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ドネアがカシメロとの統一戦をキャンセル 再浮上する井上尚弥との再戦の行方は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

ボクシングWBC世界バンタム級王者ノニト・ドネア(38=フィリピン)が、8月14日(日本時間15日)に米カリフォルニア州カーソンで予定されていたWBO世界同級王者ジョンリル・カシメロ(31=フィリピン)との2団体王座統一戦をキャンセルしたと、自身の公式SNSなどで報告した。

急遽キャンセルに

先日行われたWBAスーパー&IBF同級統一王者・井上尚弥の防衛戦の時に、ドネアは次戦でカシメロと対戦すると発表し、大きな話題となった。

元々カシメロはWBAレギュラー王者のリゴンドーと対戦する予定だったが、ドネアがWBCのタイトルを獲得したことでフィリピン人王者対決に注目が集まった。

お互いにビッグビジネスになると両陣営が合意して交渉が進行した。

しかし、カシメロがVADA(アンチ・ドーピング機構)の薬物検査を拒否することを示唆。

一部報道でカシメロをサポートするトレーナーが過去にドーピングに関与したと噂される人物だったとも言われている。

ドーピングの疑いが持たれているカシメロに対して、ドネアは試合中止の決断を選択したようだ。

また、ドネアのマネージャーでもある妻のレイチェル夫人に対して、カシメロから中傷があったことにドネアは不快感を示した。

優位に立ちたい気持ち

カシメロが検査を拒否しているのであれば、ドネアは非常に勇気のある行動をとった。

今回の騒動に対して、井上尚弥は下記のようにツイートしている。

4団体統一を目指す井上だが、ドーピング疑惑がある選手とはやりたくないだろう。

ボクシングのリングは真剣勝負だ。減量やハードなトレーニングを乗り越えお互いにベストを尽くして戦うからこそ価値がある。

極限状態まで追い込みリングで戦うため何かに頼りたくなる気持ちもあるかもしれない。

しかし、薬物やドーピングなどで強くなることになんの意味があるのだろうか。お互いにクリーンな状態で公平に戦うからこそファンを魅了し感動を得られる。

自らがクリーンであるならば、それを証明するために検査を受ける事が必要だろう。

ことあるごとに井上を挑発してきていたカシメロだったが、今回の件で大きく信頼を失った。

バンタム級の行方

井上尚弥の4団体統一の行方も非常に気になるところだが、現在バンタム級の王者は下記となる。

WBAスーパー &IBF 井上尚弥

WBAレギュラー ギレルモ・リゴンドー

WBC ノニト・ドネア

WBC暫定 レイマート・ガバリョ

WBO ジョンリル・カシメロ

井上の現在の最有力の候補としては、WBC王者のドネアとの再戦だろう。

両者は2019年11月にWBSSトーナメントで戦った。私も現地で観戦したが、素晴らしい白熱したファイトだった。

井上が勝利したが、過去の試合を含めてもっとも井上を苦しめたのはドネアだろう。

前回の試合でドネアは、WBC王者のウーバーリを相手に圧倒的な強さで4回TKOで勝利した。

ドネアは前回の井上の試合を見て「彼を見て自分ももっと強くならねばと思った。今より向上したいし、ぜひやりたい。次はもちろん勝ちます」と話している。

38歳ではあるが、キャリアのピークを取り戻している。井上というライバルの存在がドネアを強くしているのは間違いない。

両者ともに前回の試合から大きく成長し、全く別の展開が予想されるためぜひ見たいカードだ。

動き出しているバンタム級のドラマから目が離せなくなりそうだ。

写真:ロイター/アフロ

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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