ボクシング世界バンタム級2団体統一王者の井上尚弥(28=大橋)が、26日にWOWOWの番組収録後に取材に応じ、2021年の振り返りと、今後に向けての展望を語った。

内容的にも満足

井上はインタビューで「今年は2試合できたことがよかった。内容的にも満足だった」と語っている。

6月にIBF1位のマイケル・ダスマリナス(フィリピン)を3RTKOで下し、12月にはIBF5位のアラン・ディパエン(タイ)を8回TKOで下している。

現在IBFとWBAの2団体のベルトを持つ井上だが、目標とする4団体統一を成し遂げるためには、倒さなければならない2人の王者がいる。

一人は、WBC王者のノニト・ドネア(フィリピン)だ。

12月12日に行われたWBC王座統一戦で、暫定王者のレイマート・ガバリョ(フィリピン)を相手にKO勝利を収め、団体内の統一に成功した。試合後にドネアは井上尚弥との再戦に対しても望む姿勢を見せていた。

もう一人はWBO王者ジョンリル・カシメロ(フィリピン)だ。

12月11日におこなれる予定だったWBOバンタム級タイトルマッチで、挑戦者ポール・バトラー(イギリス)との試合が予定されていた。

しかし、カシメロが体調不良で前日計量をキャンセルしたことにより、中止となった。

計量をボイコットしたと騒ぎになったカシメロだったが、期限内に提出された診断書の医学的根拠が認められ、その後、王座保持が発表された。

井上はカシメロについて「真相はわからないが、前例があるとこれからも増えていくかもしれない。カシメロとも決まればやるが、今は話すことはない」と厳しい意見を述べた。

当面はWBC王者のドネアとの対戦を目指すことになりそうだ。

階級を上げる弊害

バンタム級でのビッグマッチが決まらない場合、階級を上げることも考えられる。

しかし、井上は「今の適正階級はバンタム級。周りの風潮で「とりあえず階級上げろ」はどうかなと思う。ボクシングは階級制のスポーツで適正階級で戦うのが一番」と話した。

バンタム級でも10キロ近くの減量をしてリングに立っている井上だが、階級アップには慎重だ。

ボクシングの階級はミニマム級から上限なしのヘビー級まで、17階級に分かれている。

一つの階級の差は軽量級では1.5キロ程度だが、対戦相手のパワー、スピード、耐久力など全てが変わってくる。

その階級で無敵だった選手も、階級を上げただけで勝てなくなるケースは多い。

無敗を誇っていた元世界王者のルイス・ネリも、バンタム級からスーパーバンタム級に上げてからは、自慢のパワーが通用しなくなり勝てなくなった。

複数階級を制覇しているマニー・パッキャオや、フロイド・メイウェザーでさえ、階級を上げ続けたことで、あるところを境にKO率は極端に減った。

筆者も経験があるが、上の階級の相手と戦うとそれまでのスタイルが通じなくなる。パンチも届かなくなり、体がぶつかった時に相手に押し返される。

それに対抗するためには、肉体改造が必要だ。

「ファンは見たいだろうが、体を作ってから上げないといけない」と井上も話すように、今はバンタム級がベストだという事だろう。

来年末には階級変更か

仮に井上が階級を上げ続けた場合、どこまで戦えるのだろうか。

フェザー級ぐらいまで上げても通用するだろうが、今のように圧倒的なパフォーマンスで、相手を仕留めるのは難しくなる。

井上はこれまでライトフライ級から、スーパーフライ級、バンタム級と3階級を制覇している。

体の成長に合わせて階級を上げ、ここまで結果を残してきたのは偉業だ。

すでにバンタム級でも無敵を誇っているが、「敵がいないから階級を上げろって簡単に言うけど、上げるのは簡単なことではない。パフォーマンスを潰されるようならあげることはしない」と話し、

「上手くまとまれば春夏で4団体統一できる。その後、12月頃にスーパーバンタム級」と理想を語った。

将来的にはスーパーバンタム級に上げる予定のようだが、早くても来年末以降になりそうだ。

20代後半から30代になると、体の成長も緩やかになってくるため、減量も落ち着いてくるだろう。

そう考えると、あと一つか二つ階級を上げるのが上限かもしれない。

前人未到の記録を出し続ける井上がどこまで行けるか、注目したい。