【W杯現地報告】ポーランド戦はレジスタ柴崎と切り札の武藤で1位通過を サポーターは寝台列車で移動

日本のレジスタ、柴崎岳(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

[モスクワ発]サッカーのワールドカップ(W杯)1次リーグH組の日本代表は2大会ぶりの決勝トーナメント進出が濃厚になってきました。28日、ボルゴグラードで第3戦のポーランド戦に臨みます。

2-1で大金星をあげた第1戦のコロンビア戦。第2戦のセネガル戦も驚異的な粘りで2-2の同点に追いついた後も、最後の最後まで勝利を目指す姿勢を崩しませんでした。

サポーターは無料の寝台列車で移動する(他の乗客に撮影してもらう)
サポーターは無料の寝台列車で移動する(他の乗客に撮影してもらう)

「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」と言いますが、まさに今の日本代表は「人の和」を得ています。

サポーターたちもモスクワを拠点にサランスク、エカテリンブルク、ボルゴグラードへの長距離の寝台列車(観戦者は無料)やバス、飛行機で大移動が続きます。

下の写真はエカテリンブルクからモスクワに向かう30時間の寝台列車の車中。途中停車した街のスーパーで買った惣菜やウオッカで相棒(妻)の史さんとディナーを楽しみました。予算は2000円ぐらいです。

2等車だが、ちょっと豪華な気分でディナー(同)
2等車だが、ちょっと豪華な気分でディナー(同)

肉や魚、野菜はロンドンと比べ物にならないぐらい美味しいです。

さてポーランド戦を控え、今回も英イングランド・プレミアリーグで活躍するDF吉田(サウサンプトン)やFW岡崎(レスター・シティ)と親しくしている、ロンドンのサッカークラブ「フットボール・サムライ・アカデミー」共同運営者、竹山友陽氏にお話をうかがいました。

セネガル戦は竹山氏が予想した通りに展開になりました。

セネガル戦の展開を的中させた竹山氏(筆者撮影)
セネガル戦の展開を的中させた竹山氏(筆者撮影)

――西野監督の「勝ち切り」采配が功を奏していますね

「絶対、グループリーグは1位で突破した方が良いですからね。でも、どっちみち決勝トーナメントに進出すれば初戦の相手はイングランド代表か、ベルギー代表。そこは意識せずに、負けは考えずにやっていると思います」

――セネガル戦、リードされて追いつく展開になりました。選手は落ち着いていたように見えましたが

「前半の立ち上がりからかなり押し込まれていました。DF昌子源のところがやられるなと思いました。案の定そこから押し込まれて、相手チームの右サイドからクロスボールが上がってMF原口が判断を誤り、それがGK川島のミスにつながって1点取られました。最初の流れはそんなに良くなかったと思います」

――川島選手のパンチングの判断は正しかったのでしょうか

「日本ってよく決定力不足と言われますが、僕はそれ以上にGKの人材不足だと思っています。GKを語る文化というか、専門的にまだ語られていなくて、僕自身もGK出身じゃないので専門的なことはあまりにも分かっていないなという感じです」

「あのプレーをしっかり分析できる人は日本にもあまりいないのかなと思います。あの場面ではキャッチングでなくても良いとGKの人たちは言っています。GKの安定性は今、絶対にないと思います。他の国の良いGKと比べると、そこは日本の弱点になっているなとは思います」

――FW大迫選手の決定的な場面での空振りは緊張から来ているのでしょうか

「あれは決めてほしかったですよね。緊張はしていないと思います。しかし大迫は他の場面でやることが多すぎるんです。ディフェンスやポストプレーも含め、すごく頑張っています、いろんなところで。体張ってチームのためにプレーし続けたために、2試合連続で足がつってしまいました」

「点を決める人って力を蓄えておかなければなりません、最後のところで。サボるところはサボるというか。最後のところで力を出せたら良いというところがありますね、FWは。だから、そこのところが2戦目の決定的な場面でゴールを決められなかった要因の一つになると思います」

「今のサッカー、FWにたくさん求めているところがあります。いろいろやりすぎちゃって。肝心なところに集中できなくなってしまっているような気がします」

――DF吉田選手の守り、すごかったですね

「吉田は非常に落ち着いていました。DF酒井も非常に良かったと思います。右サイドはそんなにやられる気がしません」

「セネガル戦の2点目は日本の右サイドから崩されて、最後は左から決められました。バランスが悪かったと思います。いろいろマークがずれて、中盤もずれて。あまり語られていませんが、MF柴崎が中盤で普通に抜かれました。ああいう場面で詰めが甘いところが出ていると思います」

――柴崎に対する海外メディアの評価は非常に高いようです

「柴崎はたぶん今、日本で一番良いプレーヤーです。任せられるので、きっと大きな仕事をしてくれると思います。ここ2戦でチームメートから信頼を得て、どんどんパスが集まるようになっています。触る回数も多くなっています」

「柴崎がほとんどのチャンスを作っていると思います。横-横パスというのはチャンスになりにくいんですが、セネガル戦の1点目につながったDF長友に出した長いパス、あれって日本人がすごく苦手なパスなんです」

「中距離のパスで決定的なチャンスを作れる選手は日本にはあまりいません。遠藤保仁(ガンバ大阪)がそんなタイプですね。それは日本の大きな武器になります」

「柴崎からのパスは、イタリア代表のピルロのようなレジスタ(イタリア語で映画監督)を彷彿させていました。日本の攻撃はすべて彼から作り出されている感じです」

「単純なミスで、致命的な失点に繋がる可能性はあるかもしれませんが、より信頼を得た柴崎にボールが集まると思います。ポーランド戦でも、フリーキックやアシストなどで必ず決定的な仕事ができるのでないでしょうか」

――本番に来て日本代表の中央の柱がそろいましたね

「昌子源、柴崎、MF香川(本田)が加わり、柱が強固なものになりました。吉田、MF長谷部、大迫は以前からのプレーを継続し、チームを引っ張ってきました」

「大会直前に役者がそろって、1戦目のコロンビア戦の勝利によって大きな自信をつけました。セネガル戦でも試合前半から成長を見せるということはこれからの試合に大きな期待が持てます」

「唯一心配なのは、川島。チームの、勝利するメンタルが共鳴しているところに乗れていない気がします。すべてが彼の責任ではないと思いますが、最後の砦としてチームに安定感を与えてほしいですね」

――本田、香川、岡崎がカムバックしました

「大会前、全員が出場できないと思っていましたが、状態をここまで戻して来られるというのには、驚きました」

「僕がここで言うまでもなく、歴史に名を残すすごい選手たちだなと思います。彼らのこれまでの実績と経験は日本サッカーの歴史を塗り替えました」

――日本代表の切り札は?

「ここ2試合、後半に勝負に出て、前に出た時に得点が取れているのは非常に心強いです。本田、もしくは岡崎が投入されて流れが変わるという意識が芽生えたのは第3戦に向けて大きいのではないでしょうか」

「その中でも、切り札としての武藤に期待しています。コンディションは良いので、試合にでれば必ずチームの助けになるはず。大迫は疲労がたまっているはずです」

「武藤がワントップ、もしくは原口の状態はベストではないと思いますので、右サイドに入っても得点に絡む仕事をしてくれるでしょう。日本代表が勝利して1位通過するために、選択肢に入っていると思います」

――決勝トーナメント進出がかかった3戦目のポーランド戦、どう戦いますか

「同じ組のもう一つの試合の途中経過が無線でベンチに伝わって来ます。最後、相手に勝ちに行く必要がなくなることもあります。だから結果次第で引き分けを狙うのはありだと思います」

「日本はかなり有利だと思います。ポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキは1戦目も、2戦目も点を決めていないので、仲間との信頼も途切れていると思います」

「レヴァンドフスキはポーランドの選手の中でも別格です。ドイツのバイエルン・ミュンヘンでやっていて、欧州の中でも今たぶん3本の指に入るプレーヤーです」

――決勝トーナメントの話をするのは気が早いのですが、イングランドとベルギーを比べると、まだイングランドの方が、勝ち目があるような気がします

「選手たちは意識していないような気がします。1位、2位でどちらが良いとかはないと思います。日本代表は大会前からイングランドとベルギーの分析をしていました。負けることは想定せずに決勝トーナメント進出に備えていたようです」

「ここまで采配も当たっています。たぶん計画性はなかったとは思いますが、ここまで大会でうまく行くのはすごい。選手の力がすごく大きいと思います。香川、本田、岡崎がカムバックし、本田は復活しました。グループリーグを突破できることを信じています」

モスクワ赤の広場近くのお土産店で(筆者撮影)
モスクワ赤の広場近くのお土産店で(筆者撮影)

「フットボール・サムライ・アカデミー」

西ロンドンの日系サッカーチーム。日本代表の吉田麻也選手がアンバサダー(校長)。竹山氏は日本の選手を欧州のクラブに移籍させる仲介人も務める。

同アカデミーのスタッフ、マリコ・エンゲルスさんはイングランド女子プレミアリーグのQPRレディースでプレー。父ゲルト・エンゲルス氏はスペイン代表MFアンドレス・イニエスタ移籍に湧くJ1ヴィッセル神戸のヘッドコーチに就任。

(おわり)