日韓の軍事費逆転迫る トランプ米大統領の反転攻勢が始まった 安倍首相は「冷戦後」の終わりに備えよ

南シナ海で訓練する海自護衛艦(写真:ロイター/アフロ)

世界の軍事費は203兆円

[ロンドン発]紛争や軍備を研究する有力シンクタンク、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は29日、2018年の世界の軍事費が1兆8220億ドル(約203兆6100億円)と前年比で実質2.6%増加、09年に比べると5.4%増えたと発表しました。

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信頼に足る統計が始まった1988年以降では史上最高を記録し、軍事費を減らして経済政策や社会保障に充てること(平和の配当)ができた「ポスト冷戦」時代が終わったことを改めて印象付けました。

軍事費の総額は世界の国内総生産(GDP)の2.1%。冷戦終結後、底を打った1998年に比べると76%も増えています。世界経済も急成長しており、対GDP比で見るとポスト冷戦期で最低となった2014年と同じ水準です。

軍拡競争の敗者はロシア

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この10年間で世界一の軍事大国・米国の軍事費は17%も減ったのに対し、2位の中国は83%も伸ばし、米中の差は縮まりました。

世界の81%を占める上位15カ国は前年と同じでしたが、ロシアが2006年以来初めてトップ5から転落して6位になりました。ウクライナのクリミア併合やシリア内戦への軍事介入の負担、米国や欧州との関係悪化、原油価格の低迷がボディーブローのように効いているようです。

上位15カ国の中で09年から10年間で軍事費を減らしたのは米国のほか、英国のマイナス17%、イタリアのマイナス14%の3カ国だけです。

「米国を再び偉大な国に」

ドナルド・トランプ大統領が「米国を再び偉大な国に」と宣言している同国はこの7年間で初めて上昇に転じ、前年比4.6%増の6490億ドル(約72兆5300億円)。

世界ランキング2位から9位までの国を合わせたのと同じ額の国防費を支出しています。しかしピーク時の2010年に比べると19%減です。

米国防総省によると今年の軍事費は名目で7160億ドル(約80兆100億円)。来年には7500億ドル(約83兆8100億円)に増やす予定です。

サイバー関連に100億ドル(約1兆1200億円)、宇宙関連に140億ドル(約1兆5600億円)。艦艇の建造にはこの20年間で最大の予算を組むそうです。

経済成長と軍事費の拡大をリンクさせる中国は24年連続で軍事費を増やしており、前年比5%増の2500億ドル(約27兆9400億円)。1994年に比べると10倍に膨張しています。中国人民解放軍も海軍力を増強させています。

「まさか」に備えよ

9位の日本は09年から10年間に2.3%増やして466億ドル(約5兆2000億円)、10位の韓国は28%も増やして431億ドル(約4兆8200億円)。日韓逆転の日は間近に迫っています。

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平和憲法の名の下、防衛費「GDPの1%枠」の聖域に縛られた日本の防衛費はGDP比で0.9%、韓国の軍事費は2.6%、中国は1.9%。米国は3.2%です。

昨年12月、韓国海軍艦艇が自衛隊哨戒機へ火器管制レーダーを照射する事件が発生しました。中国人民解放軍も自衛隊護衛艦に火器管制レーダーを照射、米軍輸送機に軍事用高出力レーザーを照射したことがあります。

レーダー照射は中国軍が「仮想敵国」に対して行う悪質な牽制です。韓国軍はそれをまねたのでしょうか。

国防・安全保障の要諦は最悪シナリオへの備えを怠らないことです。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の「親日残滓(ざんし)の清算」演説を聞く限り、日本は「まさか」に備えておいた方が無難です。

防衛費は国際水準のGDP2%に

日本の「0.9%」という数字からは退官した元自衛官の年金が抜かれています。年金を加えると「1%枠」を超えるのは間違いありません。聖域を守るためだけの数字合わせはもう止めて、防衛費も国際水準である「GDPの2%」に合わせる時期が来ています。

トップ15に中国、インド、日本、韓国、オーストラリアの5カ国が入り、中国の軍備増強や北朝鮮の核・ミサイル開発がアジア・オセアニア地域に緊張をもたらしている現状を浮かび上がらせています。

中華人民共和国建国100周年(2049年)に中国は軍事力でアメリカと肩を並べるのが習近平国家主席の掲げる「中国の夢」です。中国の太平洋進出の防波堤となる日本は日米同盟を基軸にオーストラリアやインドともスクラムを組む必要があります。

そのために必要な軍備増強は避けては通れないでしょう。

(おわり)