カネロがプラントを下し4団体統一 互角の展開からKOに結びつけたパンチとは
6日(日本時間7日)、世界スーパー・ミドル級4団体王座統一戦が行われ、WBAスーパー、WBC、WBO世界スーパーミドル級統一王者サウル・アルバレス(31=メキシコ)が、IBF同級王者カレブ・プラント(29=アメリカ)と戦った。
リング外でも火花を散らす両者。試合に向け行われた9月の記者会見では乱闘になりプラントが右目下をカット。前日軽量でのフェイスオフも体重計越しに行われるなど、緊迫に包まれた。
試合の展開
注目の一戦に大勢の観客が押し寄せた。
両者の入場は対照的で、プラントがブーイングを浴びながら入場したのに対し、カネロは大歓声のなか入場。
カネロの4団体統一への期待で、会場のボルテージを高めているようだった。
試合が始まると185cm(リーチ188cm)と体格でカネロを上回るプラントがスピーディーなジャブをつく。
カネロも前にプレッシャーを掛けて詰めようとするが、なかなか中に入れない。序盤はプラントが巧みなジャブをつきペースを握った。
カネロは顔が当たらないとボディに活路を見出し、ボディ狙いでパンチを集めていく。
遠距離ではプラント、近距離ではカネロとお互い得意な距離でペース争いが続く。
中盤に入るとカネロがさらにプレッシャーを掛けてパンチを集めていく。ボディワークも交えながら接近戦でボディを叩きプラントを消耗させていく。
それが効いてきたのか、プラントは徐々に手数が減りコーナーに詰められる場面が増えていった。
後半には、カネロが上下左右のコンビネーションで見せ場を作っていった。
試合が決まったのは第11ラウンド。
カネロの左フックがプラントに直撃。プラントの頭が下がったところにカネロの右アッパーが炸裂し、この試合初めてとなるダウンを奪う。
立ち上がったプラントだったが、かなり効いている様子でカネロがロープに詰めてパンチをまとめた。
追撃のカネロの右がヒットしてプラントがダウンしたところで、レフリーが試合をストップ。
カネロが見事なKO劇でメキシカンとして初となる4団体統一に成功した。
勝敗のポイント
カネロが貫禄を見せつけた試合となったが、決して楽ではなかった。
プラントはL字ガードでパンチをいなし、カネロも序盤は苦戦した。
展開を変えたのは、ボディブローだ。自分より背の高い選手に顔面のパンチは当てづらい。そのためボディを打ち、意識を下に持って来させて顔面にパンチを当てる。
私も経験があるが、ボディを打たれると下に注意がいくため、顔面にパンチをもらいやすくなる。更にボディをもらうと呼吸が苦しくなりスタミナも落ちてくる。
前半は元気だったプラントが、6ラウンド後のインターバルでは回復し切らず、肩で息をしていたのもカネロのボディが効いていた証拠だろう。その後も徐々にスタミナが削られ手数も少なくなっていた。
ボディ打ちで相手をじわじわと追い詰める粘り強さと、カネロの勝利への執念が勝敗を分けた。
カネロは試合後のインタビューで「難しい戦いでしたが、トレーナーのアドバイス通りでこういう結果になった」と話したように陣営との作戦が見事にハマった。
試合前にはプラントと乱闘騒ぎもあったが、試合後には「プラントは素晴らしいファイターで恥じることはない」と賛辞を送った。
今後のカネロ
カネロはメキシカンとしては初となる4つ目のベルトを見事に手にした。
しかし、ここまでの道のりは決して楽な道のりではなかった。
2018年に初めてこの階級でのタイトルを獲得し、元王者のカラム・スミス、ビリー・ジョー・ソーンダースを下し、3年の月日を経て今回の試合まで辿り着いた。
スーパーミドル級では初となる4団体統一で、全階級では史上7人目の快挙だ。
今後に向けては「どうするか分かりません。今はゆっくり休みます」と話すに留めた。
正直なところこの階級でめぼしい相手はもう見当たらない。階級を変えて戦うのか、それとも防衛記録を重ねるかはカネロのモチベーション次第だろう。
カネロは、世界4階級を制覇し、4団体統一にも成功、全階級で最強と呼ばれるパウンド・フォー・パウンドランキングでもトップに君臨する。
また、今回の試合で4000万ドル(約45億3600万円)のファイトマネーを得たとの話もある。
金、地位、名誉、全てを手に入れていた男が今後どのような道を進んでいくのだろうか。