イギリスがEUを離脱 ジョンソン英首相「これは終わりではなく始まり」

ジョンソン英首相に対するEU残留派の不信感は消えない(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]運命の欧州連合(EU)国民投票で離脱を選択してから3年7カ月。イギリスは1月31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)、EUを離脱します。2020年末まで「移行期間」に入り、EUとの新たな協定を交渉します。

イギリスがEUの前身である欧州諸共同体(EC)に加盟したのは1973年。イギリスはEUの一部になるよりも、EUから飛び出してアメリカや中国、インドなど世界との関係を再構築することになりました。安全保障はアメリカとの特別関係と北大西洋条約機構(NATO)が軸になります。

ボリス・ジョンソン英首相はこの日午後10時にビデオメッセージで「最も重要なことは、これは終わりではなく始まりであるということです。これは夜明けであり、新しい舞台のため幕が上がる瞬間です。本当の国家の再生と変化の瞬間です」と訴える予定です。

新生イギリスを導くのは「政界の道化師」と呼ばれてきたジョンソン首相と、「黒魔術師」の異名を取る上級アドバイザー、ドミニク・カミングス氏のコンビ。イギリスを分断する経済格差、地域格差を埋められるかが最大のカギとなります。

その象徴として日産自動車が工場を持つ英イングランド北東部サンダーランドでこの日、閣議を開きます。離脱派の牙城であるイングランド北部・中部を切り捨てず、産業振興策に取り組むという政治的なメッセージを送るためです。

【ジョンソン首相とカミングス氏の足跡】

・2016年6月、EU国民投票で離脱派を予想外の勝利に導く

・2019年10月、EUが否定していた再交渉とアイルランド国境のバックストップ(新たな協定交渉が決裂した場合でも“目に見える国境”を復活させない安全策)の見直しを認めさせ、離脱協定書の改定案で合意

・2019年12月、総選挙で保守党を地滑り的勝利に導く

・2020年1月、EU離脱

ジョンソン首相はEU離脱後をにらみ、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の次世代通信規格5G参入を周辺機器に限り認める現実的な判断を下したばかり。

ダイヤの乱れ、サービス低下、スト多発、週末の運休で利用者の不満がたまっていた英イングランド北部の列車運行会社ノーザンを3月1日から再国有化します。行き過ぎた市場主義の失敗を政府の介入でどこまで修正できるのか、困難な挑戦が始まります。

31日の英紙1面からイギリス国民がEU離脱をどう見ているのか探ってみましょう。

タイムズ紙「ジョンソン首相はカナダがEUと結んだような自由貿易協定(FTA)を目指す」

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イギリスとEUは無関税、クオーター制(輸入割当制度)なしのFTAを結ぶことで大筋合意しているような印象を受けます。FTAの締結時期や政府援助などの規制、漁業権でどこまで双方が歩み寄れるのかがポイントになりそうです。

すでにフランスは今後25年間、英海域に入って漁業権を認めるよう求めるなどハードパンチを繰り出してきています。

フィナンシャル・タイムズ紙「楽天主義と後悔が入り混じったままEUを去る」

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祝賀ムードはありません。焦点は新たな貿易協定に移ります。「移行期間」を最大で2022年末まで延長するかどうか6月中に判断しなければなりませんが、2020年末の完全離脱を目指すジョンソン首相と「移行期間」の延長を求めるEU側が早くも火花を散らしています。

「移行期間」は「実行期間」に言い換える灰色決着が図られるとの見方も出ています。同時にアメリカや英連邦のオーストラリアなどともFTA交渉が進められます。

デーリー・テレグラフ紙「EUから離脱する日。これは終わりではなく始まりだ」

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ガーディアン紙「小さな島国になるイギリス」

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イギリスは47年属したEUから去る。人生で最大のギャンブルだ。

デーリー・メール紙「イギリスにとって新しい夜明け」

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「欧州とは友達だが、イギリスは自由と独立を手に入れる」と同紙は訴えています。

デーリー・エクスプレス紙「はい、私達はやってのけました!」

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サン紙「私達の時代がやって来た」

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i紙「イギリスは未知の領域に飛び降りた」

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ブレグジットはイギリスにとっては外交問題ではなく、あくまで国内問題に過ぎなかったようです。ジョンソン首相にとって、これまで取り残されてきた人たちとともに国内を建て直す本当の闘いはこれから始まります。

(おわり)