FacebookやTwitterの終わりが始まる 偽ニュースや偽情報、偽アカに政治介入 規制求める声

窮地に立たされるFBのマーク・ザッカーバーグ共同創業者兼会長(写真:ロイター/アフロ)

1日13兆円の時価総額を失う

[ロンドン発]26日の米株式市場でフェイスブック(Facebook、以後FB)の株価が前日の決算内容に嫌気したパニック売りで、前日比41.24ドル(19%)安の176.26ドルで取引を終えました。

時価総額が1日で1190億ドル(13兆2000億円)も減少、「上場企業が1日に失った時価総額としては史上最大」(米CNN)だそうです。

27日には米ツイッター社が決算発表で世界の月間利用者数が前年同期より100万人減少したと明らかにしたことを受け、株価は20%超も下落しました。大量の自動投稿をしている偽アカウントを削除したことが利用者数の減少につながりました。

偽ニュース、偽情報だけでなく、米大統領選や英国の欧州連合(EU)国民投票に悪用されていた疑惑まで浮上し、ソーシャルメディアは大きな転換点を迎えています。中でもFBは「最もアンソーシャル(反社会的な)メディア」と批判されるほどユーザーの信頼を失いました。

きっかけは、ドナルド・トランプ氏が当選した米大統領選や英国がEUからの離脱を選択した国民投票の陰で動いたとされる英政治コンサルティング会社ケンブリッジ・アナリティカ(今年5月に倒産手続き開始、以下CA社)のスキャンダルでした。

トランプ氏が全国的に300万票も民主党の大統領候補ヒラリー・クリントン氏に負けていたにもかかわらず、4万票の僅差で3州を制して大統領選に勝利できたのは有権者データを分析・駆使したネット戦略のおかげとCA社は喧伝していました。

CA社は性格診断クイズアプリを利用してFBユーザー30万人から友だち5000万人のデータを集め、FBから破棄を要請された後もデータを保持し続けていた疑いが指摘されました。英国のEU国民投票でも、使えるキャンペーン資金の上限が違法に回避されていた疑惑が発覚しました。

ソーシャルメディアに厳しい規制を

CA社のデータ・スキャンダルに続いて偽情報と偽ニュースを調査してきた英下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会は「ソーシャルメディア企業は今まで以上に厳しい規制を課せられるべきだ」という内容の報告書をまとめました。

ソーシャルメディアを通じて大衆蜂起や暴動が一気に拡散していく現象は世界的に見ても珍しくなくなりました。ソーシャルメディアが事実上、野放しにされている現状は決して望ましいものではありません。英下院委員会の報告書を見ておきましょう。

(1)FBやYouTubeなどのソーシャルメディアサイトは、投稿された「有害」なコンテンツについて責任を持つべきだ。「我々は出版社ではなく、単なるプラットフォーム」という言い訳の後ろに隠れることはできない。

出版社とプラットフォームの間に位置するテクノロジー企業の新しいカテゴリーを設ける必要がある。彼らのプラットフォームに投稿された有害で違法なコンテンツに対処する明確な法的な責任を明記すべきだ。

(2)政治キャンペーンのルールはデジダル時代に即して改正すべきだ。政治広告に関して誰にでもチェックできるよう公簿をつくる。オンライン上の政治広告には誰に責任があるのか分かるデジタルの印を押し、実際に印刷されたパンフレットや広告の提出を求める。

ソーシャルメディアサイトは悪意を持ったプレーヤーが選挙に不当介入することに関して責任を持つべきだ。選挙違反の罰金を最大2万ポンドから団体の年間売り上げの1%に引き上げる。

(3)テクノロジー企業に、偽情報や偽ニュースに対するリテラシーを増す教育と啓蒙、新たな規制にかかる資金を負担させるため課税すべきだ。

(4)ソーシャルメディアは監査を受けるべきだ。FBやツイッターの偽アカウントはユーザーの体験を損ねるばかりではなく、広告主を欺く潜在的な恐れがある。

競争・市場庁(日本の公正取引委員会に相当)のような独立当局がソーシャルネットワークを監査すべきだ。ソーシャルメディア会社が利用するセキュリティー・メカニズムやアルゴリズムを政府規制当局が監査する際にも使えるようにする。

終わりの始まり

世界に月間ユーザー20億人がいるFBはCA社のスキャンダルで2月以降、一時、時価総額で1200億ドル近い価値を失ったことがありますが、その後、株価は回復していました。

FBの月間アクティブユーザー数は右肩上がりに増え続けています。その増加率が少し減速しただけでパニック売りが起きた背景には、FBのビジネスモデルの終わりが始まるのではという潜在的な恐怖心が市場にあるからです。

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米アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は「FBの収入モデルは個人のプライバシーを侵害している」と批判しています。

個人データの域外持ち出しを原則禁止するEUの一般データ保護規則(GDPR)が5月に施行されました。違反すれば最大で2000万ユーロ(約26億円)か、世界での年間売上高の4%という巨額の制裁金が課されます。

ターゲットはFBやグーグルといった米国の巨大テクノロジー企業です。

性格診断クイズの恐怖

CA社が利用していた性格診断クイズアプリの原型を作ったのは米スタンフォード大学経営大学院のミカル・コジンスキー助教授ら。

FBの「いいね!」10件を分析するだけで同僚の研究者より対象者のパーソナリティーを分析でき、「いいね!」70件で友だちより、「いいね!」150件で家族より、「いいね!」300件で配偶者より詳しくその人の性格が理解できるようになったそうです。

FBの「いいね!」には「超いいね!」「うけるね」「すごいね」「悲しいね」「ひどいね」のボタンが加えられました。ユーザーのパーソナリティーをより詳細に分析するためです。

ユーザーの性格分析によりターゲッティング広告の効果を上げるFBのビジネスモデルに多くの人が強い不信感を抱いています。自分たちの知らないところで自分も気づいていない自分の性格分析データが用いられ、民主主義に予測不能な影響を与える恐れまで指摘されています。

英下院委員会の報告書は「FBは彼らの会社に関する情報を得ようとする委員会の努力を妨げた。FBの証人は当委員会の質問に答えることができないか、しようとしなかった」と厳しくFBを批判しています。

デジタル化、人工知能(AI)化に向かって突き進む前に私たちはもう一度立ち止まり、ソーシャルメディアの規制についてじっくり考える必要がありそうです。

(おわり)