ロマチェンコが中谷正義にKO勝利 ライト級統一王者ロペスとの再戦へ
アメリカのラスベガスで26日(日本時間27日)、ボクシング元世界3階級王者のワシル・ロマチェンコ(33=ウクライナ)とWBO同級5位の中谷正義(32=帝拳)がライト級12回戦で戦った。
試合の展開
ゴングがなり試合が始まると、両者の体格差が目立った。
ライト級では小柄なロマチェンコは身長170cm(リーチ166cm)対して、中谷は身長182cm(リーチ182cm)と高く、10cm以上の差がある。
中谷は身長差を活かすためにジャブをつきながら距離を取る。対するロマチェンコはサイドに動きながら隙をうかがう。
途中アクシデントがあり、両者の頭がバッティングし、ロマチェンコは額をカットする。
遠い距離で戦おうとする中谷に対して、ロマチェンコは懐に入り込み攻撃を仕掛ける。接近戦になるとロマチェンコの左が浅くヒットする場面を作り中谷の顔が跳ね上がる。
序盤はロマチェンコがペースを握った。
中谷もジャブを当ててはいたものの、ロマチェンコの左をまともにくらってしまいポイントは奪えない。
中盤に入ると中谷もボディを打って、ロマチェンコの動きを止めにかかる。
しかし、接近してクリンチしようしたところにロマチェンコの左が入り目が腫れていった。
5ラウンドには、近距離で揉み合いになったところで、ロマチェンコのパンチを被弾し、スリップ気味のダウンをもらってしまう。
その後はロマチェンコが優勢で、中谷にとって苦しい展開が続いていく。
後半になるにつれて右目の腫れが影響してか、ロマチェンコの左をもらってしまう。
9ラウンド目には、中谷も勝負をかけて前に出るが、逆にロマチェンコにパンチをまとめられてしまう。
足元もふらついてしまい、ロマチェンコの左を何度か被弾したころで、レフリーが試合をストップ。
ロマチェンコの9回1分48秒のTKO勝利となった。
勝敗のポイント
どんな選手でも、怪我や敗戦からの再起戦は慎重になる。
試合後のインタビューでは流石のロマチェンコも安堵の表情を浮かべていた。
「勝てたことが嬉しい。彼は身長もリーチも長くあらゆる面で私より優っていた。カウンターを狙っていて、戦略がうまくいって勝利に繋がった」と話している。
勝敗のポイントは「接近戦での攻防」だろう。
遠距離では長身の中谷が有利に戦ったが、ロマチェンコは、ヒットアンドアウェイで着実に左のパンチをヒットさせていた。
ロマチェンコの左は踏み込みと同時に打つためタイミングが読みづらく、中谷も防ぎきれなかった。
また、クリンチにも高度な駆け引きがあった。
中谷はロマチェンコの動きを止めようと何度もクリンチを試みていたが、上手くかわされ、その隙をつかれダウンを奪われた場面もあった。
ロマチェンコは、昨年右肩の手術を受け、前回の敗戦から8ヶ月ぶりの試合でもあったが、高いパフォーマンスを見せた。
試合後のインタビューでは、
「ぜひ(ロペスとの)リマッチをお願いしたい。来年でもいいし、12月でも1月でもいい」と、前回の試合で敗れた4つのベルトを持つテオフィモロペスへの再戦を口にした。
会場に訪れていたロペスの父親からも再戦OKの発言が伝えられたため、ロペスとの対戦も近いだろう。
今後の展開
気になるのは今後の展開だ。
ライト級は全階級の中でもタレントが豊富で、現在以下の王者たちが君臨している。
1つの団体の中でも複数のチャンピオンが存在し、王座が乱立している状況だ。
4つのベルトを持つロペスは、8月14日にジョージ・カンボソス・ジュニアと対戦が決まっている。
ロペスに善戦した中谷に明確に勝利したことで、再戦へのストーリーも出来上がった。
「今回の試合の勝者とロペスが対決する予定もある」とプロモーターのボブアラム氏が発言しておりライト級の頂上決戦も近い。
中谷は負けてはしまったものの、前半はロマチェンコと互角に戦い、ポイントは紙一重だった。
日本人には難しいと言われる中量級で堂々と戦い日本人ボクサーの可能性を大きく広げてくれた。
中谷にとって躍進の一戦となっただろう。