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キャサリン妃と自立するメーガン妃に「不仲説」英王室の不協和音はいったい何が原因?

木村正人在英国際ジャーナリスト
昨年のクリスマスには仲良く姿を現した4人だが、さて今年は―(写真:Splash/アフロ)

「難しいお妃」「わがまま妃」のレッテル

[ロンドン発]今年10月、英王位継承順位6位のヘンリー王子(34)と元米人気女優メーガン妃(37)がロイヤルベイビー(同7位)を授かり、来春誕生という「おめでた」が発表されてから、急に「メーガン叩き」のニュースが目立つようになりました。

王国から独立した「自由の国」米国の出身で、競争の厳しいハリウッドのスターダムを自力で駆け上り、キャリアを築いたメーガン妃は英王室の伝統とプロトコルに縛られるのを嫌がるのでは、という懸念が結婚前からささやかれていました。

その懸念がいろいろなかたちで現れ始めています。5月の結婚前後からメーガン妃を支えてきたスタッフ3人が相次いで辞めたことから、「難しいお妃」「わがまま妃」という有り難くないニックネームがメーガン妃につけられました。

エリザベス女王から厚い信頼を得て、17年間も英王室に仕えてきたベテランのサマンサ・コーヘンさん(47)はこの半年間、報道官としてヘンリー王子とメーガン妃を支えてきました。しかし、第一子誕生までに辞任することが決まりました。

コーヘンさんはオーストラリア出身で3人の子供の母親です。バッキンガム宮殿で報道官のトップに上り詰め、エリザベス女王から名誉あるロイヤル・ヴィクトリア勲章コマンダーの名を授けられています。

コーヘンさんはもともとバッキンガム宮殿の報道官を辞める心づもりでいましたが、メーガン妃が英王室にスムーズに適応できるようアドバイス役を一時的に引き受けました。メーガン妃は有能なコーヘンさんに引き続き残ってもらえないかお願いしましたが、辞任の意思は変わりませんでした。

ヘンリー王子の右腕だったエドワード・ホックス氏も15年務めた報道官の職をこの夏に辞しました。メーガン妃はホックス氏のことを「神の賜り物」と頼りにしていました。

さらにメーガン妃の私設秘書メリッサ・トゥバチさん(39)もわずか半年で辞めることになりました。トゥバチさんは、英王室とも交流がある英ポップシンガー、ロビー・ウィリアムズ夫妻の秘書として働いたことがある有能な人物です。

英大衆紙は、メーガン妃の要求が多すぎて、トゥバチさんが泣いてしまい、それが辞任の原因になったと書き立てています。「メーガン妃は独裁者のように振る舞っている」という批判も報じられています。

悲劇の交通事故死でこの世を去ったダイアナ元皇太子妃のようにメーガン妃がならないか心配するヘンリー王子が、ちょっとしたことで報道官や秘書に大声を出すようになったとの報道もあります。

火がついた「不仲説」

ヘンリー王子とメーガン妃がおめでたを機に新年に、ウィリアム王子(36)とキャサリン妃(36)の暮らすケンジントン宮殿を離れ、ウィンザー城近くのフロッグモア・コテージに引っ越すこともメーガン妃と兄嫁キャサリン妃の「不仲説」に火をつけてしまいました。

ヘンリー王子とメーガン妃はもともとウィリアム王子とキャサリン妃のお隣に引っ越す予定でした。いったい何があったのでしょう。

英大衆紙サンによると、キャサリン妃がメーガン妃に対して「ケンジントン宮殿の私のスタッフにガミガミ言うのは止めて」と苦情を言ったそうです。結婚式でもシャーロット王女の着るブライズメイドドレスを巡ってメーガン妃の要求がきつく、キャサリン妃が泣いたとも報じられています。

ハリウッドの成功者メーガン妃は完璧主義者で要求が多く、報道官や秘書に山のようなメールや指示を送りつけているという記事もあります。

サン紙はメーガン妃の要求を次のように報じています。「結婚式が執り行われたウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂がかび臭いので礼拝堂全体に空気清浄機を置くよう求めた」「礼拝堂全体の清掃を求めた疑惑もある」

結婚式でメーガン妃が着けたティアラを巡っても一悶着あったらしい(筆者撮影)
結婚式でメーガン妃が着けたティアラを巡っても一悶着あったらしい(筆者撮影)

王室ジャーナリストのロバート・ジョブソン氏は新著『70歳になったチャールズ皇太子』の中で、メーガン妃が望むティアラを着けられるよう要求するヘンリー王子を、エリザベス女王が「私が選んだティアラを着けなさい」と諭したエピソードを紹介しています。

対立する子育て観

新居となるフロッグモア・コテージはエリザベス女王からの贈り物ですが、住むためには改修費用が必要になります。そこまでしてメーガン妃がケンジントン宮殿を出て行く理由は何なのでしょう。

ウィリアム王子とキャサリン妃にはジョージ王子(5歳)とシャーロット王女(3歳)、ルイ王子(生後7カ月)の3人の子供がいます。ケンジントン宮殿はロンドンにあるため幼稚園や小学校に行くようになると、どうしても好奇の目にさらされます。

ジョージ王子は王位継承順位3位、シャーロット王女は4位、ルイ王子は5位です。できるだけ普通の家庭のように3人を育てたいと望んだところで、3人に対する「帝王学」や「王室教育」は不可欠です。

ウィリアム王子とキャサリン妃にとってヘンリー王子とメーガン妃にケンジントン宮殿に留まってもらって3人の子供の遊び相手をできるだけ多く生んでほしいのはヤマヤマです。

しかし、その一方で、メーガン妃は自分の子供にはロイヤルファミリーの一員としてではなく、もっと自分の足で立つことのできる、たくましい人間に育ってほしいという願いを持っています。公共交通機関を利用し、家事も手伝う普通の人間としての子育てが理想のようです。

ヘンリー王子とメーガン妃が目指しているのは英日曜紙サンデー・タイムズによると、アン王女の長男と長女で、王室の称号を捨てたピーター・フィリップス氏とザラさんのような生き方です。

独立した自分のキャリアを持ち、ロイヤルファミリーというスポットライトから遠ざかって生きる――こうした生き方と子育て観の違いがキャサリン妃とメーガン妃の「不仲説」の源泉になっているように筆者には感じられます。

問題抱える父親と連絡断つ「冷たさ」

メーガン妃の父親トーマス・マークル氏(74)の嫌がらせも止まりません。マークル氏は体調不良を理由に結婚式の招待も断ったのに、英大衆紙のインタビューに「メーガン妃は自分の電話に出てくれない」と不満をぶちまけています。

いくら問題があっても実の父親と連絡を一切絶つというメーガン妃のやり方は英国では「冷た過ぎる」という印象を与えてしまいます。

英王室の伝統とプロトコルという大きなカルチャーギャップ、妊娠と子育て、いずれは王妃になるキャサリン妃との生き方の違い、父親との断絶。ヘンリー王子とメーガン妃には愛の力でこうした困難を乗り越えてほしいものですが、問題が多すぎて少し心配になってきました。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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