「100歳まで大統領」ムガベ失脚 41歳下悪妻への政権移譲で綻び 国内外もジンバブエのクーデター容認

妻グレース氏(右)への政権移譲の道筋をつけようとして墓穴を掘ったムガベ大統領(写真:ロイター/アフロ)

[ロンドン発]ロバート・ムガベ大統領(93)の後継をめぐり、もめていたアフリカ南部ジンバブエで15日、兵士らが国営放送局を占拠し、少将が声明を読み上げました。

「これは軍による政権転覆ではない。ムガベ大統領は無事だ。我々はわが国に社会的・経済的な苦しみをもたらす大統領周辺の犯罪者だけをターゲットにしている。任務が終わり次第、平常に戻る」

ツイッターで首都ハラレの状況を調べてみると、戦車が街頭に繰り出し、国営放送局だけではなく、議会や政府機関が軍の支配下に置かれていることが分かります。英BBC放送によると、激しい砲撃や発砲がハラレの北部であったそうです。

フェローシップとして6カ月前からマンチェスター大学に留学しているハラレ出身の人権・民主化活動家のアーティスト、シルバノス・ムズボバさん(38)に電話をかけ、バックグランドを解説してもらいました。ムズボバさんはハラレの友人たちと連絡を取り、情報を収集したそうです。

筆者作成
筆者作成

1週間前、ムガベ大統領がエマーソン・ムナンガグワ副大統領(75)を更迭したことが発端です。ムガベ大統領の後継はムナンガグワ副大統領とみられていましたが、ムガベ大統領は問題の多い妻グレース氏(52)に自分の死後、大統領の座を移譲しようと考えたのです。与党ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)もムナンガグワ派とグレース派で二分しました。

「ジンバブエはムガベ王朝ではない」とムナンガグワ副大統領の盟友、国軍トップのコンスタンチノ・チウェンガ司令官(61)が反発し、14日から国軍の装甲車がハラレ郊外に展開し、緊張が高まっていました。そこで起きたのが国軍によるクーデターです。ムズボバさんは「死者が1人出たようだが、ソフトクーデターだ」と表現しました。

ファースト・レディのグレース氏は国外に脱出したとの報道もありますが、ムズボバさんはジンバブエ国内にいるはずだと言います。身の危険を感じて南アフリカに逃れていたムナンガグワ副大統領は帰国し、ムガベ大統領に退陣を迫って大統領に就任するのではとムズボバさんはみています。

ムガベ大統領はジンバブエを白人支配から奪い返した独立闘争の英雄です。1980年に首相となり、87年に大統領になりました。92年に白人農地を黒人農民に分配する土地接収法を強行、旧宗主国イギリスを敵対視する政策が裏目に出て、「ジンバブエの奇跡」とまで呼ばれた国内経済はたちまち崩壊します。

画像

インフレもひどく、2008年には796億%というハイパーインフレーションを記録。翌09年にはジンバブエ通貨の新たな発行を止めたため、外国の通貨が使われるようになりました。

画像

ムガベ大統領の後継者は国家再建という重大な任務を負うというのに、ムガベ大統領が政権を移譲しようとしたグレース氏は贅沢好きで「グッチ・グレース」と呼ばれるほどです。もともとムガベ大統領のタイピストをしていましたが、ムガベ大統領の妻が病弱だったことから大統領を寝取ってしまいました。

「独裁者」と呼ばれることもあるムガベ大統領本人より問題の多い人で、今年8月には南アフリカのヨハネスブルクで息子2人と同棲していた女性モデル(20)ら3人を電気コードでしばいて負傷させました。裁判所には出廷せず、外交特権を乱用、ジンバブエに帰国して罪を逃れたため、大きな騒ぎになりました。

隣国の南アフリカも「グレース・ムガベ大統領」という悪夢が消えてなくなったことに胸をなでおろしている様子で、国内外はソフトクーデターを容認するムードのようです。

(おわり)