中国の軍需産業はアジア太平洋でトップ 安倍・トランプ「インド太平洋戦略」の構築が急務

犬猿の仲のベトナムを訪問した中国の習近平国家主席(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

[ロンドン発]中国がアジア太平洋地域の軍需産業の能力でトップに立っていることが英調査会社IHSマーキット・ジェーンズの指標で分かりました。中国は、2位の日本をエレクトロニクスのスコアで0.5ポイントも引き離し、最終順位で3.8ポイントと日本の3.6ポイントを上回りました。

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ジェーンズの調査ディレクター、ポール・バートン氏はこう指摘しています。

「止まらない北朝鮮の核・ミサイル開発に象徴される複雑な安全保障環境や東シナ海・南シナ海の領有権争いがアジア全般で現地生産の急成長をリードしています」。アジアの経済成長や軍備の自給自足への強い要望も背景にあるそうです。

「中国の軍需産業は北京が掲げる目標達成に向け、過去10年で大幅な進展を遂げました。世界で最も工業化が進む国々と中国が同じような水準を達成するには、さらなる産業再編が必要となります。北京は軍需産業の基盤を『模倣』から『革新』へと転換させる動きを継続しています」

またアソシエイト・ディレクター、ガイ・アンダーソン氏はこう解説しています。

「防衛分野に対する調査・開発投資への政府支援の強化はアジア太平洋地域の特徴です。この地域の投資は過去5年で32%増の167億ドルに増大しています。今後10年でアジア太平洋の軍需産業の自立度は上昇し、世界の輸出市場で大きな進展を遂げると我々は予測しています」

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の軍事支出データベースを見ておきましょう。

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中国の2016年軍事支出は15年米ドル換算で2257億ドルとアメリカの6062億ドルを大きく下回っています。しかし日本の416億ドル、韓国の373億ドル、オーストラリアの244億ドル、インドの556億ドルを合わせたより中国の軍事支出ははるかに多いのです。

北朝鮮の核・ミサイルの脅威に直面する韓国が「THAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備に応じない」「米国のミサイル防衛(MD)システムに参加しない」「韓米日同盟はない」の「三不政策」を発表し、中国に露骨に擦り寄りました。

これに対して、アメリカのドナルド・トランプ大統領と安倍晋三首相は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を掲げています。インド洋と太平洋を結ぶ地域で法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を確保しようという構想です。

要はアメリカ、日本、オーストラリア、インドという地政学上の「ダイヤモンド(四角形)」の中で中国の軍事的冒険主義を抑え込み、国家資本主義の中華経済圏に対抗しようという狙いです。しかしトランプ大統領が保護主義、孤立主義を強める中、防衛協力の域を出そうにありません。

中国に詳しい英キングス・カレッジ・ロンドンのケリー・ブラウン教授は先月17日、ロンドンにあるシンクタンク「ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティ」での講演で翌18日から始まる中国共産党大会についてこう分析していました。

「今回の中国共産党大会は初のグローバル党大会と位置づけられるでしょう。これまでなら国家主席のスピーチの95%は国内問題に割かれ、5%が外交という割合でした。しかし中国の国内問題は環境や経済を取ってみても本質的にグローバルな問題になっています」

「イギリスの欧州連合(EU)離脱やアメリカのトランプ大統領の登場は中国を思っていた以上に早く、望み通りにグローバルパワーに押し上げました。中国が望もうが望むまいが、中国共産党大会はグローバル党大会になったのです」

もともとイギリス外務省で中国を専門とする外交官だったブラウン教授の分析通り、習近平国家主席は党大会の活動報告でこう宣言しました。

「南シナ海の人工島建設が積極的に推し進められた」「広域経済圏構想『一帯一路』を主導し、アジアインフラ投資銀行(AIIB)を創設した」

「2035年までに国防・軍隊の現代化を実現し、21世紀半ばまでに世界一流の軍隊を築きあげるよう努力する」「辺境地区の安定と安全保障に万全を期し、海洋強国化を加速させる」

習近平が掲げる「中国の夢」は35年から今世紀半ばに社会主義現代化強国を築き上げ、過去の中華民族の栄光を取り戻すことです。

ツイッターを使ってトランプ大統領がドタバタ喜劇を繰り返しているうちに中国は実力をつけて、どんどん国際社会でのプレゼンスを上げています。

(おわり)