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ロマゴン完全復活 無敗の王者ヤファイを9回KOで破り王座返り咲きへ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

29日(日本時間3月1日)アメリカテキサス州フリスコのザ・フォード・センターで、WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが行われ、

元世界4階級制覇王者ローマン・ゴンサレス(32=帝拳)が、WBAスーパーフライ級王者カリド・ヤファイ(イギリス)へ挑戦した。

ロマゴンは2017年9月から約2年半ぶりの世界挑戦となった。

ローマン・ゴンサレス

ロマゴンは4階級を制覇してきた偉大な王者だ。

戦績は47勝(39KO)2敗、軽量級でありながら80%以上のKO率を誇る。

過去には、全階級のボクサーを格付けしたパウンド・フォー・パウンドランキングで1位の称号に輝いている。

しかし、2017年3月にシーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)に判定で初黒星を喫してからは、困難なキャリアをたどる。

2017年9月に行われたシーサケットとの再戦では、4Rに右フックが直撃し、まさかのKO負け。

その後も、相次ぐ怪我で試合をキャンセル。試合に出場できずブランクが続いた。

だが、昨年の12月日本での復帰戦をKO勝利で飾り、2年半ぶりの世界タイトルへのチャンスを得た。

試合の展開

試合開始のゴングが鳴ると、ロマゴンがガードを固めながらプレッシャーを掛けていく。

対するヤファイも、ロマゴンのプレッシャーに負けじとフィジカルを活かして激しく打ち合う。一進一退の攻防が続いた。

ロマゴンは、次第にボディも織り交ぜパンチを上下に打ち分けていくと、プレッシャーにおされたヤファイは手数が減っていく。

そうなってくると、ロマゴンの本来の持ち味が活きてくる。下がるヤファイに対して、ロマゴンがパンチを集めてペースを掴んでいく。

そして、第8R終盤。ロマゴンがコーナーに追い詰めた後に右ストレートがヒット。

ヤファイからこの試合初となるダウンを奪う。

続く第9R。序盤から勝負をかけにいったロマゴンのワンツーが、ヤファイの顎を捉え、この試合2度目のダウンを奪った。

ヤファイはそのパンチが効いてしまい、起き上がろうとするがレフリーが試合をストップ。

ロマゴンが9回KO勝利で、王座を奪還した。

ロマゴンのスタイル

私は現役時代、ロマゴンとスパーリングをしたことがある。

たった4Rのスパーリングだったが、物凄く疲労したのを覚えている。

試合を見ているとパワーファイターのように見えるが、実際は技術に優れたファイターだ。

パンチの強さより、前に出ながらプレッシャーをかけ、様々な角度でパンチを打つ。

頭を振りながら入り込み、空いている急所に的確にパンチを打ち込んでくる。

相手からしたら、どこから手が出てくるか分からず、圧倒的な手数を集めてくるので防ぎきれないのだ。

ロマゴンと対戦経験を持つ八重樫東氏(37=大橋)も「強さより上手さを感じた」と話していた。

階級をスーパーフライ級に上げてからは苦戦も見られたが、今回の試合を経てこの階級での存在感を取り戻した。

今後のロマゴン

アメリカでは「スーパーフライ」という興行が組まれていたが、その中心的な存在はロマゴンだろう。

この階級には様々な選手が集まっている。

WBC ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)

WBO 井岡一翔(30=Reason大貴)

IBF ヘルウィン・アンカハス(フィリピン)

加えて、先日階級を上げた無敗の3階級王者の田中恒成(24=畑中)、そしてロマゴンに勝利したシーサケットもいる。

井上尚弥(26=大橋)がいる一つ上の階級のバンタム級も盛り上がりを見せているが、引けを取らないタレント揃いの階級だ。

ロマゴンの復活で、ますます盛り上がっていくだろう。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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