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元ライバル林田太郎に直撃「井上尚弥選手の負ける姿が想像できません」

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

11月7日さいたまスーパーアリーナで行われるWBSSのバンタム級決勝戦で、井上尚弥(26=大橋)とノニト・ドネア(フィリピン)が対戦する。

プロで無敗を誇る井上にアマチュア時代に黒星を与えた男がいた。元アマチュアボクシング全日本王者の林田太郎(30)だ。

林田は当時高校生だった井上と、全日本選手権決勝戦で対戦した。その時は勝利したが、8ヶ月後に再度激突した。

スタッフ撮影
スタッフ撮影

井上尚弥との再戦

ーーー次に対戦したのはいつですか?

林田:9月の世界選手権の選考会で試合をしました。

ーーー前の対戦から何ヶ月後ですか?

林田:8ヶ月後くらいですかね。

ーーー試合はどうでしたか?

林田:前回の試合と同じ展開でした。唯一違うのは、スタートダッシュしてきた事です。

1R目の30秒で、スタミナを使い切ってしまうぐらいのペースで来たので対応できませんでした。

その後、井上選手が失速してきて、自分のパンチが当たり出した頃にゴングが鳴りました。点数は13対11でした。

ーーー前の試合より競りましたね。

林田:はい。でも、僕が負けたんです。

「勝ってたよ」と言ってくれた人もいましたが、クリーンヒットも出せなかったので、負けても仕方ないと思いました。

井上との最後の戦い

ーーー最後の対戦が全日本選手権ですね。どうでしたか?

林田:その時はもう1年経って一変ですね。井上選手は足を使って慎重に戦っていました。

ーーーポイント重視ということですか。

林田:はい。世界選手権で海外のボクシングを経験し、感化されたのだと思います。

ーーーなるほど。採点はどうでしたか?

林田:この時は、インターバルごとに点数が表示されていました。

ーーーポイントが公開されるのですね。

林田:はい。1R目が終わっていい調子で戻ってきました。

ーーーポイントを取っていたんですか。

林田:1Rは必ず取ろうと思っていて最初から前に出られたので、取れたと思いました。でも、実際はかなりリードされていました。

ラウンドごとに見ると、3R目だけイーブンだったんです。最後まで追いつかず、離されて負けてしまいました。

本人提供
本人提供

井上尚弥の強み

ーーー井上選手の最も優れている所はどこだと思いますか?

林田:「対応能力が高い」ことですね。

ロドリゲス戦も、2R目に左フックで倒しましたが、1秒ぐらい前に空振っています。

大きく空振った直後に、違う角度で打てば相手も対応できません。

ーーー角度を変えて打っていたんですね。

林田: 本人でないので分かりませんが、数秒前に空振りしたパンチを、次は打ち方を変えていました。

流れの中で、修正できるのは非常にレベルが高いと思います。

ーーー逆に弱点はあると思いますか?

林田:ケガが心配です。ジェイミー・マクドネル(イギリス)戦の時に感じたのですが、熱くなってしまうと、動きが雑になります。

そのため、パンチが正確に当たらずに拳を壊してしまうリスクがあります。

それ以外にも、前半を凌げば、集中力がきれたり体がぶれたりするので、後半に勝負できるチャンスはあると思います。

ーーープロは12Rと長いですからね。

林田:そうですね。

前回のロドリゲス戦

ーーー5月にイギリスで行われたWBSS準決勝は見ましたか?

井上選手が、エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)選手を相手に2RKO勝ちと衝撃的な試合でしたね。

林田:井上選手が早い段階からプレッシャーをかけて倒しに行くと思いました。

でも、ロドリゲスが1R目は前に出てきて、井上選手は足を使ってアウトボックスで戦っていました。

持久戦になるのかと思ったら、2R目で左フックが炸裂しましたね。

ーーーあれはすごかったです。そしてあの後のボディー。

林田:ですね。

ーーーあれは、林田選手が井上選手との試合で打っていたボディーではないですか。

林田:いや、比べものにならないです(笑)

ドネアとの対戦について

ーーーいよいよ11月7日WBSS決勝戦、井上選手がノニト・ドネア(フィリピン)と対戦しますね。

ドネアの試合は見たことはありますか?

林田:何回かあります。でも、井上選手の負ける姿が想像できません。

ーーーそうですね。

林田:大橋会長とフェイスブック友達なのですが、何回もドネアが大橋ジムに来て練習をしたりしていると言っていました。

ーーースパーリングしているんですか。

林田:スパーリングは分かりませんが、一緒に練習している写真もあったと思います。

ドネアは、手の内をあのモンスターに知られてしまっているので、早めに決着をつけに行くのではないかと。

ーーーでは、前半で決まる可能性が高いということですね。

林田:確率は高いと思います。

ーーー林田選手がもう一度戦うとしたらどう戦いますか?

林田:まず、生命保険に入ります。

ーーーそれは大切ですよね(笑)

林田:もう戦えませんよ。もし戦うとしたら、前半をいかに耐えるかというのが鍵だと思います。

井上の試合は、11月7日(木)19時57分からフジテレビで生中継される。注目の試合まであと僅か。

スタッフ撮影
スタッフ撮影

林田太郎

生年月日 1989年9月9日(30)

出身 千葉県浦安市

駒澤大学ボクシング部 コーチ

戦績は90勝10敗

全日本ライトフライ級チャンピオン

(2008年度、2009年度、2010年度)

国体ライトフライ級優勝

(2009年、2010年、2011年)

世界選手権日本代表

JOCオリンピック強化指定選手

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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