安倍昭恵首相夫人も訪れたベルリンの難民シェアハウスカフェ 年43万人「移民大国」化する日本のヒントに

16年5月、ベルリンの難民シェアハウスカフェを訪れた昭恵夫人(GSBTB提供)

外国人流入ではOECD第4位

[ベルリン発]表向きは「移民」を受け入れていない日本で外国人の流入が増えています。経済協力開発機構(OECD、加盟36カ国)の2016年統計ではドイツ172万人、米国118万人、英国の45万4000人に次ぐ第4位の42万8000人。11年の26万7000人と比べると1.6倍に膨らみました。

日本に流入した外国人の内訳は中国が最も多く10万3300人。次がベトナムで7万7500人。3位がフィリピンで2万6200人です。これは短期滞在者や再入国者を除いた数字です。

少子高齢化と人口減少が進む日本では労働力不足を解消するため、事実上の短期移民労働者として、外国人技能実習生や留学生のアルバイトを受け入れるようになりました。

厚生労働省によると、日本で就労する外国人は全体で127万9000人。このうち技能実習生は25万8000人、留学生のアルバイトなどが29万7000人、経済連携協定(EPA)などに基づく特定活動が2万6000人です。

技能実習生ではベトナムが最も多く10万4800人、次が中国で7万9959人、3位がフィリピンで2万5740人です。

技能実習制度の期間は最長5年です。いずれは帰国するケースが多いとみられるものの、ホスト国の日本社会との交流は果たして進んでいるのでしょうか。

技能実習生や留学生は将来、日本とアジアの懸け橋になる大切な人材です。労働力の穴埋めとしてだけではなく、交流を積み重ねていけば日系企業のアジア進出の助けになる可能性もあります。

昭恵夫人も訪れた難民シェアハウスカフェ

初めての海外生活では友だちを作るのも難しく、心細くて、とても寂しいものです。ベルリンを訪れた際、自分の体験をもとに難民とベルリン市民の絆を深めているスウェーデン出身の女性ジャーナリストに会いました。

スウェーデン出身のジャーナリスト、アナマリア・オルソンさん。壁の時間割には語学教室などイベントの予定が書き込まれていた(筆者撮影)
スウェーデン出身のジャーナリスト、アナマリア・オルソンさん。壁の時間割には語学教室などイベントの予定が書き込まれていた(筆者撮影)

10年前にベルリンにやってきたアナマリア・オルソンさん(34)は欧州をウォッチして記事を書いてきました。移民排斥を唱える極右勢力が台頭してきたことに危機感を覚え、12年にフェイスブックを通じてニューカマーの交流の場を設けることを提案します。

GSBTBが主催したクリスマスパーティー(同団体提供)
GSBTBが主催したクリスマスパーティー(同団体提供)

最初はベルリン生活になじめなかった自分の体験から、ドイツ語や英語のレッスン、音楽やダンス教室、オープンキッチン(みんなで食事を作って楽しく食べる集まり)を始めました。瞬く間に人の輪が広がり、5年前に難民支援NPO(非営利団体)「ギブ・サムシング・バック・トゥー・ベルリン(GSBTB)」を創設します。

子供たちのためのアート・シェルターのイベント(GSBTB提供)
子供たちのためのアート・シェルターのイベント(GSBTB提供)

GSBTBが入居するビルは、難民20人、ベルリン市民20人が暮らし、1階は難民と市民が集うカフェ「Refugio」になっています。壁に掲げられた時間割にはドイツ語や英語、音楽の教室の日程が書き込まれています。アナマリアさんは「そうそう、安倍晋三首相の夫人、昭恵さんも来たことがあるわよ」と笑顔を見せました。

昨年の音楽デイのイベント(GSBTB提供)
昨年の音楽デイのイベント(GSBTB提供)

言葉を学ぶ、音楽を演奏する、温かい郷土料理を作る、Wifiに接続して故郷の家族と話ができる機会を提供しているGSBTBのスタッフは10人。

ベルリンのホームレス、高齢者、子供支援NPOと連携して年間2万5664人と関わっています。ボランティアの活動時間も1万9151時間に達しました。60カ国の人々が関わり、職業訓練や芸術によるトラウマ・セラピーも手掛けています。

「難民とベルリン市民ではなく、人と人との出会いを作りたいと思っています」とアナマリアさんは言います。

イベントの参加者で作ったコラージュ(GSBTB提供)
イベントの参加者で作ったコラージュ(GSBTB提供)

難民と認定されず、男娼になる少年たち

シリア内戦の長期化で15年、トルコから地中海を渡ってギリシャの島々に渡る難民が激増しました。ギリシャ、イタリア、スペインの合計で101万人を超える「ボート難民」が上陸。これにバルカン半島の人々が加わり、ドイツには出入を差し引きしても101万人が流入しました。

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16年末時点でドイツに滞在することが認められた難民は160万人。このうちシリア難民は45万4800人。アフガニスタン難民が19万人。イラク難民が15万6400人でトップ3を占めています。

この2年間では毎年17万6500人が難民認定申請を行っていますが、紛争国以外からの難民認定は非常に難しい状況になっているのが現状です。

地下に潜った難民や不法滞在者が酒や薬物におぼれ、10代の少年が薬物を買うお金欲しさに体を売る例も後を絶ちません。

「難民認定申請が却下されると不法滞在者は当局の目を逃れなければならず、働くことも生活援助を受けることもできません。ベルリンだけではなく、私の祖国スウェーデンでも難民と認定されなかった少年たちが男娼になるというニュースが報じられています」とアナマリアさんは表情を曇らせました。

最初に難民申請した国に留まらなければならないという欧州連合(EU)のルールに縛られて別々の国で暮らすことを強いられている難民の家族や、厳格な審査手続きのため家族が一緒に暮らすのに3年を要したケースも目の当たりにしました。

ドイツでは反難民・移民の新興右派政党「ドイツのための選択肢」が台頭し、難民への風当たりはますます厳しくなっています。しかし、アナマリアさんは「政治の世界はそうかもしれないけれど、私たちが活動するベルリンの地域社会は温かい心を持ち続けています」と言います。

GSBTBを訪れたスウェーデンのシルヴィア王妃(同団体提供)
GSBTBを訪れたスウェーデンのシルヴィア王妃(同団体提供)

「地域社会へのアクセスを確保してやりさえすれば、難民がその社会に溶け込む可能性は十分にあります。日本と同じように労働力不足という問題を抱えるドイツやスウェーデンが難民を支援することは自分たちの国の未来にもつながるのです」

(おわり)