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【激写】やらかして、やらかして最後にメーガンさんの愛射止めたヘンリー王子 晴れの挙式に12万人

木村正人在英国際ジャーナリスト
母親ドリアさんとウィンザー城に向かうメーガンさん(筆者撮影)

注目のウェディングドレスは

[ウィンザー発]英王位継承順位6位のヘンリー王子(33)と米人気女優メーガン・マークルさん(36)の結婚式が5月19日正午(日本時間同日午後8時)から、ロンドン西郊のウィンザー城聖ジョージ礼拝堂で執り行われました。晴れの馬車パレードを一目見ようと12万人がウィンザー場周辺の沿道を埋め尽くしました。

メーガンさんは最後の夜を過ごした母親ドリア・ラグランドさん(61)と一緒にウィンザー城へと真っ直ぐ続くザ・ロング・ウォークから入場。ウェディングドレスは式当日まで秘密のベールに覆われています。制作を依頼したデザイナーにも徹底した箝口(かんこう)令が敷かれるのが英王室の伝統です。

1981年、チャールズ皇太子との「世紀の結婚式」でダイアナ元皇太子妃が身にまとったのは、長さ25フィート(約7.62メートル)のトレイン(引き裾)のついたとてもゴージャスなウェディングドレスでした。

妻だったエリザベスさんと制作したデービッド・エマニュエル氏は2011年当時(キャサリン妃とウィリアム王子が結婚)、筆者に「結婚式場のセントポール寺院でも映えるように20世紀で最も長いトレインをデザインしました。ダイアナはロマンチックなおとぎ話やファンタジーが好きでした」と振り返りました。

「大衆紙の取材攻勢を避けるため、窓はすべて覆い隠し、制作には小人数で取り組んだ」と言います。

メーガンさんが身にまとっていてのは掟破りのフランス・ブランド、ジバンシィの英国人女性芸術監督クレア・ワイト・ケラーさんの作品でした。ジバンシィでは初の女性芸術監督だそうです。レースのベールが美しく、長かったです。

馬車でパレードするメーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)
馬車でパレードするメーガンさんとヘンリー王子(筆者撮影)

初夏の日差しと新緑に純白のドレスがとても映えました。メアリー王妃のひときわ大きなダイヤモンド・ティアラが花を添えました。

成長した「お騒がせ王子」

父親トーマス・マークルさん(72)は体調不良のため結婚式への出席を取りやめ、チャールズ皇太子(69)が急遽、ピンチヒッターとしてメーガンさんの手を引いて礼拝堂のバージンロードを歩きました。ヘンリー王子の粋な計らいでチャールズ皇太子の人気も上昇するはずです。

ヘンリー王子はかつてロイヤルファミリーの「お騒がせ王子」でした。ハメを外すことが多いヘンリー王子は20歳の頃、仮装パーティーにナチスの制服を模したスタイルで登場したり、パキスタン出身の陸軍の仲間を「かわいいパキの友だち」と呼んだりして英メディアに厳しく批判されました。

12年にはラスベガスの高級ホテルのスイートルームで全裸になっている姿を撮影されたこともあります。この時、ヘンリー王子はどん底を味わいました。

しかし15年に陸軍を除隊して、人権活動や女性運動に熱心なメーガンさんと付き合うようになってから一回り大きく成長しました。ヘンリー王子は自慢のひげ面でメーガンさんと口づけを交わしました。

最愛の母ダイアナへの思い

16年12月には最愛の母ダイアナを失った時の気持ちを率直に打ち明けています。

「僕は実際のところ何が起きたかに背を向けてきました。胸の中で封印した感情はたくさんあります。人生の大半、僕は本当に母の死について考えたくありませんでした。しかし僕は昔の自分とは大分違う見方で人生を見ています」

ヘンリー王子は陽気ないたずらっ子として国民の人気者でしたが、メーガンさんのアドバイスでメディアを味方につけるコミュニケーション能力を身につけたように思います。

バラク・オバマ前米大統領と協力して、傷病兵らによる国際スポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」を支援する名オーガナイザーぶりを発揮しています。

婚約発表後、2人が初公務で訪れたノッティンガムで沿道の男性から「おいジンジャー(赤毛)、お前にはもったいない嫁さんを見つけたな」と冷やかされ、ヘンリー王子も照れていました。

やらかして一人前の男に育っていくのが英王室流のたくましさです。

型破りのメーガンさんとの結婚

メーガンさんとは一体どんな女性なのでしょう。ダイアナ元妃と比べてみれば一目瞭然です。

メーガンさんはアメリカ人、離婚経験者(しかも相手方が生存)、白人の父親とアフリカ系の母親の間に生まれました。両親はメーガンさんが6歳の時に離婚しています。女優、アクティビスト、自立した女性です。

一方、ダイアナ元妃は英名門貴族スペンサー伯爵家のご令嬢、19歳で婚約、初婚でした。

1981年生まれのメーガンさんはロサンゼルスの「ブラック・ビバリー・ヒルズ」と呼ばれる高級住宅地で育ちました。ローマ・カトリック系のカレッジで学び、ノースウェスタン大学でコミュニケーションを専攻、女優としてのキャリアをスタートさせます。

2011年に映画のプロデユーサーと結婚しますが、わずか2年で離婚。彼女のフォロワーはインスタグラムで190万人、ツイッターで35万人もいました(現在は閉鎖)。性差をなくす運動にも熱心で、国連の活動に積極的に協力してきました。

ウィンザー城には昨年5月のマンチェスター自爆テロで負傷したアメリア・トンプソンちゃん(12)、聴覚障害者や知的障害者を支援する人、リサイクリング活動に取り組む小学校教師、貧困家庭の若者に職業訓練を施している焼き菓子マカロンの職人さんも招待されました。

目標は「ダイアナ2.0」

16歳だったメーガンさんは友人とダイアナ元妃の葬式をテレビで見ていて棺がクローズアップされた時、その上に置かれたヘンリー王子らがしたためた「マミーへ」という手紙を見て涙を流します。そのあと「世紀の結婚式」の録画を見ました。

これがおそらくメーガンさんとヘンリー王子の最初の接点です。それ以来、ダイアナ元妃にあこがれたメーガンさんは「ダイアナ2.0」を目指してきました。

1992年、チャールズ皇太子と故ダイアナ元皇太子妃の結婚生活の破綻を暴露したミリオンセラー『ダイアナ妃の真実』で世界中にセンセーションを巻き起こした英作家アンドリュー・ モートン氏は新著『メーガン:ハリウッドのプリンセス』を出版しました。

モートン氏は記者会見でこう話しました。「メーガンさんはウィンザー城で生まれたエドワード3世(イングランド王、1312~1377年)の24代目の子孫です。だから奴隷(母親方の祖先)と王様(父親方の祖先)の子孫だということです」

生まれながらのアクティビスト

「メーガンさんは子供の頃からアクティビストでした。10歳の時、第1次湾岸戦争に反対する姿がテレビに映っています。フェミニズムの運動に参加したのはそれから間もなくのことです」

メーガンさんは子供の頃、食器用洗剤が「すべてのアメリカ女性に」とうたっているのを疑問に思い、当時は弁護士だったヒラリー・クリントン氏に手紙を書いて「すべてのアメリカ人に」と改めさせたことがあります。それ以来、熱心にチャリティーに関わるようになりました。

「メーガンさんは生まれながらのアクティビスト、ダイアナ元妃はケアラー(世話をする人)という違いはあります」。モートン氏によると、カメラシャイだったウィリアム王子とヘンリー王子の母親、ダイアナ元妃と違って、女優のメーガンさんはカメラにどう映るか知り尽くしています。

メーガンさんこそ、ダイアナ元妃がもがき苦しんだ末にようやくたどり着いた「バランスと自信を兼ね備えた女性像」だと言います。

英王室の伝統

英国教会は2002年まで、前の配偶者が生きている離婚者との再婚を禁じていました。英国では宗教上の権威はイギリス国教会にあり、世俗上の権威は神様から君主(国王または女王)に授与されることになっています。

このため英王室ではさまざまなスキャンダルと悲劇が繰り返されてきました。1936年、エドワード8世は二度の離婚歴があるアメリカ人女性ウォリス・シンプソン夫人と結婚するため退位し、「王冠を賭けた恋」と世界中を驚かせます。

第二次大戦の「空の英雄」で離婚歴のあるタウンゼント大佐と恋に落ちたエリザベス女王の妹マーガレット王女は結婚を望みながらも、王室の威信を守るため引き裂かれます。

2013年に王位継承法が改正され王位の長子継承が認められるまでは、ローマ・カトリック教徒と結婚した者は王位継承権を失うという非情な定めが残っていました。ヘンリー王子とメーガンさんはもう、そんな心配をする必要はありません。

挙式費用

結婚式プランニング会社の試算では、挙式費用は総額3200万ポンド(約47億8800万円)。結婚式そのものに200万ポンド(約3億円)、警備費にドローンを妨害電波で墜落させる装置100万ポンドを含め3000万ポンド(約44億8900万円)。費用の内訳は次の通りです。

・銀製トランペット20本9万ポンド(約1346万円)

・レモン・エルダーフラワーケーキ5万ポンド(約748万円)

・花輪11万ポンド(約1645万円)

・ウィンザー城に招かれた市民に振る舞われる銀のお皿に盛ったソーセージロール2万6000ポンド(約389万円)

・レセプション会場になるガラス製テント30万ポンド(約4489万円)

メーガン効果

コンサルティング会社ブランドファイナンスによると、2人の結婚の経済効果は今年だけで10億ポンド(約1500億円)以上。内訳はレジャー・宿泊費・旅行・交通費3億ポンド(約449億円)。さらに次のような経済効果が期待できるそうです。

・イギリス・ブランドのPRと放映権3億ポンド(約449億円)

・リーテール・レストラン2億5000万ポンド(約374億円)

・ファッションにおけるメーガン効果1億5000万ポンド(約224億円)

・記念コイン・切手・マグカップ・バルーン5000万ポンド(約75億円)

偉大なラブストーリー

前出のモートン氏は「ヘンリー王子とメーガンさんは100年後に振り返ってみても偉大なラブストーリーになるはずです。メーガンさんは英王室の大きな財産になります」と話しています。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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