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「独立宣言」したメーガン妃と良妻賢母に徹するキャサリン妃 あなたはどちら派?

木村正人在英国際ジャーナリスト
虚ろな目のヘンリー王子と元気いっぱいのメーガン妃(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

72時間以内の解決求めたエリザベス女王

[ロンドン発]英王室のヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン妃(38)が「王室のシニアメンバーとして退き、財政的に独立する」と宣言した問題で、英紙デーリー・テレグラフは10日、エリザベス女王が72時間以内の解決を求めたと報じました。

世論調査会社ユーガブ(YouGov)の緊急世論調査によると、2人の「王室のシニアメンバーを退く」という決断を支持する世論は45%にのぼりました。反対は26%です。

2人の決断はロイヤルファミリーを「傷つけるのは明白」と答えたのは8%、「おそらく傷つける」が24%(計32%)。「おそらく傷つけない」が38%、「傷つけないのは明白」は11%(計49%)でした。

ヘンリー王子は王位継承順位6位、第一子のアーチーちゃんは同7位です。エリザベス女王からの王位継承が近づくチャールズ皇太子は同2位のウィリアム王子、同3位のジョージ王子に王位継承のラインを絞り込む考えです。

英メディアを騒然とさせた2人の“独立宣言”ですが、英国内では「どうぞ、ご勝手に」という反応が多かったような気がします。

「メーガン妃とヘンリー王子は公費返上を」が63%

2人がチャールズ皇太子に属するコーンウォール公爵領の利益から受け取っている200万ポンド(約2億8600万円)も返上すべきだという世論が63%にものぼりました。受け取り続けるべきだという回答は13%に過ぎません。

メーガン妃に敵対的な英大衆紙デーリー・メールは2人の収支を試算しています。

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ソブリングラント以外の特権手放さず

ヘンリー王子とメーガン妃がウエブサイト「サセックスロイヤル」によると、2人の公費の内訳はソブリングラント(王室の活動費)が5%、チャールズ皇太子領(コーンウォール公爵領)の利益からが95%。

しかし2人が受け取っているソブリングラントの金額には10万ポンド(約1430万円)という説と200万ポンド(約2億8600万円)という説と2説あり、はっきりしたことは分かりません。

2人の言い分は公費の5%に相当するソブリングラントをあきらめる見返りに活動を通じて自己資金を調達できるようにしたいと主張。デーリー・メール紙の試算では最大年2400万ポンド(約34億3100万円)が見込まれています。

グーグルやアップルのようなグローバル企業の大使になればさらに5000万ポンド(約71億4900万円)の収入が見込めると算盤を弾きます。

メーガン妃もヘンリー王子も10万ポンドのソブリングラントをあきらめものの、チャールズ皇太子領からの利益200万ポンド、ロンドン郊外ウィンザーのフロッグモア・コテージ、警察官の警護などの特権は維持したい考えです。

チャールズ皇太子「終わりの始まりになる恐れ。完全なる悲劇だ」

勾留中に自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年性的搾取への関連疑惑を晴らすため英BBC放送の単独インタビューに応じたアンドルー王子が炎上して事実上“解任”されたのは6日後。

エリザベス女王はそれより速い事態収拾を望んでいるとされ、英大衆紙デーリー・ミラーは王室のインサイダーの話としてチャールズ皇太子が「ヘンリーとメーガンにとって終わりの始まりになる恐れがある。完全なる悲劇だ」との懸念を示していると伝えています。

アンドルー王子はチャールズ皇太子の「スペア」。ヘンリー王子もウィリアム王子の「スペア」。王位継承者に万が一の事態が起きるのに備えて目立たないようただ生きていく運命が定められています。

「小人閑居して不善をなす」を地で行ったアンドルー王子が陥ったのは、まさに「スペア」の悲劇。チャールズ皇太子の王位継承が近付き、お世継ぎトリオのジョージ王子、シャーロット王女、ルイ王子が誕生した今、ヘンリー王子の「スペア」としての務めも終わりました。

アンドルー王子を見て、メーガン妃がヘンリー王子の行く末に不安を覚えたとしても何の不思議もありません。エリザベス女王はメーガン妃だけでなく、王位を継承しない他の王族全員に適用できる解決策を考えるよう命じたと報じられています。

米紙「自分の道を切り開くヘンリー王子とメーガン妃は正しい」

自由の国・アメリカのニューヨーク・タイムズ紙は社説で「ヘンリー王子とメーガン妃が自分たちのビジョンを実現する道を作り出すのは正しい」と主張しました。

「2人は古い秩序の亡命者になったと嘆かれるのではなく、新しい時代を切り開いたと祝福されるべきだ。現代の王族は現実世界で自らの運命を切り開くために一定の特権を手放すべきだ」とも。

将来、王妃になるキャサリン妃は良妻賢母に徹し、公の場で決して多くを語りません。自分を見せないことが彼女の人気が上昇する秘密です。

一方、競争の厳しいハリウッドを生き抜いたアクティビストのメーガン妃は「5年かける気がないものに5分も時間をかけてはダメよ」が人生哲学。

メーガン妃が英王室に風穴を開けるのか、それともヘンリー王子とともに事実上“追放”されるのか。

ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校でマーケティングを専門にするポーリーン・マクララン教授は筆者に「 エリザベス女王とチャールズ皇太子は一定の義務を保ちながら一定の独立性に同意することでコントロールを取り戻そうとするだろう」との見方を示しました。

嫁と家の問題、女性の生き方はどの国であっても、また、王室であっても一般家庭であっても激しい論争を巻き起こします。筆者にはメーガン妃が性急でかなり身勝手なような気もしますが、間もなくエリザベス女王の大英断が下されようとしています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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