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ミドル級から7kgアップ カネロが2階級上のコバレフへ前代未聞の挑戦

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:Shutterstock/アフロ)

WBAスーパー、WBCフランチャイズミドル級王者のカネロ(サウル・アルバレス=メキシコ)が、階級を2階級上げて、WBO世界Lヘビー級王者のセルゲイ・コバレフ(ロシア)と対戦することが決まった。

試合は11月2日にアメリカのラスベガスのMGMグランドで行われる。

2階級上のコバレフへのチャレンジ

現役ボクサーの中でもっとも稼ぐボクサーと言われるカネロ。彼の次なる標的はコバレフとなった。

しかも、驚くことに2階級上げてのチャレンジとなる。

ボクシングは、最軽量級のミニマム級から最も重いヘビー級まで17の階級に分かれている。

カネロが主戦場とするミドル級は、154〜160ポンド(69.8〜72.5kg)。

今回挑戦するライトヘビー級は、168〜175ポンド(76.2〜79.3kg)となり、約7kgも重い計算になる。

ボクシングでは、ひとつ階級が変わるだけで、体格が一回り大きくなる。

また、パンチ力や耐久力など全てが変わるため、適正階級に合わせたスタイルチェンジが必要だ。

中量級の部類に入るミドル級で活躍しているカネロが、重量級のヘビー級ボクシングに対応できるかが鍵となるだろう。

カネロは昨年12月に、S・ミドル級160〜168ポンド(72.575〜76.204kg)で、ロッキー・フィールディング(英)に3回TKO勝ちで、3階級制覇を達成した。

今回の試合に勝利すれば、メキシコ人として史上4人目の4階級制覇王者となる。

しかも、ミドル級、スーパーミドル級のベルトを保持しているため、勝利すれば3階級同時制覇となる。

コバレフのスタイル

コバレフはロシア出身のボクサーで、元WBA・IBF・WBO世界ライトヘビー級統一王者、現在WBO世界ライトヘビー級王者だ。

これまで34勝(29KO)3敗1分の戦績を誇る。

クラッシャーの異名を持ち、KO率は8割を超えるハードパンチャーだ。

前回の8月に行われ試合では、無敗の挑戦者アンソニー・ヤード(英)を相手にTKO勝利し、今回のチャンスを掴んだ。

アマチュア時代にも200戦を超える実績があり、テクニックも兼ね備えている。

豊富なアマチュアキャリアを得てプロデビューしたが、そのキャリアは順風満帆とは言い難い。

プロデビューから3年間(プロ19試合目まで)は、無名で注目度も低く無報酬で戦っていた。

また、2011年にはリング渦(相手選手が試合後に死亡)も経験しドン底を味わう。

しかし、そこから立ち直りキャリアを積み重ね開花していった。

WBA、WBO、IBFの王座を獲得し、3団体の王座を統一した。

一時期はパウンド・フォー・パウンドランキング(全階級で誰が一番強いか)でも上位にランクインされていた。

年齢も36歳となり、最近はKOで負けも経験したが、実力者で怖い相手だ。

コバレフにとってはキャリア一番のビックマッチであり、全身全霊を懸けて試合に向かってくるだろう。

気になる両者の体格差

両者の体格差を比較すると、

カネロが175cm(リーチ179cm) に対して、

コバレフは183cm(リーチ184cm)となる。

先日行われた会見でも、頭一つコバレフが大きい。

会見では両者意気込みを語った。

カネロ「私のプロとしてのキャリアの中で最も難しい戦いになる。持っているベストを尽くす」

コバレフ「カネロは今のボクシング界で最高のファイターの一人。私は幸せで、興奮している」と話した。

スピードとスキルを活かしたカネロが、パワーがあるコバレフに対し、どのようなスタイルで戦うかに注目だ。

ミドル級のライバル達

カネロは主戦場としているミドル級で、WBAスーパー、WBC、IBFの3つのベルトを保持していた。

今回の試合を選択したことで、IBFの指名挑戦試合を破棄したため、IBFのベルトを剥奪された。

その王座をかけてミドル級の帝王と呼ばれたゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が、

同級1位セルゲイ・デレフヤンチェンコ(ウクライナ)と10月5日に王座決定戦をおこなう。

ミドル級には他にも、WBO王者にデメトリアス・アンドラーデ(アメリカ)、WBCレギュラー王者のジャーモール・チャーロ(アメリカ)、

WBAレギュラー王者の村田諒太(33=帝拳)が君臨している。

その中で、もっとも関心を集めるカネロが誰と対戦するか、注目されていたが、予想外の展開となった。

昨年カネロは、DAZNと11試合で3億6500万ドル(約408億円)という大型契約を結んだ。

ボクシング界で、今最も稼ぐカネロと対戦を望む選手は多い。年末に向けて、ミドル級の勢力図が大きく動いていく。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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