井上尚弥に勝った伝説のボクサー林田太郎「井上選手は脅威だった」

全てスタッフ撮影

11月7日さいたまスーパーアリーナで行われるWBSSのバンタム級決勝戦で、井上尚弥(26=大橋)とノニト・ドネア(フィリピン)が対戦する。

井上尚弥のプロでの戦績は18勝(16KO)と無敗を誇り、アマチュア時代も40連勝と圧倒的な強さを誇っていた。

だが、そんな井上に黒星をつけた男がいた。井上より4歳年上の元全日本アマチュアボクシング王者の林田太郎(30)だ。

どのように勝ったのか。今は何をしているか。インタビューした。

現在はボクシング部コーチ

ーーーボクシングを始めたきっかけは?

林田:小さい頃は野球をやっていましたが、体の大きい選手にはかなわないと思い始めて。

体重別スポーツをやりたいと思い、ボクシングを始めました。

ーーー本格的に始めたのは習志野高校ですよね。

林田:そうです。

ーーー高校生の時の戦績はどうでしたか?

林田:選抜大会・インターハイ準優勝で、国体優勝でした。その後駒澤大学に進学しました。

ーーーアマチュアでの戦績は?

林田:おそらく100戦90勝10敗ほどです。

ーーーすごくいい戦績ですね。引退したのはいつですか?

林田:22歳で大学を卒業して、その年に社会人選手権に出場し、引退しました。

ーーー現在はどの様な活動をされていますか?

林田:駒澤大学学生部で職員をしています。午前中はサークル活動などを管理する学生部。午後からはボクシング部でコーチをしております。

ーーー指導者の立場から見て、今の大学生と現役時の大学生というのは違いますか?

林田:我々や木村さんの時代は、コーチに「やりなさい」と言われたら「はい」。その一択だったと思います。

ですが、今の学生は「やりなさい」と言われた時に「どうしてやらなければいけないのですか?」と理由を問うようになってきたと思います。

ーーー確かに。平成のボクサーらしいですね。

林田:厳しく言わなくてはいけない時もあるのですが、根拠をきちんと説明する事がとても大切です。

駒澤大学のボクシング場
駒澤大学のボクシング場

井上尚弥との試合

ーーーアマチュア時代、井上尚弥選手に唯一勝利した選手になるのでしょうか。

林田:他にも勝った選手はいます。

ーーー日本人で?

林田:はい。野辺優作というインターハイチャンピオンは高校時代に井上選手に勝っています。

負けた時は、すごく「え?」というように会場がざわついたらしいです。

ーーーでは、井上選手は高校時代、2回しか負けていないということですかね。

林田:そうだと思います。

ーーー現在プロで大活躍していますね。初めて井上選手を意識したのはいつ頃ですか?

林田:弟の試合を観に行った時に、高校の先生にピン級で強い選手がいるという話を聞きました。

ーーーなるほど。46キロ級ですね。

林田:はい。その時にはいずれライバルになるだろうなと思っていました。

ーーー既にですか。

林田:高校生でも全日本に出場できますから。当時私は大学生でしたが、「出てきたら嫌だなぁ」と思っていました。

ーーーそうなんですね。

林田:当時から、井上選手がプロボクサーになったら、普通にチャンピオンになるんだろうなと思っていました。

ですが、こんなに世界で活躍するとは想像していませんでした。やはりすごいですね。

ライバルは井上尚弥

ーーー井上選手は高校1年生の時から有名だったんですか?

林田:そうですね。すごい選手が出てきたな、という印象でした。

奈良のインターハイでも、彼は1年生だったと思うのですが優勝していました。

ーーーでは、ライバルとして意識し始めたのもその頃ですかね。

林田:そうですね。僕は早い段階で強い選手に目を付けてしまうタイプなので。

将来きっと脅威になるだろうな、と早い段階から思っていましたね。

初めての対戦

ーーー実際に対戦が実現したのは全日本選手権でしたね。

林田:はい。井上選手が高校2年生、僕が大学3年生の時です。

ーーー全日本選手権に高校生が出てきて、みんな「高校生なんかに負けていられるか!」という感じで。

林田:そんな雰囲気でした。

ーーー井上選手はどうでしたか?

林田:初戦から3回ぐらい勝って、大学生も倒していました。

ーーー高校生の時から大学生を倒すぐらいのパワーがあったという事ですね。

林田:そうです。加えてポテンシャルもありました。

ーーー決勝まで来るなと思いましたか?

林田:はい。井上選手はシードではなかったのですが。第1シードが私で、第2シードは全日本王者の柏崎刀翔でした。

まずは、柏崎との試合で彼の実力を見ようと思っていたら、明確に勝利していました。

ーーーパンチだけでなく、ポイントでしっかり勝つ実力も持っている。

林田:そうですね。そして実際に決勝まで勝ち上がってきて対戦しました。

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井上尚弥との決戦

ーーー井上選手と実際に戦ってみてどう感じましたか?

林田:パンチ力やスピードが想像以上でした。

ーーーパンチ力や強さも高校生とは思えなかったということですか?

林田:はい。それに、アマエリートのうまい子というのはテクニックは卓越していても、気持ちはもろかったりするんです。

しかし、井上選手の場合は、パンチもあり、気持ちも強いので「怖いな」と思いました。

ーーー僕もその試合を見させていただきました。やはり林田選手のボディー打ちが効果的で、プロに行ったばかりのアマチュア選手が嫌がるような戦い方をしていましたね。

ボディー打ちでガンガン前に出て、相手のペースを崩す。その作戦はコーチと立てたのですか?

林田:そうですね。井上選手に関して言えば、当時コーチだった小山田監督が「相手はいい選手だけど、おまえが普段どおりやれば大丈夫だ」

と言ってくれて、特別な作戦は立てていませんでした。

ーーーでは、いつも通りで試合に臨んだということですね。

林田:はい。

ーーー3R戦ってみて手応えは?

林田:勝ったなと思いました。パンチを空転させてボディーを打てました。僕も必死でした。

ペースを握っていたので、1R終わった時に、これは大丈夫だなと思いました。

ーーーボディーがいい感覚で入って、相手に効いてるなというのは感じましたか?

林田:効いてるというのは、あまりなかったです。ただ、2R目にフックの相打ちで井上選手を効かせた時がありました。

確実に「よし、当てた」と思いました。それから、だんだんポイントがこちらに入りやすくなりました。

ーーーペースを掴んだのですね。

林田:はい。そこから流れを掴みました。

次回は井上選手との再戦、プロでの活躍、今回のドネアとの対戦予想について紹介します。

林田太郎

生年月日 1989年9月9日(30)

出身 千葉県浦安市

駒澤大学ボクシング部 コーチ

戦績は90勝10敗

全日本ライトフライ級チャンピオン

(2008年度、2009年度、2010年度)

国体ライトフライ級優勝

(2009年、2010年、2011年)

世界選手権日本代表

JOCオリンピック強化指定選手

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