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新型肺炎 悲観シナリオでは日本は景気後退入り 中国の成長率5%割れの衝撃 OECDが予測

木村正人在英国際ジャーナリスト
日本のスーパーではトイレットペーパーなどのパニック買いが起きている(写真:アフロ)

[ロンドン発]中国発の新型コロナウイルス肺炎が世界中に広がっている問題で、経済協力開発機構(OECD)は2日「世界経済は世界金融危機以来、最も深刻な脅威に直面している」と警鐘を鳴らしました。

世界経済見通しの最新暫定版によると、今年、中国の経済成長は2019年の6.1%から4.9%に縮小するそうです。昨年11月の見通しから0.8%ポイントも下方修正されました。衝撃的な見通しです。

OECDの発表より
OECDの発表より
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OECDの報告書は「新型コロナウイルスは中国から他の地域に広がり、人々の苦痛と経済的混乱を引き起こしている。健康への懸念、人・モノ・サービスの移動が大幅に制限されるリスクが高まり、ビジネスと消費者の自信は損なわれ生産を減速させている」と指摘。

楽観シナリオと感染がドミノ現象を起こす悲観シナリオの2つが示されています。いずれにせよ、各国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制し、人々や企業をその影響から守る必要があります。需要を下支えするために直ちに行動することをOECDは求めています。

中国以外の国での限られたアウトブレイクという楽観シナリオでも、今年前半にはサプライチェーンと原材料が打撃を受けるとともに観光客が減少。信頼感が揺らぎ、世界の経済成長は急激に鈍化すると予想されるそうです。

世界経済の成長率は2019年もすでに2.9%と弱く、今年2.4%まで低下するとみられています。2021年には3.3%に回復する見通しです。

しかし中国で起こったような新型コロナウイルスの大流行がより広いアジア太平洋地域や先進国全体に広がった場合、今年の世界の成長率は1.5%まで低下。昨年11月の見通し2.9%からほぼ半減する恐れがあります。

新型コロナウイルスへの封じ込め対策と信頼感の喪失は生産と消費に打撃を与え、日本やユーロ圏を含むいくつかの国を景気後退に追い込むかもしれません。

OECDの首席エコノミスト、ローレンス・ブーン氏は「新型コロナウイルスは貿易や政治の緊張によってすでに弱められた世界経済にさらなる打撃を与えるリスクがある」と指摘。

「政府は流行を封じ込め、医療制度を支援し、人々を守り、需要を支え、最も影響を受ける家庭や企業に財政的ライフラインを提供するために直ちに行動する必要がある」と呼びかけています。

OECDは雇用を守るために柔軟な働き方を取り入れる必要があると勧めています。政府は旅行や観光、自動車や電子産業など影響を最も受けている部門への影響を緩和するために、一時的な税制・予算措置を実施する必要があるそうです。

最も影響を受ける国では封じ込め措置が実施されている間に銀行がキャッシュフローの問題を抱える企業を支援できるよう十分な流動性を提供する必要があるとOECDは付け加えています。

エピデミック(地域的な流行)が広範囲に広がる場合、20カ国・地域(G20)は医療支援のための国際的に調整された枠組みを主導すべきだとも提言。G20は信頼感を再構築するため協調的な財政・金融刺激策をとるべきでしょう。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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