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王室離脱に「これ以上ない悲しみ」を吐露したヘンリー王子の苦しい胸の内

木村正人在英国際ジャーナリスト
民間人になるメーガン妃とヘンリー王子のブランド戦略は?(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]メーガン妃、長男のアーチーちゃんとともに英王室から離脱することになったヘンリー王子が19日、エリザベス女王の最終決定を受け、「こういう結果になったのはこれ以上ない悲しみ」と苦しい胸の内をのぞかせました。

ヘンリー王子はロンドンのジ・アイビー・チェルシー・ガーデンで開かれたチャリティーの公式プライベートディナーであいさつしました。2人のインスタグラム「サセックスロイヤル」にアップデートされた動画からヘンリー王子のあいさつを見てみましょう。

「私が愛する場所は変わらない」

「ここ数週間で皆さんが聞いたこと、読んだことを想像することしかできないと言わざるを得ません。だから私が皆さんとできる限り共有できる真実に耳を傾けてほしい。ハリー(ヘンリー王子の愛称)として、皆さんの多くが過去35年間の成長を見てきた同じ人物として」

「イギリスは私の家であり、私が愛する場所は決して変わりません。これは明確です。私はこんなにも多くの皆さんからサポートを感じながら育ちました。私は皆さんが両手を広げてメーガンを歓迎してくれたのを見ました」

「私が全ての人生に望んでいた愛と幸福を見つけるのを皆さんは目にしたでしょう。最終的にダイアナ(元皇太子妃)の次男にも相手が見つかりました。心配しないでください」

「私が妻として選んだ女性が私と同じ価値観を持ち、彼女が私と恋に落ちた女性であることに変わりはありません。それを信じている私を皆さんが十分に長い間、知っていることも分かっています。私たち2人はイギリスのために誇りを持って先頭に立ち私たちの役割を遂行するためできる限りのことを行います」

「退くというのは軽い決断ではない」

「メーガンと私は結婚した時、興奮を覚えました。私たちは希望を持ち、奉仕するためにここにいました。これらの理由から、妻のために下したこの決定に至ったのはこれ以上ない悲しみです。退くというのは軽い決断ではありませんでした」

「何カ月もの話し合いがあり、何年にもわたる挑戦がありました。私が必ずしも正しい行いをしていたわけではないことを自覚しています。しかし今回の一件に関しては本当に他の選択肢はありませんでした」

「私が明確にしたいのは、私たちは立ち去っていくわけではないということです。皆さんから離れていくわけではないということです」

「私たち2人の希望は公的資金なしに女王、英連邦および軍関連の団体に奉仕し続けることでした。残念ながらそれは不可能でした。私は自分が誰であるか、または私がどれほど国に献身的であるかは変わらないことを知って、この現実を受け入れました」

「あなたの理解に役立つことを願っています。私が今まで取り組んできたことから家族を後退させることは、より平和な生活になりたいと願うことに一歩踏み出すことでした。私はこの人生に生まれました。私の国と女王に仕えることは大変名誉なことです」

「メディアは強力」

「23年前に母を亡くした時、皆さんは翼の下に私を入れてくれました。皆さんは長い間私を見守ってくれました。しかしメディアは強い力を持っています。いつの日か私たちが互いに力を合わせて、メディアの力を上回ることを願っています。なぜならこれは単に私たちも問題よりも大きいからです」

「奉仕するのは王族としての特権でした。そしてこれからも奉仕のため生活を送り続けます。その点では何も変わりません。たくさんの皆さんとお会いし、私たちの息子アーチー誕生に対する皆さんの興奮を感じることができて光栄です」

「アーチーは先日初めて雪を見ました。なんて素晴らしいことなんだと思いました」

「次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれてありがとう」

「私は常に祖母、最高司令官に最大限の敬意を払い続けるでしょう。彼女と他の家族に非常に感謝しています。過去数カ月にわたって私とメーガンは王室へのサポートを見せてきました。私は同じ男であり続けます」

「この国を支え、慈善団体や軍関連の団体を支援するため人生を捧げます。それは私にとって非常に重要なことであり続けます」

「そして皆さんは人生について私に教えくれました。この役割は、私が想像していた以上に、何が正しいかについて教えてくれました。私の誓いは深まっています。私に次の一歩を踏み出す勇気を与えてくれてありがとう」

「こんなに悲しそうなハリーを見たことがない」

「フルタイム」から「パートタイム」の王族になることで王室の公務を減らし、「サセックスロイヤル」を使ったハリウッド流のブランド展開を夢見ていた2人にとって、王室の称号(His or Her Royal Highness)を使用しないというエリザベス女王の最終決定は予想以上に厳しいものでした。

これに対して2人のインスタグラムには「こんなに悲しそうでナーバスなハリーを見たことがない」「ハリーと祖国への義務を代償にしてメーガンが求めて獲得したことがこれ。とても悲しい」という同情の書き込みが相次いでいます。

「ブラボー、ハリー!!!!」「ダイアナ妃はハリー、お前を誇りに思うだろう」「ハリー、大好き。なんて素晴らしいスピーチなの」とヘンリー王子へのエールが送られ、「ハリーとメーガンを愛している。しっかり」いう激励も寄せられています。

18日のバッキンガム宮殿の声明には「サセックス公爵と公爵夫人はもはやロイヤルファミリーのメンバーではないため、王室の称号を使用しません」と明記されていました。

これについて英王室が2人から王室の称号を剥奪したわけではなく、2人が使わないだけということが明らかになり、一部のコメンテーターから「ごまかしだ」という厳しい批判が寄せられています。

「2人はロイヤルファミリーを騙した」

2人はイギリスの拠点としてロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージに住み続けるため、改修費の240万ポンド(約3億4400万円)を返済するだけでなく、今後は家賃として年間最大36万ポンド(約5160万円)を納めるとみられています。

チャールズ皇太子に属するコーンウォール公爵領からの利益配分230万ポンド(約3億3000万円)が今後もヘンリー王子に支払われ続けるのか、身辺警護の費用、「サセックスロイヤル」を使った今後のブランド展開についても、まだはっきりしたことは分かりません。

上昇志向が強いメーガン妃に対して実の父親のトーマス・マークルさんは英BBC放送に「2人は公務を放棄することでロイヤルファミリーの品位を落とした」と強い言葉で非難しました。BBCがこうした内容を報道するのは極めて異例です。

BBCもエリザベス女王と王室を擁護する姿勢を鮮明に打ち出しています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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