「ホンダが英国から撤退」英メディア報道 EU強硬離脱派はこの現実にどう向き合うのか

ホンダの英スウィンドン工場(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]スカイニューズの報道によると、ホンダが早ければ19日にも英南部ウィルシャー州のスウィンドン工場を2022年に閉鎖すると発表するそうです。日本国内での生産に切り替えると報じられています。

ブラックネルにある欧州本社とフォミューラー1のチームは英国に残すとみられています。

ホンダはスウィンドン工場でシビックやCR-Vを16万台強生産しています。3500人の雇用がなくなり、サプライチェーンなど関連の雇用を含めると数千人に影響が出る恐れがあります。

サンダーランドに工場を持つ日産自動車もすでに、多目的スポーツ車(SUV)エクストレイルの次期モデルの生産計画を取りやめると発表しています。

世界最大級の自由貿易経済圏を形成する日本・EU経済連携協定(EPA)が2月1日に発効。7年かけて自動車分野の関税を撤廃するため、域内関税のない欧州連合(EU)から出ていく英国でわざわざ造らなくても、日本国内で生産して輸出できるようになったという事情があります。

英国は輸出するものがなくなる

米国のドナルド・トランプ大統領が中国やEUに仕掛けた貿易戦争と中国経済の減速。さらに3月末にEU離脱が迫る中、英国とEUはアイルランドの国境問題を巡って対立し、将来の関係どころか「合意なき離脱」の可能性すら完全に排除することができません。

メイ首相としては与党・保守党内の強硬離脱派をなだめるため、「合意なき離脱」を脅し材料に使って何とかEUや大黒柱のアンゲラ・メルケル独首相の譲歩を引き出したいところです。

しかし、離脱協定で合意できたとしても新たな通商協定の締結まで気の遠くなるようなプロセスが待っています。英・EUのチキンゲームに英国に進出する外国企業は音をあげています。

「EU離脱後に自由貿易協定(FTA)が結べないなら『合意なき離脱』もやむなし」と息巻いてきた強硬離脱(ハードブレグジット)派はこうした現実にどう向き合うのでしょうか。

英国にとって自動車は最大の輸出品で、2台に1台は日本の自動車メーカーが生産しています。自動車産業が衰退すれば、仮にどんなに素晴らしい通商協定を結ぶことができたとしも輸出するものがなくなってしまいます。

英国の自動車産業への投資は10分の1に

英自動車製造販売者協会(SMMT)によると、英国の自動車生産台数は昨年12月、対前年同月に比べて22.4%も減少、このうち輸出が25.3%も落ち込んでいます。英国が「合意なき離脱」に追い込まれ、世界貿易機関(WTO)ルールに基づきEU域外関税の10%が自動車にかけられた場合、50億ポンド(約7150億円)のコストが発生するそうです。

毎日1100台以上のトラックが欧州から英国に入り、3400万ポンド(約48億6200万円)相当の自動車部品を英国の車両・エンジン製造工場に運び込んでいます。ジャスト・イン・タイムのサプライチェーンが被る打撃は大きく、下請け零細企業の「合意なき離脱」対策は十分ではありません。

昨年1年間の英国における自動車の生産台数は対前年比9.1%減の151万9440台。内訳は国内向けが28万1832台(同16.3%減)、輸出が123万7608台(同7.3%減)。

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EU離脱を決定した2016年の国民投票以降、一時は200万台を目標にしていた英国の自動車生産台数は坂道を転げ落ちるように減っています。

中国や欧州への輸出減。世界統一排出ガス・燃費試験規則(WLTP)が英・EU両市場を冷え込ませ、ディーゼル車規制と景況感の悪化が国内市場にさらに追い打ちをかけました。

EU離脱の行方も将来の関係も全く見通せないため、英国の自動車産業への投資は悲しくなるほど減っています。2013年には58億ポンド(約8300億円)もあったのに昨年は5億8860万ポンド(約840億円)と10分の1に激減しました。

英自動車産業への投資額
英自動車産業への投資額

英ジャガー・ランドローバー(JLR)が4500人の雇用を削減。米フォード・モーターがフランス南西部ボルドーでの変速機生産中止や、ミニバンの生産終了を相次いで発表し、数千人の雇用が失われる見通しです。

英国に工場を構えるホンダや独BMWは一部の生産休止を決めていました。

SMMTの最高経営責任者マイク・ホーズ氏は「今後の成長と相互に恩恵のある貿易関係を守ることができる経済的・政治的安定が不可欠です」と訴えています。

(おわり)