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新体制のアマチュアボクシング連盟 「選手ファースト」で東京五輪メダル獲得へ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 高尾啓介

2020年に開催される東京五輪まで、あと一年を切った。

ボクシング競技はIOCから組織運営が問題視され開催が危ぶまれたが、今年6月に東京五輪での開催が正式決定した。

昨年夏の山根会長の辞任から、新体制となったアマチュアボクシングだが、どのように変わったのか。

五輪でのメダル獲得に向けて、連盟の菊池浩吉 副会長に話を聞いた。

オリンピックに向けてのスケジュール

今回のオリンピックでは男子8階級(フライ級~スーパーヘビー級)、女子5階級(フライ級~ミドル級)で実施される。

選手枠は286名で、前回のリオデジャネイロ五輪より男子階級が2つ減り、女子階級が2つ増えた。

日本は男子4階級、女子2階級の開催国枠がある。

残る男子4階級と女子3階級でオリンピックに出場するには、男子は9月にロシアで行われる世界選手権でメダル獲得か、11月に行われる全日本選手権で勝ち抜くことが必要だ。

世界選手権の上位入賞者と全日本選手権の優勝者が異なる場合は、12月にボックス・オフ(代表決定戦)を実施する。

女子は、10月に行われる世界選手権の代表と全日本女子選手権の優勝者で、12月にボックス・オフ(代表決定戦)を実施する。

また、来年の1月に行われるアジア・オセアニア予選及び、5月に行われる最終世界予選にて五輪出場枠を獲得した選手を、代表選手として決定する。

東京五輪では、全階級での出場を目指して、枠を取りに行く。

日本人選手の出場枠は各階級1つとなるため、五輪切符を巡り、ライバルとの激烈な争いが待っている。

昨年末に山根明会長が辞任して、アマチュアボクシング連盟の体制も大きく変わった。

以前はトップダウンだったが、今は現場の指導者の意見も積極的に取り入れている。

皆で話し合い、選手の体調管理を優先して、国内のスケジュールを決めているようだ。「選手ファースト」で改革が進められている。

菊池副会長 スタッフ撮影
菊池副会長 スタッフ撮影

ウズベキスタンのコーチ

昨年より、ウズベキスタンから海外コーチを招集し体制を強化した。

ウズベキスタンは、リオデジャネイロ五輪で金メダル3個を含む、9個のメダルを獲得したアマチュアボクシング大国だ。

その立役者となったのが、ウラジミール・シン氏だ。シン氏はライトヘビー級のソ連王者、世界選手権銅メダル獲得の実績を持つ。

菊池氏も「影響力は、もの凄く大きい」と話していた。

一番大きい部分は日本人のマインドを変えたことのようだ。

世界トップクラスの指導者のお陰で、日本人選手全体の意識改革に繋がっている。

トレーニングの面では、追い込み型で限界を超えるトレーニングから、非常に細かい調整、体の使い方など、

これまでにない指導を行い、選手達もレベルアップしているようだ。

プロ選手の参加

今回の東京五輪からプロ選手の参加も認められている。

(プロ競技との同時進行は不可。プロボクシング及びプロ格闘技の引退証明が必要となる)

予選大会には、元世界主要4団体ミニマム級王者の高山勝成(36=名古屋産大)も出場した。

だが、今月行われた東海地区予選で敗退し、五輪への夢は敗れた。

プロボクシングと混合されるアマチュアボクシングだが、ルールが大きく異なるため、プロの世界王者でも勝ち抜くのは難しい。

菊池氏は「プロとアマは、中距離走と短距離走ぐらい違う。全然別の競技」と話した。

著者もアマチュアとプロで経験があるが、採点のルールや、試合のテンポ、勝ち抜けるスタイルなどの違いに苦労した。

プロのチャンピオンクラスでも、実践のスパーリングでは、大学生に手を焼くことも多いほどだ。

連盟としては、プロのボクシング協会と協議を重ね、ボクシングを盛り上げる体制を目指している。

以前はアマチュアとプロの間に大きな溝があったが、協力体制が進み、ジュニア育成も含めて連携している。

東京五輪に向けて

アマチュアボクサーにとって、オリンピックの舞台は最終ゴールとも言えるだろう。

現在プロで活躍している3階級王者の井上尚弥(26=大橋)や、4階級王者の井岡一翔(30=Reason大貴)も予選で敗退し、夢破れている。

プロの世界王者でもオリンピックに出場するのは難しい。

国内の代表選考はこれからだが、菊池氏の選手への期待は非常に大きい。

メダルの可能性を聞くと「男子は金と銀か銅の複数メダル、女子は金メダル獲得」と目標を高く掲げている。

東京五輪に向けては「日本の皆さんの期待に応えたい。これを機に継続してボクシングを発展させたい」と話した。

年々、ボクシング人口は緩やかに減少している。ボクシング競技の存続と発展のために、東京五輪は絶好の機会となるだろう。

「メディアと連携し、選手をもっとPRして、応援したくなる連盟になっていきたい」と抱負を語った。

一時は東京五輪でボクシング競技が除外される話もあったが、開催が決まり安堵している。

私も過去に、アマチュアボクサーとしてオリンピックを目指している時期があった。

選手にとってオリンピックは夢の舞台だ。また、東京で行われるチャンスは2度と来ないかもしれない。

新しく生まれ変わった日本アマチュアボクシング界の躍進と、日本人選手の活躍に期待したい。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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