賛否両論!AbemaTV1000万円企画 那須川天心のボクシングの実力とは

(写真:ロイター/アフロ)

 AbemaTVで、「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」の放送が決まった。キックボクシングの神童と言われる那須川天心と対決する挑戦者の募集を開始した。

応募条件は18歳以上で、心身ともに健康な男性。番組の選考を通過した数名が、天心と対戦する。対戦ルールはAbema独自の特別なもので、後日発表される予定だ。

業界では賛否両論

 この発表が決まり、ボクシング業界から賛否両論がある。エンタメ的要素が強く、ボクサーではない天心がなぜボクシングに?との声も聞かれた。

私のツイッターでも、企画の記事をリツイートしたところ、瞬く間に拡散され非常に反響が大きかった。

中には「現役だからやらないで欲しい」「キックに集中したらいい」などの反対意見も多い。また、現役ボクサーからはボクシングを舐めるな、との声も聞かれた。

年末にボクシングルールでメイウェザーと対戦した天心だったが、かなりの体重差があり、条件も不利だったため、本当のボクシングの実力は未知数だ。

キックボクシングでは無敗の天心だが、果たして、ボクシングでの実力はどうなのだろうか。

ボクサーとしての実力

 私は4年ほど前、彼がまだ高校生の時に、スパーリングで対戦したことがある。天心は私が所属していたジムにボクシングを習いに来ていた。

私の次の対戦相手が左構えのサウスポーだった事もあり、試合前のスパーリングのパートナーとして彼と手合わせをした。

当時からジムでも、スーパー高校生として噂になる程の実力を持っていたが、たかが高校生だろうと、軽い気持ちでリングに立った。しかし、直ぐに真剣勝負でないとマズイと感じ、スイッチが入った。

はじめに驚かせたのは、彼の距離感だった。通常ボクサーは自分のパンチが当たる間合いと、相手のパンチの当たる間合いを見分ける作業に入る。

だいたい1Rくらいで、自分のパンチが当たる距離や相手との間合いを見抜くのだが、天心と対戦した時は違った。

距離感が掴めないのだ。パンチを当てようにも間合いの取り方が絶妙なので、捉えどころがない。

それなりにサウスポーとの対戦経験は豊富で、左対策の戦い方も熟知していたが、まともなパンチは当たらなかった。

当時はまだ体もできていなくて、怖さはなかったが、物凄い才能を感じさせた。

ミット打ちをしている天心 全てスタッフ撮影
ミット打ちをしている天心 全てスタッフ撮影

進化した那須川天心

 それからしばらく時が経ち、去年の年末にあのボクシング界のレジェンド、フロイド・メイウェザーとの戦いが決まった。

試合は1ラウンドで3度倒され、KOで負けてしまったが、国内、海外を含め那須川天心という名を轟かせた。影響力も高まり知名度も抜群に高まった。

試合から少し経ち、松戸にある彼が所属しているジムに取材へ向かった。練習も見させてもらったが、数年前とは、見違えるほど成長していた。

特に目を見張ったのは、パンチに迫力が出てパワーがついていた事だ。正直なところ私が対戦した当時は、上手いという印象の選手だったが、パワーが増して、強い選手に成長していた。

それに、数々の大舞台や修羅場をくぐってきた経験が加わった。ボクシングのトレーニングも続けていたようで、技術レベルも向上していて逞しくなっていた。

トップボクサーが持つ迫力

 その後、今月10日に行われたRISEのトーナメントを現地に観戦しにいった。そこで天心の強さを改めて、垣間見る事になった。

3分3Rの短いラウンドで相手を倒すのは至難の業だ。短いラウンドで倒すのには、相手を瞬時に見切る能力と仕留め切る勢いが必要だ。

KOは偶然には生まれない。タイミングやいい角度でパンチが入れば相手からダウンを奪うことはできる。しかし、相手を仕留め切るには、勢いが必要だ。必ず倒すという覚悟を持って向かうことで、相手の気持ちを制圧できる。その姿勢が、独特のオーラを放つのだ。

ボクサーで言えば、全盛期のマイクタイソンや現ヘビー級王者のデオンテイ・ワイルダーなどは、そのオーラを持っている。

日本人ボクサーで言えば井上尚弥選手が、その空気を漂わせている。天心には、そのトップボクサーが持っている迫力を感じた。

また、入場時には会場の天心に対する期待感がヒシヒシと伝わってきた。何か起こしてくれるという想いから、会場のボルテージは最高潮だった。

試合ではパンチの多彩さに加え、キック1発で試合を決めて存在感を示した。あくまでキックボクシングの試合であってボクシングではないが、ボクサーとしての可能性を十分に期待させる試合であった。

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天心の想い

 天心は格闘家としてパイオニア的な存在になっている。今はボクシング、キックボクシング、総合格闘技と様々なジャンルの格闘技があるが、その中でも中心的な存在だろう。

SNSのフォロワーも他の選手を圧倒して、世間への認知度やメディアでの影響力も高い。インタビューを通しても、本人はそれを自覚しているようだった。

「自分がやりたいというよりは、周りが盛り上がってくれるなら、いろいろなものにチャレンジしたい」

また、

「自分を知ってもらう事でキックボクシングを知ってもらえると思うので、興味を持ってもらいより多くの人がやるきっかけをつくりたい」と力強く語ってくれた。

確かに新しい事に挑戦すると色々な意見も出るし時には大きな批判も浴びる。それでも、前に進み競技を背負ってチャレンジしている姿は夢を与えてくれる。

今回の企画も大衆を巻き込み、格闘技やボクシングに興味を持ってもらえる、大きな機会になるだろう。まだ弱冠20歳でありながら、自分の考えを持ち、前に進んで新しい道を切り開いていっている。

彼の挑戦はまだまだ続くが、今までの固定概念や古い価値観を壊して、新しい時代を作っていって欲しい。それを許容して、ボクシングも含めて格闘技界全体が盛り上がっていくことを願う。