大人気ボクシング漫画 はじめの一歩 個性豊かなキャラクターの誕生秘話

全てスタッフ撮影

1989年「週刊少年マガジン」で連載が始まり、連載30周年を迎えた大人気ボクシング漫画「はじめの一歩」

いじめられっ子だった主人公の幕之内一歩が、強くなりたいという想いからボクシングを始め、ライバル達との戦いを通じて成長していく物語だ。

はじめの一歩には、主人公をはじめ個性的な登場人物が多い。どのように魅力的なキャラクターを生み出しているのか。

作者の森川ジョージ先生にキャラクターの誕生秘話やモデルとなったボクサーについて話を聞いた。

ボクシング観戦について

ーーーボクシングの試合は見られますか?

森川:WBSS決勝戦の井上尚弥VSノニト・ドネア戦は現地で観ました。

ーーー海外の試合とかも見られますか?

森川:はい。WOWOWはすごいですね。昔はテレビ局でしかやってくれませんでしたから。

ーーーそうなんですね。漫画の話に戻るのですが、キャラクターにはみんなモデルがいるのでしょうか?

森川:鷹村守はロベルト・デュラン(WBC世界ミドル級王者)をモデルにしています。

板垣学が福島学(元日本スーパーバンタム級王者)君で、一歩はレイ・マンシーニ(元WBA世界ライト級王者)という選手とマイク・タイソン(元世界ヘビー級統一王者)を混ぜたみたいな感じですね。

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キャラクターのモデル

ーーーいろいろな選手をミックスして作っているのですか?

森川:そういうキャラクターもいます。間柴了などは完全にトーマス・ハーンズ(元5階級制覇王者)です。

みんなマイク・タイソン型にしたくなりますが、タイソン型にしてしまうと一発で試合が終わってしまうので、漫画として成り立たなくなってしまいます。

ーーーなるほど。あと史上最強のフェザー級チャンピオンのリカルド・マルチネスというキャラクターはリカルド・ロペス(元統一王者)ですか?

森川:ロペスです。あの当時、僕がじかに見た世界チャンピオンで一番強かったです。

ーーー強かったですよね。

森川:はい。あんなに強い人はいないと思いました。だから、一歩は勝てなかったんです。

ーーー選手の特徴が色濃出ていますよね。ブライアン・ホークはやはりナジーム・ハメド(元統一王者)ですか?

森川:はい。

ーーー個性的なキャラクターが多い中で、先生が一番お気に入りのキャラクターは?

森川:やっぱり一歩かな。

強いって何ですか

ーーーストーリーの中に自身の幼少期のエピソードを混ぜたりしているのですか?

森川:1話目の「強いって何ですか」というセリフ。あれは当時の僕の心情だったんです。

何をやっても失敗して、漫画の描き方が分からなくなってしまって。

それで「漫画が上手いというのは何だろう」と思ったのをそのまま描いたのです。

ーーーなるほど。その他にご自身の体験なども漫画の中にありますか?

森川:大体妄想です。

ーーー妄想が入っているわけですね。

森川:描きながらどんどん出来てしまいます。

ですから、何も決めていないのです。

試合の結果も決めていません。最近やたら頑張るな、とか思いながら描いていますね。

ーーーなるほど。結末を考えて作るというよりは流れで作っているのですか?

森川:以前は結末を考えて作っていました。

ですが、東日本新人王の決勝を宮田一郎と一歩がやるのだと決めていたのですけど、宮田が負けてしまったからどうしようかと思いまして。

こんなことがあるのか、と自分で思ってしまいました。

少年誌の主人公というのは負けてはいけないと思っていましたから、一歩も伊達英二に負ける予定ではなくて。

ーーー私も、一歩が負けたのは衝撃的でした。

森川:自分でびっくりしたのを覚えています。

ーーーご自身でも驚かれたと(笑)

森川:お互いのことを描いて、練習させてみて、さあ試合だ!という感じで。

セコンドの視点で描きます。

そうすると、相手のほうが背負っているものが重くて「ああ、一歩は勝てないな」と。

ーーー実際に先生の中で対戦させているということですよね。

森川:そうです。ずっと練習もさせていて、攻略法もお互いに考えていてます。

ですが、試合が始まったら実はもっと引き出しが多かったとか、予想外なことが起きてしまいます。

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個性的な必殺技

ーーーデンプシーロールやガゼルパンチ、フリッカーなど作中には様々なパンチが出てきますが、ご自身で編み出されているのものはありますか?

森川:全て実在のパンチです。

フリッカーは、トーマス・ハーンズがいましたから。

デンプシーロールは、連載が長くなりそうだなと思ったので使わせて頂きました。

ーーー先日、ポリスボクサー杉田ダイスケ選手がデンプシーロールを使っていましたね。

森川:杉田君ですね。

この間「先生、俺やりますから。見ていてください」と話していました。

デンプシーロールをやったときにパンチが当たり、見応えがありました。

ーーーご自身が描かれたパンチを練習して、実際にプロのボクサーがやるということについては?

森川:僕もジャック・デンプシー(元世界ヘビー級王者)や藤猛(元統一王者)さんがやっているのを見て描いただけですから。

グルグル時代が回っていて、繰り返されているなという感じです。

杉田君のデンプシーロールを見て、これから試合で試す選手もいると思います。

ーーーそうですね。僕もですが、特に昭和後半のボクサーはみんな「はじめの一歩」を読んでいたと思います。

森川:木村君も読んでいてくれたのですか。

ーーー僕ももちろん読んでいました。

森川:うれしいですね、ありがとう。

ーーーみんなバイブルにしていますので。先生が一番印象に残っているシーンはありますか?

森川:一番印象に残っているのは「次に描くシーン」ですね。

あとは、負け試合も印象に残っていまして。

ーーーそうですよね。ボクサーもそうです。負けた試合は覚えていますが、勝った試合は忘れてしまうのです。

森川:田口良一(元世界統一王者)戦とかずっと覚えてますか?

ーーーはい。田口戦、小野心(元東洋王者)戦は、引退した今でも覚えています。

森川:うまくいったものは、そのまま流れでいってしまいますから。悔しさは、絶対に繰り返したくないから覚えているものですよね。

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鷹村VSカネロ

ーーー例えば、漫画の中のキャラクターと今実際に活躍しているボクサーの対決で見てみたい試合はありますか。

森川:鷹村守VSカネロ・アルバレス(四階級制覇王者)ですね。

ーーーなるほど。鷹村はカネロの要素も入っているのですか?

森川:鷹村は何でもできるボクサーなので、みんなの要素が入っています。

ーーー鷹村VS村田諒太とかはどうですか。

森川:いいかもしれません。両者オリンピアンですからね。

ーーー村田も鷹村キャラなので(笑)

森川:みたいですね。村田選手はすごいですよね。オリンピアンでプロでも世界チャンピオン。

ーーー連載当時は、日本からそんな選手が出ると思いましたか?

森川:思いませんでした。思わなかったから鷹村をわざわざジュニアミドル級にしたのです。

ーーーミドル級ではなくてですか?

森川:当時の僕は、日本人はミドル級で世界を取れないだろうと思っていました。

なので、竹原慎二(元WBA世界ミドル級王者)が取ったのが衝撃的で。

作中で鷹村が2階級制覇をしましたが、竹原が取らなかったら取らせなかったです。

それほど、日本人が足を踏み入れられない階級という感覚だったのです。時代はどんどん変わっていますね。

ーーーそうですね。最近の日本人選手の活躍には目を見張るものがあります。

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2月27日後楽園ホールで「はじめの一歩30周年記念フェザー級トーナメント準決勝」が行われる。

はじめの一歩ファンを対象とした特別応援シートが販売され、後楽園ホール内施設を見学できるツアーもあるようだ。

そして、普段と異なるはじめの一歩の世界観で統一された会場。はじめの1歩ファンにはたまらない1日となるだろう。

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