WBAスーパー・IBF世界バンタム級王者井上尚弥（27=大橋）がイギリスメディアの世界最強ランキングパウンド・フォー・パウンド（PFP）で1位に選出され、日本人初の快挙を成し遂げた。

レジェンドと肩を並べた

パウンド・フォー・パウンド（PFP）とは、ボクシングの全階級の中で最も強い選手をランキング形式で表したものだ。

様々なメディアが独自に選定し、最も権威があるリング誌のランキングでも井上は2位に選出されている。

イギリスメディアのPFPとなるが、日本人ボクサーとしては異例の抜擢だろう。

過去には、元WBA・WBC統一世界ヘビー級王者のモハメド・アリ（アメリカ）や、元WBA・WBC・IBF世界ヘビー級統一王者マイク・タイソン（アメリカ）、WBA世界ウェルター級スーパー王者のマニー・パッキャオ（フィリピン）などがトップに君臨している。

歴代のレジェンドと肩を並べる存在になった井上。

背景には長らくトップに選出されていたワシル・ロマチェンコ（ウクライナ）の敗戦。

1位に選出されていたサウル・アルバレス（メキシコ）がしばらく試合から遠ざかっていることもあるだろう。井上が1位に選出されても違和感はない。

他のPFPランキングを見ても井上が2位に選出されている。今後、他の媒体のランキングにも影響する可能性はあるだろう。

井上の強さ

井上の世界的評価は高まっている。前回の試合でもランキング1位のジェイソン・モロニー（オーストラリア）を7回KOで圧倒した。

特に最初のダウンを奪った左フックのカウンター、フィニッシュを決めたカウンターの右は圧巻だった。

井上はこれまで20戦全勝（17KO）の戦績を誇る。圧倒的な強さで数々のボクサーをマットに沈めてきた。

破格のパワーに注目されがちだが、彼の強さは「パンチのタイミング」にある。

ボクシングでは強いパンチがあっても相手を倒せない。パンチが予測できれば相手は対応できるからだ。

しかし、井上のパンチはノーモーションでタイミングが読めないためパンチが来ても反応できない。

今回の試合のフィニッシュシーンでも、モロニーが先にパンチを出しているのに関わらず、井上の右のショートのカウンターが先に入っていた。

相手の動きに反応して、一瞬早いタイミングで打ち込んでいる。

反復練習を重ねて培ったパンチは一切の無駄がない。加えてパワー、スピード、テクニックと総合的に優れている選手だ。

今後の井上尚弥

ボクシングの世界王者は、WBA、WBC、WBO、IBFの主要4団体に分かれる。

その王座を同時に統一したチャンピオンは過去に5名しかいない。

バンタム級で2つのベルトを持つ井上だが、目指すのはバンタム級の王座統一だ。

この階級にはWBCにノルディーヌ・ウバーリ（フランス）、WBOにジョンリル・カシメロ（フィリピン）がいる。

ウバーリは12月にノニト・ドネア（フィリピン）と対戦予定で、カシメロは井上との対戦を熱望している。

マッチメイクが進めば、来年中にこの階級を統一することも可能だろう。

世界的にバンタム級などの軽量級は軽視されがちで、ボクシングの中心はウェルター級以上の中重量級になる。

そんな中で軽量級の井上がNO1に選出されるのは異例のことだ。

ボクシングの中心地でもあるラスベガスデビューを飾ったことにより、益々井上の注目は高まっている。

今年はコロナ禍の影響で一試合しかできなかったが、来年はぜひ統一戦に期待したい。

日本から世界的にNO1の評価を受けるボクサーが出てくるとは夢にも思わなかった。井上のこれからの活躍にますます期待が高まる。