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無敗の3階級王者 田中恒成は豪快KO勝利も控えめ「もうそろそろ一皮むけたい」

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て FUKUDA NAOKI

大晦日に大田区総合体育館でWBO世界フライ級タイトルマッチが行われ、チャンピオンの田中恒成(24=畑中)が、同級10位ウラン・トロハツ(26=中国)を3回KOで下し、V3を達成した。

スピードとパワー

日本人最速で3階級王者になった田中恒成が、5年ぶりに関東のリングに立った。

試合開始のゴングが鳴ると、田中が速い出入りとジャブを駆使してペースを握る。

相手のトロハツは、日本人キラーとして日本人相手に無敗を誇る。

だが、この日は田中のスピードについてこられない。

第2ラウンドでは、田中がボディも織り交ぜ、力強いパンチで上下にパンチをまとめていく。

試合後のインタビューで語っていたが、このラウンド終了時点で「もう前に詰めて勝負をかけてもいいな」と思っていたようだ。

そして迎えた第3ラウンド。田中のアッパーのダブルが決まりトロハツがダウン。

そのパンチで立ち上がれず、田中の豪快なKO勝利となった。

相手のトロハツはダメージが大きく、しばらくその場から立ち上がれないほどだった。

田中が持ち前のスピードに加え、パンチのキレが鋭くコンディションの良さを感じさせた。

また、フライ級に階級を挙げて5戦目となるが、持ち前のスピードに加えパワーも増した。

試合後には「試合当日としてはいつもよりいい感覚」と話していたが、今回は過去最高の出来だったといえる。

第1ラウンドから調子の良さを感じさせて、田中のポテンシャルの高さが際立った試合となった。

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覚醒した田中

試合後の会見では、今回の勝因について「コンディション調整がうまくいったこと」を挙げた。

プロデビューから減量には苦労していたようで「体調良く試合を望んだことがほとんどない。パフォーマンスの邪魔をしていたのが減量」と話していた。

今回は、早めに体重を落とす事や減量方法やロードワークを増やすなどして工夫してきた。

また、田中は会見の中で「もうそろそろ一皮むけたい」と話していた。

私からしたら、若くして無敗で3階級を制覇した田中は圧倒的な強さを誇るチャンピオンだ。

しかし、本人は自身の結果に対する、周囲の評価に満足ができないのだろう。

現在同じ世界王者としてベルトを巻く、井上尚弥(26=大橋)や村田諒太(33=帝拳)、そして、同じリングに立った井岡一翔(30=Reason大貴)に比べ、田中の注目度はまだまだ低い。

実績は充分だが、知名度がまだ追いついてこない。その満たされない気持ちが、田中の戦うモチベーションになっている。

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統一戦か4階級

同じリングで、ひとつ上のスーパーフライ級の井岡一翔が初防衛に成功している。田中は井岡との対戦を熱望している。

世界ボクシング主要4団体、WBOのフランシスコ・バルカルセル会長も、田中と井岡の対戦を歓迎している。

両者共にWBOのベルトを巻いているため、今後田中が階級を上げれば、対戦は十分にあり得るだろう。

田中も井岡の試合を見たようで「階級を上げて攻撃力や体力が増している。いい試合だった」と語っていた。

この階級には他にも、元4回級王者のローマン・ゴンザレス(ニカラグア)や、ファンフランシスコ・エストラーダ(メキシコ)など強豪が名を連ねる。

ぜひ田中との対戦を観たいところだ。

今後に向けては「畑中ジム陣営でじっくり決めていきたい」と話している。

おそらく、今後はフライ級での統一戦や4階級目を目指していくことになるだろう。

田中は現在の日本人の現役世界王者の中でも、24歳ともっとも若い。今後の更なる活躍に期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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