東京電力は福島第一原発のトリチウム水貯留タンクが2022年夏頃に満杯になると説明していますが、東電が計算に入れていないタンクの区画が約2年分あることがわかりました。この場所を使えば、満杯になるのは2024年秋頃まで延びます。東電は敷地の利用方針を検討中ですが、まとまるのは政府が処分方法を決めた後になる可能性もあります。

不正確な情報で汚染水の処分方法が決まる可能性

東電は2020年12月11日、計画していた137万トン分のタンクの建造を完了したと発表しました。

一方で河北新報電子版(2020年12月18日付)によれば、福島第一原発の敷地には利用予定のないタンク用地が残っていて、約5万6700トンのタンクを建造できます。この敷地を利用すれば東電が説明しているよりも1年程度長く、トリチウム水を貯留できることになります。

この記事を参考にしながらタンクの敷地を改めて精査したところ、他にも東電が利用計画を決めていないタンク用地があることがわかりました。この分を合わせると、タンクが満杯になるのは東電が公表している2022年夏ではなく、2024年秋頃になりそうです。

福島第一原発で増え続けるトリチウム水の処分方針について政府は、海洋放出を含めた方法を福島県の自治体や漁業、商業などの関係者と協議しています。前提となっているのは2022年夏にタンクが満杯になるという東電の説明です。

実際に放出するには施設の整備や検査などで2年ほどかかると見られていることから、加藤勝信官房長官が12月19日に福島県で、「いつまでも方針を決めず、先送りすることはできない」(2020年12月20日付日経新聞電子版)と述べるなど、時間がないという空気感を醸し出しています。

一方で東電は現在、利用計画が未定の敷地を含めたタンク建造計画の見直しなど、今後の敷地利用計画を検討中で、2021年度版の「廃炉中長期プラン」の中で結果をまとめると見られています。ただし廃炉中長期プランの公表について東電は、経産省による処分方針決定の後になる可能性を否定していません。

現在のままだと、2022年夏にもタンクが満杯になるという不正確な情報をもとに処分方法が決まってしまう恐れがあります。梶山弘志経済産業相は12月8日の閣議後記者会見で「少しでも多くの理解を得るための活動もしている」と述べていますが、ここで説明している内容は事実を正確に反映したものなのか疑問がわいてしまいます。

2024年秋まで貯留できるタンクを建てる敷地がある

トリチウム水の海洋放出については、全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長らが2020年10月15日に、放出には絶対反対という意見書を経産相に手交しています。こうした状況下で、もし経産省がタンクの敷地に余力があることを知りつつ処分方法の決定を急ぐとなると、関係者はもちろん、世論の批判を呼び起こしそうです。

福島第一原発では、2011年3月11日の事故後、急増した汚染水を貯蔵するために、短い時間で建造できる組み立て式のフランジタンクを大量に設置しました。しかしフランジタンクは漏えい事故が多発。2013年夏には300トンの汚染水が漏れる事故もありました。

フランジタンクの事故が多発した後、東電は漏えいリスクの少ない溶接型タンクに立て替えを進めました。現在までに建造された137万トンのタンクはほとんど、フランジタンクの跡地に建てられたものです。

ところでタンクの建造計画は、中長期ロードマップや、福島第一原発の作業計画を法的に位置付ける実施計画で確認できます。

まず2020年11月26日の中長期ロードマップの資料にある「プラントの状況」を見ると、「タンク解体・建設中エリア」として「H9」「G5」「C」「E」の4つの区画があることがわかります。このうちEエリアでは、11月19日時点でタンクの解体が終わっていません。

続いて、実施計画(2.5 汚染水処理設備等)の最新版を見てみると、この4区画については今後の計画が記載されていません。実施計画にはタンク用地それぞれの建設予定数が記載されていますが、4つの区画が抜けているのです(2020年10月12日時点)。

東電に確認すると、4つの区画は跡地の利用計画が決まっていないことと、4区画は137万トンに含めていないという説明がありました。このことは定例の記者会見では説明がありません。

そういえば東電は、2019年8月9日に、トリチウム水の処分方針を議論していた経産省の「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」で敷地利用計画について説明した時も、137万トンの試算にこれら4区画が含まれていないことには触れていません。大事な情報だと思うのですが、なぜなのでしょう。

ところで中長期ロードマップの「プラントの状況」を遡っていくと、2017年12月21日の資料で、この4区画に合計91基のタンクが設置されていたことがわかります。内訳は、Cエリア=13基、Eエリア=49基、G5エリア=17基、H9エリア=12基です。

当時のフランジタンクは1基あたり1000トンですが、溶接タンクになればそれよりも2〜3割多く貯蔵できるので、仮に1基あたり1250トンとすると、全部で11万3750トンになります。

東電は2022年夏で満杯になると試算した際、1日あたりの汚染水の増加量を150トンで計算していました。仮に、跡地にそのままタンクを建てたとして、増加量をそのまま当てはめると、約758日分の貯蔵量になります。2年分以上の貯蔵量です。汚染水の増加量が減れば、貯蔵可能な期間はさらに延びます。

もちろん、もともとタンクが建っていたからといって、東電がタンクを建てるとは限りません。

けれども、漁業関係者を含めて数多くの関係者が放出に反対し、また経産省のトリチウム小委員会の委員からも貯蔵継続の声が出る中で、少なくとも短期的には2024年秋まで貯蔵可能な敷地があることを説明しないというのは、情報公開の点で大きな疑問を感じます。

さらに言えば、タンクの敷地が一杯になっていると説明しつつ、タンクの跡地に他のものを建てるという選択肢には、合理性は感じられません。

加えて、満杯になる時期が2024年秋だとすると、2021年から数グラムずつ取り出すという燃料デブリの取り出し作業の現実性も判断できるようになります。その時に改めて、ほんとうに燃料デブリ関連の施設がどこまで必要なのかを考えれば良いのではないでしょうか。

その過程を飛ばしてやみくもに燃料デブリ関連施設を建設し、いかにも廃炉が進んでいるように装うのは欺瞞と言うほかありません。

いずれにしても、フランジタンクの跡地を使えば2024年秋までのタンク用意は確保できるようです。まず東電はこのことを公に説明して、政府がトリチウム水の処分方法を決定する前に、敷地の利用計画を公表すべきではないでしょうか。この順番が逆になれば、東電も政府も大きく信頼を損なうのは間違いありません。

もちろん、政府や東電が、信頼を失っても得るものが大きいと考えるのなら、話は別ですが……。

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