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不幸を呼ぶ王室の呪い ヤラセ写真発覚でメーガン・マークルさんの父、結婚式欠席か ヘンリー王子にも衝撃

木村正人在英国際ジャーナリスト
父親トーマスさんの胸の上で眠るメーガン・マークルさん(提供:Tim Stewart/Splash/アフロ)

1500万円で売れたヤラセ写真

[ロンドン発]英王室のヘンリー王子(33)と米女優メーガン・マークルさん(36)の結婚式が5月19日に迫る中、メーガンさんの心を痛める衝撃的なニュースが飛び込んできました。

結婚式でメーガンさんの手を引いて礼拝堂のバージンロードを歩くことが発表されたばかりの父親トーマス・マークルさん(72)が結婚式への出席を取りやめるというのです。

トーマスさんがイギリスの旅行ガイドを見たり、オンラインでメーガンさんとヘンリー王子の婚約写真を見たり、結婚式に着ていく礼服のサイズを図ったりする写真が世界中に流れました。

ところが、実はこうした写真はすべてイギリスのパパラッチと組んでデッチ上げた「ヤラセ」だったことが分かったのです。

スッパ抜いた英大衆日曜紙メール・オン・サンデーによると、ヤラセ写真は10万ポンド(約1500万円)で売れたとみられています。

トーマスさんは米セレブリティ・ニュースサイトTMZに「結婚式には行かないことを決めた」と伝えました。TMZによると、メーガンさんとヘンリー王子がメディアの注目を集めるようになってから5万~10万ドル(550万~1100万円)の謝礼でインタビューのオファーを受けるようになりました。

イメージ回復の狙いが裏目に

ヤラセ写真を仕組んだパパラッチからも謝礼を受けましたが、10万ポンドには程遠かったそうです。

メーガンさんやヘンリー王子を傷つけるつもりは全くなく、ビールを買い、髪がボサボサで家にこもってばかりいるそれまでに出回っていた写真のイメージを変えるためだったとトーマスさんは説明しています。

トーマスさんはTMZに「約1週間前に心臓発作を起こした。ロイヤルファミリーにも娘にも恥ずかしい思いをさせたくないので、結婚式には行かないことを決めた」と打ち明けています。

トーマスさんは、かつてテレビの腕利き照明監督で「女優メーガン」を育てた1人ですが、1990年に宝くじで75万ドル(約8200万円)を当ててから人生が狂い始めます。メーガンさんの母親ドリア・ラグランドさん(61)とメーガンさんが6歳の時に離婚します。

2016年には米カリフォルニア州でクレジットカードの負債2万4181ポンド(約357万円)を抱えて自己破産。貯金はわずか160ポンド(約2万3600円)で現在はメキシコで暮らしています。

ロイヤルファミリーの呪い

メーガンさんとヘンリー王子(昨年12月、筆者撮影)
メーガンさんとヘンリー王子(昨年12月、筆者撮影)

メーガンさんとは血のつながっていないトーマスさん側の子供たちはシンデレラ・ストーリーを地で行くメーガンさんを妬ましく思っているらしく、これまで「ヘンリー王子はメーガンと今すぐ別れた方が賢明」とか「家族の私たちをどうして結婚式に呼ばない」と大衆紙に不満をぶちまけています。

多発性硬化症を患う義理の姉サマンサ・グラントさんは暴露本を出すと息巻いています。メーガンさんが公式の婚約写真で5万6000ポンド(860万円)もするドレスを披露した際、サマンサさんは「もしドレスに使う金があるなら、どうして父親のために使ってやらないの」と批判しました。

母親ドリアさんがアフリカ系であることから、メーガンさんは意地悪な保守系英メディアに「奴隷の子孫」とまで書かれました。

イギリスには自主規制組織「報道苦情処理委員会(PCC)」がありました。しかし大衆日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールドの組織的盗聴事件をきっかけに設立された「レベソン調査委員会」の勧告を受け、PCCを解散し、調査権を持ち、報道加害者が加盟社である場合、罰金を科す権限を持つ「IPSO」を立ち上げました。

パパラッチに追いかけられ、悲劇の交通事故死を遂げたダイアナ元皇太子妃が残した教訓から、英メディアの行儀は随分よくなりました。

両刃の剣

しかし多様性とジェンダー(女性の社会参加)の「女神」でもあるメーガンさんと、かつて7つの海を支配した大英帝国に君臨する王室の末裔であるヘンリー王子の結婚は「両刃の剣」でもあるのです。

結婚生活が上手く行けば人種と性差の「融合」を象徴し、破綻すれば人種と性差の「衝突」を際立たせてしまいます。イギリスの欧州連合(EU)離脱をあおりまくったデーリー・メール紙やメール・オン・サンデー紙が2人の結婚を面白く思っていないことはこれまでの報道から明らかです。

しかも人気テレビ番組でスターダムに駆け上ったメーガンさんがイギリスの王子と結婚することで、アメリカ・メディアは制御不能状態に陥っています。

トーマスさんが英米のメディア・サーカスから逃れられるか否かは分かりません。メーガンさんとヘンリー王子はトーマスさんをそっとしてあげてほしいと望んでいますが、熱狂が静まるかどうか。

トーマスさんが結婚式に出席する可能性はまだ完全に消えたわけではありません。

世界中の注目を集める英王室のプライバシーは「子宮の中にいる時にしか認められない」とよく言われます。この呪いに巻き込まれて不幸になったロイヤルファミリーはダイアナ元妃だけではないのです。

メーガンさんを守れるのはヘンリー王子だけだ

英メディアによると、最愛の母親をメディア・サーカスの中で失ったヘンリー王子の友人はこう話したそうです。

「ヘンリー王子は打ちひしがれている。自分が愛する人たちに起こったことに罪の意識を感じている。それはその人たちが自分と関係していることに原因があるからだ。ヘンリー王子はメーガンさんを守ろうとしているが、非常に難しい状況だ」

日本でも昨年12月に女性週刊誌が「眞子さま嫁ぎ先の『義母』が抱える400万円超の『借金トラブル』」と報じたのがきっかけで、2カ月後、眞子さまと小室圭さんの「結婚延期」が発表されました。

イギリスの王室も日本の皇室も伝統と格式の重みと、世間の関心の高さが大きな波紋を広げます。それを乗り越えるのは愛の力しかありません。土曜日の結婚式に父親のトーマスさんが現れ、メーガンさんの手を引いてバージンロードを歩くのか。

メーガンさんとヘンリー王子には愛の力でこの試練を乗り越えてほしいと思います。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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