屋の傷みや帰還先の生活インフラの問題など、帰還の妨げになる課題は複数ある。

当事者4人の声

避難指示解除を受けても、すぐに町が元に戻るわけではない。地域の再生を模索する住民たちはどのような課題を感じているのか。昨年7月に避難指示が解除された南相馬市の住民や、今回新たに帰還対象となる地域に仕事などでかかわりのある4人を訪ねお話を伺った。

インタビュー動画(4分25秒)

建設会社を営む小林竜二さん 20km圏内の除染作業にも携わっていた
建設会社を営む小林竜二さん 20km圏内の除染作業にも携わっていた

愛知県出身の小林竜二さんは、地元で建設会社を経営していた。東日本大震災を機に、宮城や福島での復興事業に関わることになり、拠点を仙台に移したという。「長期にわたって、この地域に関わる事を覚悟してきた」と話す小林さんは、自身の住民票も愛知から仙台に移したという。除染作業を通じて、20km圏内にも長期にわたって足を運んできた小林さんに、避難解除地域の現状をお聞きした。

「おだかぷらっとほーむ」を運営する廣畑裕子さん
「おだかぷらっとほーむ」を運営する廣畑裕子さん

南相馬市小高区蛯沢地区出身の廣畑裕子さんは、震災による津波で暮らしていた地区を流され現在も避難先で暮らしている。避難解除後の小高区の現状を見て、「まずは地域に明かりを灯すことが必要」と考え、地域再生の起点となる民間スペース「おだかぷらっとほーむ」の運営をはじめた。

私はこの時、不用意な質問で失態を犯してしまう。「小高に帰って来て感じた事は?」と言う問いに、廣畑さんは言葉を詰まらせ大きく深呼吸する。「私の住んでいた地区は、津波に流されたままで、小高に関わっているが未だ家には帰還できていないんです」と答え、しばらく目を閉じた。

避難解除後の町の様子について尋ねると「どんどん状況が変わっているから、これから話すことは今日現在の意見だよ」といい、小高の課題と今後の可能性を教えてくれた。

南相馬市で屋内市民プールの運営に携わる草野良太さん
南相馬市で屋内市民プールの運営に携わる草野良太さん

次に訪れた、NPO法人代表の草野良太さんは、南相馬市で民営の屋内プール運営を行っている。震災以前は家族5人で南相馬市に暮らしていたが、現在は家族4人が岩手県に避難しており、単身生活を余儀なくされている。周囲の人を通じて感じた、解除地域での生活の課題や原発事故による放射能の影響について、自身の本音や周囲の温度感についてお話しして貰った。

農家民宿「いちばん星」を運営する星巌(ほしいわお)さん
農家民宿「いちばん星」を運営する星巌(ほしいわお)さん

最後に訪れた星巌さんは、南相馬市内の自宅の敷地で、農家民宿を運営している。震災直後は、当時勤めていた南相馬市の職員として避難所の運営に携わり、自宅を失った人々を支え続けた。退職後も農家民宿の運営という立場で、全国からやってくるボランティアのサポートを行い、復興を支える人々と地域の繋がりをつくってきた。県外から福島にやってくる人との交流が多い星さんから、避難指示解除後の地域が抱える「地域再生」について、可能性と希望をお聞きした。

4人が語った具体的なコメントは、インタビュー動画(4分25秒)をぜひご覧頂きたい。

目を背けては行けない理由

避難指示の解除と地域再生の問題は、論点が複数有り、簡単に解決策を論じられない難しさがある。こうした事情からか、震災に関するテーマの中でも、当事者以外ではなかなか話題に上りにくいと感じる。

しかし、対象者でなくとも、目を背けては行けないテーマであると感じる。人口分布がいびつに変化し、高齢化が極端に進んだ地域の、学校や医療の問題、生活インフラやコミュニティーの再生は、日本に暮らす全ての人たちに関わる課題であることには間違いない。

現地を離れた今も、廣畑さんの言葉が耳に残っている。「日本の先行モデルが、ここにある」