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「王室という商標は海外では誰でも使える」メーガン・マークルがエリザベス英女王に放った“最後っ屁”

木村正人在英国際ジャーナリスト
英王室を離脱したメーガン妃とヘンリー王子(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「王室という言葉に海外での管轄権は存在しない」

[ロンドン発]「海外でロイヤル(王室)という言葉を使うことに関する英王室や英内閣府の管轄権など存在しない」――。元米女優メーガン妃(38)が英王室を去る前に君主のエリザベス女王にこんな捨て台詞を残していきました。

3月31日に長男のアーチーちゃん=生後約9カ月、英王位継承順位7位=を連れて英王室を離脱する王位継承順位6位のヘンリー王子(35)と妻のメーガン妃が21日、ホームページ「サセックスロイヤル」で自分たちの見解を明らかにしました。

2人に「サセックスロイヤル」のブランド使用権を認めず、3月31日をもってバッキンガム宮殿の執務室も引き払うことを通告したエリザベス女王の決定に強烈な不満を示しました。双方の関係を修復するのはもはや不可能でしょう。

実の父親トーマス・マークルさん側の家族との関係が完全に破綻しているメーガン妃は王位継承権を持つヘンリー王子とアーチーちゃんを“人質”に取る形でエリザベス女王に譲歩を迫りました。しかし、やり方があざとすぎました。

悪玉と善玉の構図を作り上げるメーガン妃

メーガン妃の戦術はトーマス・マークルさんを悪役に仕立て上げたように自分を叩く英メディアを悪玉に、ウィリアム王子とキャサリン妃、エリザベス女王を“頑迷固陋な王族”、自分は“リベラルな改革派”という構図を作り上げることです。

英王室はハリウッド流商業主義の臭いがプンプンするメーガン妃のブランド展開計画に強い危惧を描き、王室防衛のため一流の弁護士を雇ってメーガン妃追放に動かざるを得ませんでした。英国民はメーガン妃が思っているほど馬鹿ではありません。

お人好しのヘンリー王子はメーガン妃に引きずられて、もう取り返しのつかない事態に追い込まれました。在位68年のエリザベス女王をここまで振り回し、公然と侮辱したのはメーガン妃が最初で最後でしょう。メーガン妃は自分の野心と都合が何よりも大事な人のようです。

メーガン妃とヘンリー王子の声明とバッキンガム宮殿(英王室)が1月に発表した声明とは微妙に食い違っています。

【メーガン妃とヘンリー王子の見解】

・サセックス公爵と公爵夫人の新たな役割は2020年春に始まり、12カ月後にレビューを受けることに同意する。

・英王室はサセックス公爵夫妻が、「公共の利益」をタテにしたメディアのプライバシー侵害を排除することで、より自立した生活を送るという望みを尊重し、理解している。2人はエリザベス女王の大切な家族のメンバーであり続ける。

・2人は自分たちの収入を得る許可を与えられ、私的な慈善活動を展開する能力を持つ財政的に自立した英王室のメンバーになる。

・2人の望みは当初、公的資金であるソブリングラント(王室の活動費)を利用せず、より限定的な能力ではあるが、エリザベス女王を代表し支援することだった。

・称号を授与された他の王族が王室の外で仕事をしている先例はあるものの、2人には12カ月のレビュー期間が設けられた。

・英王室との合意によれば、2人はエリザベス女王に代わって王室の職務や代表する職務から退くことを求められていることを理解する。

王室の称号は保持

・2人は1月の合意で定められたように王室の称号(His or Her Royal Highness)を保持する。正式にサセックス公爵とサセックス公爵夫人として周知され続ける。しかし2020年春に公務から退くため、王室の称号を積極的には使用しない。

(筆者注)バッキンガム宮殿の声明では2人は公務から退くので王室の称号を二度と使用しないとされていた。

・ヘンリー王子の王位継承順位は6位のまま変わらない。

・2人はエリザベス女王のために正式に公務を遂行したり、英連邦を代表したりすることはできなくなるが、王族としてのパトロンを含むパトロンとしての地位を継続することが許される。

(筆者注)バッキンガム宮殿の声明では2人は彼らの私的なパトロンや協会を維持し続けるとなっていた。

・2人は彼らと息子を保護するために効果的な身辺警護を要求し続けることが合意された。

(筆者注)バッキンガム宮殿の声明では身辺警護の詳細についてはノーコメントとされていた。英国やカナダの納税者から公務もしないのにどうして血税で身辺警護をしないといけないのかと苦情が殺到するのは必至。

・軍隊に関してヘンリー王子は陸軍少佐の階級のほか、海軍少佐、空軍少佐の名誉階級を保持。しかし1年のレビュー期間は除く。

(筆者注)バッキンガム宮殿の声明では公式な軍の任務を含む公務から退くとされていた。

・傷痍軍人のための国際スポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」の創設者であるヘンリー王子はインビクタス・ゲームズ財団などを通じて軍のコミュニティーを引き続きサポートしていく。

・2人のバッキンガム宮殿にある執務室は閉鎖しなければならないことが1月に決定された。

「ロイヤル」という言葉は使用しないものの

・2人は王族の公務から退くため「ロイヤル(王室)」という言葉の使用を検討する必要があることに同意した。

・2人は「財団」を開始する予定はないが、新しい方法を開発し、世界中の財団の努力を補完する。

・2人は新たな非営利組織を立ち上げる計画に焦点を当てている。「ロイヤル」という言葉の使用を巡る英国政府の規則により2人の非営利組織は「サセックスロイヤル」または「ロイヤル」を使用しない。

・ウィリアム王子とキャサリン妃によるロイヤル・ファンデーションのスタンダードを反映し、保護措置として提出された商標登録は取り下げられた。

・海外での「王室」という言葉の使用に対する英王室、英内閣府の管轄権はないが、2人はいかなる地域でも「サセックスロイヤル」または「王室」という言葉を使用するつもりはない。

・2人は将来のため非営利組織を発展させることを計画しているので、このサイトをソースとして使用して。2020年春には次のエキサイティングなフェーズを紹介するため、デジタルチャネルが更新される。

(筆者コメント)後ろ足で砂をかけて英国を去っていったメーガン妃とは言え、英連邦の象徴であるエリザベス女王にこれはいくら何でもやりすぎではないんでしょうか。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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