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眞子さまと小室さんの結婚と英王室を離脱したヘンリー公爵とメーガン夫人の類似点と相違点

木村正人在英国際ジャーナリスト
眞子さまと結婚する小室圭さん(2017年5月当時)(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

[ロンドン発]秋篠宮(あきしののみや)ご夫妻の長女、眞子(まこ)さま(29)と国際基督教大学時代の同級生、小室圭(こむろ・けい)さん(29)が10月にも婚姻届を出し、小室さんがアメリカから一時帰国、2人そろって記者会見を開く方向だと報じられています。眞子さまは皇室を離れ、アメリカで小室さんと新たな生活を始められる見通しです。

これまでの各メディアの報道では、一般の結納にあたる「納采(のうさい)の儀」や天皇皇后両陛下にお別れのあいさつをする「朝見(ちょうけん)の儀」など、女性皇族の婚約や結婚に伴う皇居・宮殿での儀式はすべて行われず、皇籍離脱の際に支給される1億円超の「一時金」を眞子さまは受け取らない意向だそうです。

眞子さまと小室さんは2017年9月に婚約内定したものの、小室さんの母親の金銭問題を指摘する週刊誌報道が相次ぎ、宮内庁は18年2月、結婚とそれに関わる諸行事の延期を発表。小室さんは同年8月、米フォーダム大学ロースクールに留学、今年7月に米ニューヨーク州の弁護士試験を受け、12月中旬までに結果が発表されるそうです。

眞子さまは昨年11月に公表された文書で結婚に向けた決意を打ち明けられています。

「行事や結婚後の生活について充分な準備を行う時間的余裕がないことが延期の理由である旨をお伝えいたしました。それから今日までの間、私たちは、自分たちの結婚およびその後の生活がどうあるべきかを今一度考えるとともに、様々なことを話し合いながら過ごしてまいりました」

「様々な理由からこの結婚について否定的に考えている方がいらっしゃることも承知しております。しかし、私たちにとっては、お互いこそが幸せな時も不幸せな時も寄り添い合えるかけがえのない存在であり、結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です」

日本国憲法には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」と謳われています。皇籍を離脱すれば、眞子さまは小室さんと手を携え、幸せな時も困難な時も富める時も貧しき時も病める時も健やかなる時も愛し合い、慈しみ合わなければなりません。

結婚は心の導きに従うのが大切で、眞子さまが小室さんを心から信じるのであれば周りがとやかく言う問題ではありません。しかし週刊誌報道が過熱する背景には、小室さんの母親の金銭問題という以上に、皇位を継承できる男性皇族は3人しかいないという皇位継承問題があります。そのうちのお一人、常陸宮さまは85歳の高齢です。

日本は皇室典範を改正して女性天皇を認めるか、先の大戦後、臣籍降下した旧皇族の皇籍復帰を認めるかを近いうちに決めなければなりません。旧皇族の皇籍復帰を選択すれば、日本は世界に対して過去に逆戻りしますと宣言するようなものだと筆者は考えます。

イギリスでもヘンリー公爵=王位継承順位6位=とメーガン夫人が王室を離脱してアメリカに移住し、大騒ぎになりました。報道が本当なら眞子さまと小室さんも日本を離れてアメリカに脱出することになります。ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイのアナ・ホワイトロック教授(君主制の歴史)にその類似点と相違点について尋ねました。

――眞子さまが小室さんと予定通り結婚されるというニュースを聞いて最初にどう思われましたか

「眞子さまと小室圭さんは国際基督教大学の同級生で、長い間、お互いに愛し合っていることが明らかなカップルです。今回の結婚は眞子さまが皇籍から離れられることを意味しており、アメリカで新しい人生を踏み出すようです」

――1億円超の一時金を放棄しなければならないと思いますか

「小室さんの母親の金銭問題を考慮すると、結婚をこれ以上遅れることなく、スムーズに進めるためには一時金をあきらめなければならないと思われます」

――眞子さまと小室さんの決断と、ヘンリー公爵とメーガン夫人の英王室離脱の類似点と相違点をどう見ますか

「両カップルとも皇室や王室の支配と責任から自由になり、より“普通”の独立した生活を求めて“金の檻(おり)”から脱出しようとしています。 どちらのカップルも皇位や王位を継承する予定はないので、皇室や王室の義務を超え、より意義のあるキャリアを築くことを望んでいます」

「しかし、どちらのケースも前例が少ないため、経済的にも、仕事の種類や世間的な関心の面でも不確実な未来が待ち受けています。ヘンリー公爵とメーガン夫人は慈善活動を継続するために公的なプロフィールを保持したいと考えていますが、眞子さまと小室さんはそうではないようです」

――日本では眞子さまを、離婚歴があり15歳年上の「空の英雄」ピーター・タウンゼント氏との結婚を許されなかったマーガレット王女(1930~2002年)にだぶらせる人がいます

「似ている点はほとんどありません。時代も違えば、天皇や君主に対する立場も違いますが、2人とも皇室や王室の期待や責任からある程度独立して、自分の人生を生きたいと考えています」

――皇室や王室を今の時代に合わせて変革していくことは非常に難しいと思います。日本の皇室が現代社会に適応するための良いアイデアはありますか

「もっと身近に、もっと普通にという圧力がありますが、これは日本社会における皇室の歴史や立場に反するものです。そのため、批判に答えられるようなかたちで皇室を変えていくことは非常に難しいでしょう」

――欧米メディアは保守的な日本社会や皇室がモダンな皇后雅子さまを鳥かごの中に入れ、次の犠牲者は眞子さまだと批判していますが、あなたはどう思いますか

「皇族なら誰にでも、特に女性皇族には、そのような傾向があると思います」

――皇室をできるだけ長く維持するために、日本社会や皇室はどのように変化していくべきでしょうか

「非常に難しいことだと思います」

――21世紀を超えて、世界中で天皇や君主制が存続できるかどうか。あなたはどう思いますか

「天皇や君主制が生き残る可能性はかなりあるでしょう。しかし国によって理由はさまざまで、君主制を廃止することがどれだけ難しいか、受け入れられる代替案は何かによって変わってきます」

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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