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どこまで続くヘンリー公爵とメーガン夫人の「英王室たたき」 米メディアは「賞味期限切れ」と冷ややか

木村正人在英国際ジャーナリスト
ネルソン・マンデラ国際デーイベントに出席するヘンリー公爵とメーガン夫人(写真:ロイター/アフロ)

■次の核爆弾は何?

[ロンドン発]「英王室を離脱したヘンリー公爵(王位継承順位6位)とメーガン妃の“王室たたき”は果てしなく続く」「妄想とそれが引き起こす悲劇には言葉を失う」―英高級日曜紙サンデー・タイムズが王室関係者の懸念を伝えた。2人は英国に一時帰国したが、スコットランド・バルモラル城で休養するエリザベス女王との面会は予定されていない。

王室関係者は同紙に「彼らがしていることが、公の場で個人的な家族関係について話すことを奨励しない女王の価値観と同じになるとは考えにくい」「女王は(メーガン夫人とヘンリー公爵が爆発させる)次の核爆弾が何なのか、いつもハラハラ心配しながら待つようなことは望んでいない」と話している。

ヘンリー公爵とメーガン夫人は「フルタイム」から「パートタイム」の王族になり公務を減らす一方で経済活動の自由を求めた。しかし王室との交渉は決裂。2020年1月、公務をすべて投げ出して英王室を離脱した。この時、2人は声明で「これからもエリザベス女王の価値観を守り続ける」と誓った。しかし、その約束は守られていない。

■「ヘンリー公爵は父を失った」

2人は昨年3月、米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏の独占インタビューに王室内で孤立したメーガン夫人が自殺を考えたことや、生まれてくる長男アーチーちゃんの「肌の色」に向けられた王族の偏見を一方的に告発した。「肌の色」告発の背景にはヘンリー公爵と兄ウィリアム王子(同2位)、そして父チャールズ皇太子(同1位)との確執がある。

メーガン夫人は米雑誌カットのインタビューで「私たちが存在することで(王室の)ヒエラルキーの力学が乱される」ため、王室を追放されたとほのめかした。「ヘンリー公爵は父を失った。(父と仲違いした)私と同じ必要はないけれど、それは彼の決断よ」とも語ったが、あとで広報担当者が「メーガン夫人は自分のことを話しただけ」と軌道修正した。

ヘンリー公爵の回顧録も年内の出版が予定されている。深刻なのはヘンリー公爵とチャールズ皇太子の父子関係より、ヘンリー公爵とウィリアム王子の兄弟関係だ。ヘンリー公爵とメーガン夫人はウィンザーのフロッグモア・コテージに滞在するが、車でわずか5分のご近所に住むウィリアム王子とキャサリン妃に会う予定はないという。

■「メーガンは王室のトラウマを捨てなければならない」

英紙ガーディアンは「メーガン夫人のメディア露出が少ないのは、まだ米国が元王族に好意的ではないことを示唆している」と指摘する。米メディアも「ヘンリー公爵とメーガン夫人はトラウマのシナリオに固執し過ぎている」「メーガン・マークルは王室のトラウマを捨てなければならない」と辛辣だ。

2人は米国での活動を本格化させたものの、米メディアはいっこうに盛り上がらない。自分を犠牲者に仕立て、王室での「トラウマ」を切り売りするだけでは本物のセレブとしてのステイタスを確立できないからだ。王室を離脱しながら“王室たたき”を商売のネタにし続ける2人に米国は冷ややかな視線を向け始めている。

米大衆紙ニューヨーク・ポストのコラムニスト、モーリーン・キャラハン氏は「彼女は世界的なプラットフォームを持っていたのに、検閲され、沈黙させられ、締め出されたと文句を言うだけだ。新しい主張が求められる時期はとっくに過ぎている」と皮肉った。“王室たたき”はもう賞味期限切れというわけだ。

■自分とマンデラ氏を並べたメーガン夫人

メーガン夫人はカット誌のインタビューで2019年にミュージカル「ライオンキング」映画版プレミアがロンドンで行われた際、南アフリカ出身の出演者から「あなたが王室に嫁いだ時、黒人解放運動指導者ネルソン・マンデラ氏が刑務所から解放された時と同じように私たちは街頭で喜んだ」と声をかけられたというエピソードを披露した。

この逸話はマンデラ氏の孫を驚かせた。孫は「南アにおける60年間の残忍なアパルトヘイト(人種隔離政策)政権による350年の植民地主義を克服したことと、誰かの結婚式のお祝いとは決して比べられない」と英大衆紙デーリー・メールに語っている。「自分をマンデラにだぶらせる前に彼が主導した運動の支持者になれるはずだ」という。

該当するとみられる南ア出身の俳優は「メーガン夫人には会ったことがない。彼女の記憶違いでは」と困惑を隠せなかった。サンデー・タイムズ紙は「マンデラの次は誰? ガンジー?」という王室関係者の言葉を伝えている。チャールズ皇太子は「2人の息子を愛している」と王室と対立するヘンリー公爵を思いやった。

メーガン夫人の“分断作戦”で王室に入ったヒビが修復されることは永遠にないのかもしれない。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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